イベントタイトル世界の気候訴訟最前線2
動き出した米国の司法!モンタナの若者16人の挑戦
―モンタナ気候訴訟 弁護団からの報告―
日時2023年8月2日(水)10:30-12:00
会場オンライン(Zoom)
参加費無料
開催団体気候ネットワーク
備考このウェビナーは、2023年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催しました。

イベント趣旨

近年、世界各地で提起されている気候訴訟ですが、先日、その動向をとりまとめた最新の報告書が発表されました。報告書では、市民や環境団体が原告となり、気候変動を食い止め、健全な環境のもとで暮らす権利を求めて、政府や企業を訴える気候訴訟が増えていることが分かりました。

 こうした中、3年前に米国のモンタナ州で16人の若者、子どもたちが立ち上がり、州の化石燃料推進政策が気候危機を深刻化させ、生命を危険にさらすと訴えた気候訴訟が始まりました。幾多の困難を乗り越え、ようやく今年の6月12日-20日にトライアル(弁論、尋問)が開催されました。

 州憲法が保障する人権規定を根拠として、気候変動による人権侵害の有無を問う訴訟としては、米国史上初のトライアルで、その法廷での様子はオンラインで同時配信され、国内外からの注目を集めました。

 今回のウェビナーでは、モンタナ気候訴訟を支援したNGO、訴訟を担当してきた弁護士たちの協力を得て、この訴訟で若者たちが何を求めているのか、訴訟提起までの経緯、モンタナ州憲法と気候変動政策の問題、トライアルの成果などについて報告いただきます。(同時通訳あり)

 米国の司法は、トランプ政権時に最高裁の構成が大きく変わり、窮地に立たされています。しかし、こうした子どもたちによる未来を守る戦いは、一つの希望を見出すことにつながっています。また、モンタナ州は化石燃料、とりわけ石炭を産出している州でもあり、モンタナ気候訴訟について知ることで、日本の石炭政策の転換への示唆も得られるものと思います。ぜひ、ご参加ください。

(参考)気候ネットワーク通信151号 巻頭言(浅岡美恵)
動き出した米国の司法! モンタナの若者16 人の挑戦

プログラム

1.若者が主導する権利に基づく気候訴訟の立ち上げ

  Kelly Matheson(弁護士) [資料] [資料(仮訳)]

2.訴訟と憲法を武器に気候危機と闘う

  Phil Gregory(弁護士) [資料] [資料(仮訳)]

3.歴史的トライアル実現の経緯と意義

  David Schwartz(弁護士)

4.神戸製鋼石炭火力訴訟ー気候訴訟の課題と展望

  杉田峻介(弁護士) [資料]

コーディネーター:浅岡美恵(弁護士・気候ネットワーク代表)

資料:米国と日本との裁判の進め方の違い、トライアルの意義について

講演者プロフィール

講師プロフィール

デビッド・シュワルツ(弁護士、Our Children’s Trust スタッフ弁護士)
2015年にデューク大学ロースクールで法務博士を取得。ロースクールを卒業後は、非営利の環境や公益に関する分野で活動してきた。これらの仕事の中で、環境法、行政法、情報公開法などを幅広く扱い、特にトランプ政権が大気浄化法の規制を後退させたことに異議を唱える2件の訴訟において、公衆衛生団体の連合を代表してアミカスブリーフ(裁判所に対して第三者が提出する資料)を作成した 。現在は Our Children’s Trust(OCT)のスタッフ弁護士として、州や連邦における同団体の様々な訴訟案件に取り組んでいる。

フィル・グレゴリー(弁護士、Our Children’s Trust オブ・カウンセル)
米国を拠点とする弁護士事務所で訴訟弁護士として働くかたわら、プロボノとして2010年からOur Children’s Trust(OCT)でオブ・カウンセルを務める。担当した案件には、カリフォルニア沿岸における不動産所有権および何十年にも及んだ地下水の汚染問題の訴訟などがある。プロボノとしては、ハリケーン・カトリーナによる洪水や、リチャードソン・グローブ州立公園でのレッドウッド(セコイヤ)原生林の保全、スミス川でのギンザケの保護などに取り組んできた。専門的な業績を獲得した優れた弁護士を評価する「superlawyer.com」で16年連続スーパーロイヤーに選ばれている。

ケリー・マシソン(弁護士、Our Children’s Trust グローバル気候訴訟担当副部長)
人権弁護士として20年以上の活動経験がある。ロースクール卒業後、タンザニアにて環境及び人権分野においてのキャリアをスタートさせ、帰米後は化石燃料による開発から西部アメリカの景観を守る仕事に従事した。その後、法律の分野から一旦離れ、モンタナ州立大学で科学と自然史映画製作の修士号を取得した。これを期にOur Children’s Trust(OCT)と関わることとなる。映画シリーズ『Stories of Trust』を制作し、OCTの若い原告の声を広めた。その後、OCTの役員に就任。現在では、OCTのグローバルな活動を統括している。

【追記】ウェビナーQ&A、アーカイブ配信、判決を受けて(2023/08/28)

8月14日、米国西部モンタナ州のモンタナ州第一司法地方裁判所のシーリー裁判官は、州政府による化石燃料の使用における温暖化ガス排出量の調査を制限する州法はモンタナ州憲法に違反すると訴えた「ヘルド対モンタナ州訴訟」における16人の若者原告を全面的に支持する判決を下しました。

原告を支援してきた非営利団体Our Children’s Trustのチーフ法律顧問兼エグゼクティブ・ディレクターのジュリア・オルソン氏は、同団体のリリースの中で、「シーリー裁判官は、モンタナ州の化石燃料推進法を違憲としました。化石燃料による汚染が進む西部で火災が猛威を振るう中、モンタナ州の今日の判決は、人為的な気候の混乱による壊滅的な影響から地球を救うための、若者世代の転換点となる画期的なものです。これはモンタナ州にとって、若者にとって、民主主義にとって、そして気候にとって大きな勝利です。このような判決は、今後さらに増えていくでしょう。」と述べています。

  • モンタナ訴訟判決文(PDF、英語)
  • Our Children’s Trustプレスリリース:Sweeping Constitutional Win for Held v. State of Montana Youth Plaintiffs(リンク

この訴訟についての詳細は、Our Children’s Trustのホームページに掲載されていますが、本判決に先立つ8月2日、気候ネットワークが開催した本ウェビナー『世界の気候訴訟最前線2 動き出した米国の司法!モンタナの若者16人の挑戦 ―モンタナ気候訴訟弁護団からの報告―』における資料もご参照ください。このウェビナーの動画および当日寄せられた質問への回答を公開しますので、是非ご参考ください。

  • ウェビナー動画(リンク
  • ウェビナー資料と質問への回答(PDF

また、ウェビナー内でも紹介されていますが、この訴訟についてのドキュメンタリー映画『YOUTH v GOV:私たちの気候変動訴訟』はNetflix にて日本語を含む31 か国語で視聴できます。

参考

【プレスリリース】8月14日、米国・モンタナ州:16人の若者気候訴訟で米国初の勝訴判決- モンタナ州の石炭政策は子どもたちの憲法上の権利を侵害!(2023年8月17日)(リンク

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