2024年11月6日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク


気候ネットワークは、金融と社会的・気候的公正を結びつける問題に取り組むフランスのNGOリクレイム・ファイナンス(Reclaim Finance)と共同で、レポート「明確な撤退を示さない日本 ~石炭火力の段階的廃止への抵抗~」を公表しました。

このレポートでは、日本政府が、日本のメガバンクの支援を受け、今後数十年にわたって石炭火力発電所の延命を図るという非常に問題のある政策を推し進めていることを明らかにしています。日本は、G7諸国の中で唯一明確な石炭廃止計画を持たず、石炭火力の廃止を進めないばかりか、排出量を削減できる見込みのない炭素回収やアンモニア混焼技術を石炭火力発電所に取り付けるという誤った気候変動対策を追求しています。そして、日本の新政権に対し、エネルギー基本計画の改定において、石炭火力の段階的廃止と再生可能エネルギーへの迅速な移行を優先させ、注力するよう求めています。

一方、日本の銀行は、日本政府の政策に沿って、2021年から2023年の期間、235億米ドルを一般炭関連に資しており、石炭産業への投融資総額では中国と米国の銀行に次ぐ世界第3位となっています。日本の銀行による石炭産業への投融資の8割は3メガバンク-三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)- からの出資によるものです。メガバンクの石炭に関する方針は、世界の同業他行に比べてかなり緩く、石炭火力発電所を延命させる高炭素技術をも「トランジション・ファイナンス」に含めて支援を続ける意向を示しています。

気候ネットワークとリクレイム・ファイナンスは、新政権に対し、2030年までに国内の石炭火力発電所を段階的に廃止させ、それにより減少する電力量を再生可能エネルギーによる発電、送電網(グリッド)の改善、エネルギー効率の向上で代替するための明確な計画を含めたエネルギー戦略を採用するように求めます。

執筆者コメント

ダニエル・コ(Danielle Koh):リクレイム・ファイナンスの政策分析担当

日本の大手銀行が、二酸化炭素回収・貯留(CCS)や石炭とアンモニアの混焼を『トランジション』と位置づけることによって石炭の利活用を推進する日本政府の姿勢に同調していることには、非常に憂慮している。こうしたコスト高で実証されていない技術に投融資することは、日本の石炭関連企業には利をもたらすものの、気候にとっては害となり、有意な排出量削減を実現することなく石炭火力発電所を延命させるものである。日本政府、銀行、企業は、高排出な現状を維持するのではなく、真に持続可能なトランジションに取り組むべきである。

桃井貴子:気候ネットワーク東京事務所長

日本は、既存の石炭火力発電設備を維持し続けるために、アンモニア混焼やCCSなどコストが高く効果もない方法を推進し、そこにかかる費用を国民から搾取する仕組みを構築した。メガバンクもこれに追随し、この仕組みを担保に融資を続けていることは非常に問題である。さらに、アジア諸国にまでこの日本の手法を強要させようとしていることは非常に罪深い。石炭火力自体を早期に段階的廃止すべく、政策転換を図るべきだ。

PDFダウンロード

レポート「明確な撤退を示さない日本 ~石炭火力の段階的廃止への抵抗~」(PDF)

参考

Reclaim Fainance "Japan’s flawed strategy to keep burning coal"(WEBサイト・英語)

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