2024年02月20日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

気候ネットワークでは、「電力システム改革の検証に係る意見募集」に対しての意見を提出しました。

意見内容

小売全面自由化

公平で公正な競争の実現のためには送配電の所有権分離や発販分離といった大手電力の構造的分離が不可欠である。また、小売電力事業者に対して徒に負担を増やすような措置をとるべきではない。

 いまだに電源構成の70%以上が火力発電である以上、化石燃料価格が高騰する中で、電力の価格高騰は平均的には避けられない。それでも、大手電力は自社電源を大量に保有し、社内取引が多くを占め、それらは市場価格の影響の度合いが小さいため、新電力より相対的に被害が小さい。大手電力の発電部門と小売部門が完全に分離されていないため、新電力は同等の条件で電力を調達できないし、規模が小さい先物市場の活用にも限度がある。電取委は、大手電力会社に対して内外無差別な卸売を求めているが、実際のところどこまで徹底できているかは不透明である。電気事業法で内外無差別を義務付け、逼迫時における市場価格の過度な高騰を防ぐ必要がある。さらには大手電力同士のカルテルや新電力の顧客情報の不正閲覧など、旧一電グループの構造的な問題を根本的に是正するためにも、発送電の所有権分離、発販分離及び会計分離を行うべきである。
 また小売電気事業者に対して負担を増加させるような措置は行うべきではない。具体的には激変緩和措置は、小売事業者の手間・負担を徒に増やすような設計になっている一方で、事務局を務める博報堂には膨大な事務局経費が認められている状況は、非常に不透明かつ正当性を欠いている。今回の激変緩和措置は、化石燃料に対する補助金政策に他ならず、世界の脱炭素の方向にも大きく逆行するものになっている。物価高騰は電気・ガス料金だけでなく、食品等を含むほぼ全商品やサービスに及んでいるため、これらの対応は金融政策や低所得者を中心とした生活費補助金給付等で対応すべきである。

市場機能の活用

電力ひっ迫などへの対応のためにも価格シグナルが機能する公正な電力市場とすることが不可欠である。 さらに発電側の競争を促すためにも、優先給電ルールの廃止、また再エネ出力抑制を徹底的に回避するための市場価格等へのマイナス価格の導入を急ぐべきである。

 電力ひっ迫などへの対応のためにも価格シグナルが機能する公正な電力市場とすることが不可欠である。
さらに発電側の競争を促すためにも、優先給電ルールの廃止、また再エネ出力抑制を徹底的に回避するための市場価格等へのマイナス価格の導入を急ぐべきである。
 現在の市場環境では、スポット市場の寡占や需給調整市場や先物市場の機能不全、内外無差別の不徹底などが原因となり需給逼迫などに対応できていない。特にひっ迫時あるいは価格高騰時に電力ピークを減らすためには、市場メカニズムを活用し、消費側にインセンティブを与えることが不可欠である。そのような料金メニューやDR支援サービスに対して、補助が与えられるようにすべきであるし、大前提として、適切な価格シグナルが発せられる公正な競争環境を整備することも重要である。なお2021年、2022年の逼迫時の省エネポイント制度のように、システム費用、対応人件費も小売事業者が負担することになるような制度では、小売各社の経営環境の厳しい中、事業者がさらなる不利益を被ることになる。電力自由化市場においては安定供給は送配電事業者の義務であり、それらを踏まえても政府対応として小売電気事業者に協力を求めるならば、小売事業者の実態に合わせた制度設計・運用が求められる。
 現在の電力取引所スポット市場では、市場価格が負にならないように、下限価格を0.01円に設定し、下限価格における各発電事業者の供給量を送電部門が「出力抑制」によって引き下げて、需要量に一致させている。近年再エネ導入量の増加とともに再エネ出力抑制の頻度が急増しており、2023年度は過去最高を記録している。つまり日本では価格メカニズムを用いずに、市場介入である下限価格設定と出力抑制の組み合わせによって均衡を達成する方法をとっており、その結果消費者の利益を下げ、さらなる再エネの拡大を妨げるだけでなく、既存の再エネ事業者に厳しい状況となっている。市場価格に下限を設け、優先給電ルールに基づいて出力抑制を行うことは、消費者が負担する価格を引き上げ、一方で停止費用の高い長期固定電源等を守る仕組みになっており自由化の趣旨に大きく反する。
 現在の優先給電ルールを廃止し、再エネ電力の系統への接続や市場への優先アクセス等の保証を行うことが求められる。それでも出力制御を実施する場合には、発電事業者に対しての補償を行う制度にするべきである。また欧州や米国では強制的な出力制御ではなく、電力市場価格等へのマイナス価格の導入により、市場原理に基づく需給調整が実現されており、日本でも一刻も早いマイナス価格の導入が求められる。

送配電の広域化・中立化

送配電の中立化のためには送配電の所有権分離が必要である。また脱炭素社会実現に向けた再エネ3倍の達成のためにも、再エネ系統制約を解消し、メリットオーダーに基づく再エネの受け入れが必要である。

