1月12日(火)、気候ネットワークは東京電力(株)が計画している福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(広野)および福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来)の環境影響評価準備書に対する意見書を提出しました。

 意見書の主なポイントは以下の通りです。

 

福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来)への意見書

温室効果ガス等について

意見1:予測及び評価の結果全般について

 施設の稼働による温室効果ガス等(二酸化炭素)への環境影響を低減するために環境保全措置を講じるとあるが、今年12月12日、気候変動枠組条約締約国会合第21回締約国会合(COP21)において採択された「パリ協定」の合意内容をふまえれば、化石燃料の利用を抑えることが不可欠であり、石炭を燃料とする本事業は脱炭素社会に向かうべき将来にとって著しく環境を破壊するものであり、施設の稼働そのものが低炭素社会に向けて著しく環境を破壊するものである。本準備書で述べられている「環境保全措置」は、業界の「自主的枠組み」や「電気事業における低炭素社会実行計画」に参加した取り組みを推進するものとあるが、これらの枠組みや計画自体がパリ協定以前に作成されたものであり、1.5℃/2℃未満の長期目標と整合がとれるものになっていない。

意見2:目標0.37kg-CO2/kWhを大幅に超過する排出源単位

 気候変動対策の観点から見れば、今後建設される発電所は、少なくともLNG火力は達成している約350g-CO2/kWhの水準を満たすべきである。しかし、本計画では、発電効率の高いIGCCを採用することによって二酸化炭素の排出源単位を低減するとしながら、「電気事業における低炭素社会実行計画(実行計画)」で示された「2030年度に排出係数0.37kg-CO2」とする目標を大幅に上回り、0.652kg-CO2と非常に大きい。しかも、この数字は、現在同じタイミングで提出された「福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(広野)」環境影響評価準備書に示された広野火力発電所1~6号機の排出源単位が0.652kg-CO2と同レベルであり、効率が改善されたとは言えず極めて不十分であると指摘せざるを得ない。あらたに本計画が稼働すれば、年間の総排出量約262万t-CO2が現状の排出量821万t-CO2に追加されることになり、さらなる排出増加につながる。また、そもそも、この0.652kg-CO2という数字自体が現在稼働している勿来発電所10号機のIGCC(0.735kg-CO2)からさらに発電効率を高めたとの説明があるが、その根拠も不明瞭であり、実態としてその効率が出せるのかも疑わしい。

意見3:業界の自主的枠組みについて

 業界の自主的枠組みとして電気事業連合会加盟10社、電源開発株式会社、日本原子力発電株式会社及び新電力有志23社で構成される電力業界で目標を目指すとあるが、どのように取り組むのかがいまだ明らかではなく、その根拠も示されていない。また、現在登録されている電力自由化が本格的にスタートしたときの小売業者の登録数からするとカバー率は極めて少なく、枠組みが国内の目標に適合するように機能するとは言えない。事業者ごとに排出原単位目標をどのように達成するべきかを説明するべきであり、東京電力として本計画で少なくとも天然ガス火力発電の排出源単位から超過する二酸化炭素排出分にどう対応するのか明確に示すべきである。

小名浜からの石炭トラック輸送について

意見4:本計画は、石炭燃料の輸送について直接接岸できず、小名浜港からトラックでピストン輸送することとされている。現在稼働している7~10号機で使用されている石炭の量が約400万トンとのことだが、単純に計算しても1日あたり平均で1万トン以上の石炭を港から運び込むことになる。本準備書によれば石炭の年間使用量約180万トンが加われば輸送も現状の1.5倍の量になる。また、第2章対象事業の目的及び内容において、既設発電設備の「補修用資材などのの搬出入」で片道2140台/日、そこに新設690台が加わるとされている。しかし、これらの環境影響が不十分で、その対策として「工事関係車両の低減」や「急発進・急加速の禁止及びアイドリングストップ」などが挙げられているが、1日あたりの車両が690台増加することに伴うCO2排出量や環境汚染についての抜本的な対策が講じられているとはいえない。

