日本のエネルギー政策に関する評価レポート発表
米国専門家が「エネルギー基本計画」の欠陥を指摘

2015年4月28日
認定NPO法人 気候ネットワーク

 本日28日、気候ネットワークは、「持続可能な電力供給とは~日本のエネルギー政策に関する評価~」を発表した。このレポートは、米国の環境コンサルタント、ブルース・C・バックハイト氏に委託し、昨夏の来日調査を含め、日本のエネルギーの選択肢や論点について、特に電力に焦点をあてて、「エネルギー基本計画」や政策改定議論の中で十分に考慮されていない点も含めて評価を行い、とりまとめられたものである。

 折しも本日、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会では、2030年の電源構成(エネルギーミックス)が示される予定である。その内容は、省エネの可能性をほとんど見込まず、電力需要は2013年から2030年に向けてほぼ横ばいであることを前提とし、電源構成も、原発・石炭依存の旧来型の構造と何ら変わらず、再エネの導入を低く見積もるもので、極めて危機的な状況にある気候変動問題のみならず、海外資源依存型で、将来の価格変動等の不確定要素も考慮していない極めて後ろ向きな内容であると指摘せざるを得ない。

 本レポートでは、今般議論されているエネルギーミックスの議論の元となる「エネルギー基本計画」が、太陽光発電、風力発電、原子力発電、石炭火力発電、省エネルギーなどの分野において、誤った事実認識によって見過ごされている多くの論点があることを指摘している。また、エネルギー開発の個別計画に関する情報、計画中の新規発電の状況に関する情報、既存の発電所の運用に関する情報など一切公開されていないことへの指摘に加え、基礎情報へのアクセスの欠如、政策決定過程の透明性の欠如など、エネルギーに関する不透明な実態が、必然的に社会的コストをはらんでいることも指摘している。そして、関連データの公表を進めていく手順をとるよう勧告されている。

 

▼「持続可能な電力供給とは~日本のエネルギー政策に関する評価~」の主な論点▼

  • 「エネルギー基本計画」では、日本の再生可能エネルギーの急速な拡大の可能性が過小評価されている。FITが現実的に改正され、系統の制約が減じられれば、計画中の新規石炭火力発電よりも早くまた低コストで建設することができる。
  • 「エネルギー基本計画」では、過去約20年にわたって見られる石炭及び核燃料の価格変動についても過小評価されており、そのような変動を補うリスクプレミアムの構築などが考慮されていない。
  • 「エネルギー基本計画」は、事実に基づいて石炭火力を支持するのでもなく、国内・国際両方において、超々臨界圧やIGCC発電所の利用増加が必要であるという合理的な理由も説明されていない。
  • 古い石炭火力発電所や原子力発電所を継続的に利用することに伴って上昇することになる維持管理コストや、その上に追加される安全対策コストについても考慮されていない。
  • 日本のエネルギー分野の運用実績に関する透明性が欠如しており、既存及び新規に計画される発電所に関して、現在の水準よりもかなり多くのデータが公表されれば、この重要な分野においてより良い政策を展開することができる。

レポート本文:

(日本語版)持続可能な電力供給とは ~日本のエネルギー政策に関する評価~(PDF)

(英語版)Japan’s Path?to Sustainable?Electricity Supply -A Review of Current Japanese Energy Policies-(PDF)

問合せ:

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