2023年12月23日
認定NPO法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 2023年12月22日、株式会社JERA(以下「JERA」)は、横須賀市久里浜に建設した横須賀火力発電所2号機(石炭・65万kW)の営業運転を開始したことを発表した。これにより年間最大363万トンのCO₂の追加的な排出となる。地球規模の気温上昇や世界各地で多発する気象災害によって甚大な被害が生じている中で、温室効果ガスの排出を最大限減らさなければならない危機的状況であるにもかかわらず、それに逆行する石炭火力の新たな稼動は決して許されるものではなく、JERAとそれを認める国に対して厳重に抗議する。

 横須賀火力発電所2号機について、JERAは当初2024年2月の営業運転開始としていたが、今回その予定を2か月前倒しした。COP28直前の11月29日に実施した定例記者会見において、JERAの奥田久栄社長CEO兼COOは横須賀火力発電所2号機の営業運転を「冬のピークに間に合うように」前倒しするよう指示したことを明らかにしており、それに対応したものと見られる。

 資源エネルギー庁の今季の電力需給見通しでは、10年に一度の厳しい寒さを想定した電力需要に対する予備率は、北海道、東北、東京エリアで1月は5.2%、2月は5.7%と十分な電力が確保されていることが示されている。この想定では、横須賀火力2号機は供給力として含まれていない。ほか、トラブル続きの石炭ガス化複合発電プラント(IGCC)、勿来IGCC(52.5万kW)や広野IGCC(54.3万kW)も織り込まれていない。現状既に稼働中の発電所で「冬のピークへの対応」が可能であった中での、社会的必要性も緊急性もない稼動であると言える。

 さらに、今年12月に開催されたCOP28では、12月1日の首脳級ハイレベル・セグメントにおいて、岸田首相が石炭火力について「排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了」すると述べたばかりである。横須賀火力発電所2号機は「排出削減対策の講じられていない新規国内石炭火力発電所」そのものであり、2023年内に滑り込みのような形でJERAが稼動を開始させ、国がそれを認めるというのは、言行不一致の愚行である。

 気温上昇を1.5℃未満に抑える目標に少しでも近づけるために、日本以外のG7各国は2030年までに全ての石炭火力発電所を廃止することを決めた。日本も、真の気候変動対策に取り組むことは不可避であり、横須賀石炭火力発電所を含む国内172基以上の石炭火力発電所を順次止めるべきである。

参考)

JERA:横須賀火力発電所2号機の営業運転開始について(2023年12月22日)

資源エネルギー庁:今夏の電力需給及び 冬季の見通しについて (2023年9月27日)

JERA:「2023年度下期 定例記者会見 要旨」(2023年11月29日)

首相官邸:COP28における首脳級ハイレベル・セグメント 岸田総理スピーチ(2023年12月1日)

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