情報公開について

意見5:環境アセスメントにおいて公開されている準備書は、縦覧期間が終了しても閲覧できるようにするべきである。縦覧期間後に非開示とする理由を企業の著作権保護のためというのは理由にならず、一般的な書物で著作権があるからといって開示すらしないなどという書籍はありえない。

 そもそも環境アセスメントは住民とのコミュニケーションツールであり、できるかぎり住民に開かれたものであるべきである。縦覧期間後の閲覧を可能にするほか、縦覧期間中もコピーや印刷を可能にするなど利便性を高めるよう求める。

 

福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(広野)への意見書

温室効果ガス等

意見1:予測及び評価の結果全般について

 施設の稼働による温室効果ガス等(二酸化炭素)への環境影響を低減するために環境保全措置を講じるとあるが、今年12月12日、気候変動枠組条約締約国会合第21回締約国会合(COP21)において採択された「パリ協定」の合意内容をふまえれば、化石燃料の利用を抑えることが不可欠であり、石炭を燃料とする本事業は脱炭素社会に向かうべき将来にとって著しく環境を破壊するものであり、施設の稼働そのものが低炭素社会に向けて著しく環境を破壊するものである。本準備書で述べられている「環境保全措置」は、業界の「自主的枠組み」や「電気事業における低炭素社会実行計画」に参加した取り組みを推進するものとあるが、これらの枠組みや計画自体がパリ協定以前に作成されたものであり、1.5℃/2℃未満の長期目標と整合がとれるものになっていない。

意見2:目標0.37kg-CO2/kWhを大幅に超過する排出源単位

 気候変動対策の観点から見れば、今後建設される発電所は、少なくともLNG火力は達成している約350g-CO2/kWhの水準を満たすべきである。しかし、本計画では、発電効率の高いIGCCを採用することによって二酸化炭素の排出源単位を低減するとしながら、「電気事業における低炭素社会実行計画(実行計画)」で示された「2030年度に排出係数0.37kg-CO2」とする目標を大幅に上回り、0.652kg-CO2と非常に大きい。しかも、本準備書に示された現状の広野火力発電所1~6号機の排出源単位が、0.652kg-CO2と示されたことからしても、何ら全体効率が改善されたとは言えず極めて不十分であると指摘せざるを得ない。そもそも、この0.652kg-CO2という数字自体が現在稼働している勿来発電所10号機のIGCC(0.735kg-CO2)からさらに発電効率を高めたものとの説明だが、その根拠も不明瞭であり、実態としてその効率が出せるのかも疑わしい。

意見3:業界の自主的枠組みについて

 業界の自主的枠組みとして電気事業連合会加盟10社、電源開発株式会社、日本原子力発電株式会社及び新電力有志23社で構成される電力業界で目標を目指すとあるが、どのように取り組むのかがいまだ明らかではなく、その根拠も示されていない。また、現在登録されている電力自由化が本格的にスタートしたときの小売業者の登録数からするとカバー率は極めて少なく、枠組みが国内の目標に適合するように機能するとは言えない。事業者ごとに排出原単位目標をどのように達成するべきかを説明するべきであり、東京電力として本計画で少なくとも天然ガス火力発電の排出源単位から超過する二酸化炭素排出分にどう対応するのか明確に示すべきである。

情報公開について

意見4:環境アセスメントにおいて公開されている準備書は、縦覧期間が終了しても閲覧できるようにするべきである。縦覧期間後に非開示とする理由を企業の著作権保護のためというのは理由にならず、一般的な書物で著作権があるからといって開示すらしないなどという書籍はありえない。

 そもそも環境アセスメントは住民とのコミュニケーションツールであり、できるかぎり住民に開かれたものであるべきである。縦覧期間後の閲覧を可能にするほか、縦覧期間中もコピーや印刷を可能にするなど利便性を高めるよう求める。

 

意見書

福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来) 環境影響評価準備書に対する意見書

福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(広野) 環境影響評価準備書に対する意見書