 カルテルや不正閲覧の問題は、2020年の発送電分離後も大手電力は一体的に経営され、送配電事業の中立性がないがしろにされてきた証といえる。法的分離は全く機能していなかったのである。その改善として行為規制や電気事業法でいくら規制し、規制官庁が指導を行なっても、不正に閲覧した人のかなりの割合が「閲覧は電気事業法上で問題になりえる」と認識していたことからも再発の可能性は残り、根本的な解決にならない。現在の送配電の法的分離では、グループ会社間での情報漏洩問題等の構造的な問題に対応できないことが明らかとなった今、根本的な解消のためにも所有権分離を行うべきである。
 所有権分離を行うことで、独立した送配電会社は自社の利益のために、全ての発電・小売り会社を顧客として平等に扱うようになって市場競争が活性化され、需給調整が合理的になり、安定供給にも寄与する。系統制約によってその普及が遅れている再エネについても、速やかに接続が行われ、再エネ電力が市場や需要家に供給されるようになることが期待できる。また、託送料は認可料金であるため、政府が再エネのために送配電網を増強する方針を示せば、総括原価主義の送配電会社はより積極的に送電網整備に協力することになる。その結果、電気料金高騰の折に太陽光の電気を捨てる再エネ出力抑制が、極力少なくなることも期待される。さらに所有権分離は、大手電力にとっても、自らのビジネスモデルの見直しや信頼回復の重要な機会になる。
 こうした所有権分離を急ぐと共に、当面の課題として再エネの大規模導入を阻んでいる系統制約の解消のためには、ノンファーム型の系統接続を、基幹系統だけでなくローカル系統、更に配電系統へと速やかに拡大させる必要がある。接続に当たり系統の増強が必要な場合には、送配電事業者の一般負担を原則とするべきである。再エネ電力を出力抑制する場合には、給電順位をメリットオーダーとするとともに、再エネ電力の出力抑制に対して、送配電事業者による補償を原則とすることが求められる。

供給力確保策

炭素制限のない現行の容量市場はすぐに廃止し、再エネを主力とした供給力のあり方を再検討するべきである。また、容量市場の一部として追加された脱炭素電源オークションについても、火力の水素アンモニア混焼やLNG専焼などを含んでおり新規投資の対象とすべきではなく抜本的な見直しが必要である。

 現行の容量市場制度は、長く稼働することになるであろう既存の原発や石炭火力に対して大きな利益をもたらすものになっている。これらの長期固定電源は、再エネの変動に対応して出力を調整する柔軟性が欠けている。そのため再エネ大幅導入を目指す上で、変動する再エネに対応できない柔軟性を持たない大規模電源は、無駄なコストが発生する上に安定供給にとってリスクにしかならない。
 さらに容量拠出金は、発電と小売の9割近くを占める旧一電にとっては、グループ内の小売部門から発電部門への費用移動でしかないが、新電力にとっては大きな負担となり、競争上、旧一電が有利な条件となるなど電力システム改革の趣旨にも反している。そもそも収益性の低下した老朽火力を廃止するのは合理的な選択であり、徒に国民負担を増やすような選択を取るべきではない。
 以上のことから現行の容量市場制度はただちに廃止すべきである。供給力確保にあたっては、単に供給力の確保だけを目的とせず、電力システムの脱炭素化の実現に寄与する制度となるような制度が求められる。具体的には(1)炭素基準を導入すること(発電時のみならずライフサイクルで評価する)、(2)負担の不公平の根源にある送配電の所有権分離を行うこと、(3)戦略的予備力など、より費用効率的な制度への変更を含めて幅広く検討すること、(4)需要側管理(DR)や蓄電池など、将来技術の投資を促す制度設計とすることが求められる。
 現在、国際的には、供給力は大規模火力から風力・太陽光を主とする再エネの導入拡大と柔軟性の組み合わせへとシフトしている。サウスオーストラリア州のように、これにより電力供給を量的に充足させ、安定を保てている事例も出てきている。日本でも安定供給力=大規模火力という認識を早急に改めるべきである。

事業環境整備

事業環境整備として必要なことはイノベーションではなく、早急な再エネ普及であり、そのための環境整備を最優先して進めるべきである。

 COP28において「2030年までに世界の自然エネルギー設備容量を3倍にし、エネルギー効率の改善率を2倍にすること」が誓約されたように、今最優先で取り組まなければいけないことは再エネの導入スピードを加速させることである。一方今の日本では系統制約や大規模な再エネ事業の合意形成の問題、さらには部材費や工事費等のコストの高騰によって、第6次エネルギー基本計画における2030年度の温室効果ガス46%削減のための、再エネ目標(36~38%)の達成すら危うい状況にあり、再エネ普及の妨げになっている規制や負担を取り払っていくことが求められている。具体的には再エネ発電側に大きな負担を強いる発電側課金や、発電事業者にとってリスクの大きい現行FIP制度の価格算定方法の見直しが求められる。その他、現行の非化石価値証書は、当初の目的である再エネ賦課金の軽減にも、非化石電源の新設増加にも寄与していない制度になっている。この制度は、早晩廃止して、カーボンプライシングの中で非化石電源由来の環境価値を処遇し、最終消費者が自らのニーズで調達できるように整えるべきである。

その他

経済産業省や公正取引委員会など市場監視機関は卸電力市場のカルテルに対する監視及びそのために必要な体制を大幅に強化する必要がある。旧一電のカルテルが存在することが判明した現在、大手電力の小売部門と新電力の公平競争を守るため、罰則強化や制度改正が求められる。

 大手電力会社(旧一電)の市場支配力を残したままでの自由化・市場化は、市場支配力に係る厳格な規制および監視がセットで行われるべきであるが、この間の市場価格高騰やカルテル、情報漏洩などに見られたように、それが機能していない実態が明らかになった。また、価格で調整するという市場機能もあまり働かなかった。さらに、市場支配力を監視する役割であるエネ庁や電取委(電力・ガス取引監視等委員会)は十分に機能したとは言えない。事業者側のコンプライアンスの欠如と共に監視・抑止機能が働かなかったことは大きな問題である。
 これらのことからも日本の電力自由化の状況は極めて不十分であることは明らかである。
 まずはその事実を認めるべきであり、その上で罰則強化や制度改正に加えて、電力会社の構造的な分離や監視側の体制についても見直しを図るべきである。

参考

第69回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会

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