【NGO共同声明】JBIC融資検討中のメキシコ・ガス火力発電2事業はG7合意違反の可能性〜JBIC・NEXI・民間銀行は直ちに支援検討中止を〜（2024年1月25日）

「環境・持続社会」研究センター（JACSES）
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ

国際協力銀行（以下、JBIC）が融資検討中のメキシコのサン・ルイス・ポトシ及びサラマンカでのガス焚複合火力発電事業2案件について、JBICにG7エルマウ・サミットでの新規化石燃料支援停止に関する合意との整合性を問い合わせたところ、メキシコ政府の方針が1.5度目標に整合すると判断した具体的な根拠についての回答は得られなかった。JBICによる支援が行われた場合、G7合意に違反する可能性が高く、支援検討は中止するべきである。

JBICは、2023年11月2日に、融資検討中の案件リストに本2案件を掲載した^※1。本案件は、事業実施者であるメキシコ電力庁（CFE）が、メキシコのサン・ルイス・ポトシ及びサラマンカの既設石油火力発電所に代わり、ガス焚複合火力発電所を建設する事業であり、三菱パワーが発電プラント技術を提供する予定である。2023年12月6日より日本貿易保険（以下、NEXI）も2案件の付保を検討している^※2。

2022年6月開催のG7エルマウ・サミットにおいて、日本政府は「1.5度目標及びパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末までの終了」にコミットしており^※3、「限られた状況」としての例外条項を2案件に適用するにあたっては、支援対象国であるメキシコのエネルギー政策が1.5度目標と整合していることが求められる。しかし、Climate Analytics^※4及びClimate Action Tracker^※5は、メキシコ政府のNDC（国が決定する貢献）は1.5度目標と整合的でないと述べている。

我々NGOとの会合において、JBICは、2案件への支援妥当性の根拠ついて、メキシコ政府の2022年改訂版NDCが1.5度目標に整合すると回答したが、メキシコ政府のNDCが1.5度目標に整合的であると判断した根拠についての説明は得られなかった。通常、JBICの融資は日本のメガバンクとの協調融資で行われ、民間銀行融資部分には日本貿易保険（NEXI）の融資保険が付与されることが多い。付保を検討中のNEXIには2023年12月7日に質問を送付したが、いまだに何の回答も得られていない。これはアカウンタビリティの確保に努めると規定した「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」に違反している。

Mexico Business Newsの記事^※6によると、メキシコにおける太陽光・風力発電の発電コストはガス火力発電よりも低く、コスト優位性が高いと指摘されている。メキシコにおいてコスト優位性が高い再生可能エネルギーによる発電ではなく、より優位性の低いガス火力発電である本2案件への支援は、再生可能エネルギーの最大限活用を示した日本政府のインフラシステム海外展開戦略2025にも整合しない。

以上から、JBIC・NEXI・民間銀行（メガバンク3行）に対して、G7合意違反に相当する可能性が高い2案件への支援検討の中止を求める。