共同声明
ベトナムのブロックBオモン事業への
三井物産の最終投資決定、JOGMECの最終投資決定および債務保証の
撤回を求めます

メコン・ウォッチ
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
Oil Change International

ベトナムのブロックBオモン事業(海洋ガス田開発及び発電所へのパイプライン輸送)について、3月末に三井物産株式会社が最終投資決定をし、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下、JOGMEC)が最終投資決定および債務保証をするとのプレスリリース(1, 2)を発表したことを受け、私たち環境団体は決定の撤回およびJOGMECによる支援停止を求めます。この事業は新たな温室効果ガス(GHG)排出をロックインし、気候危機を深刻化します。また、人権問題もあります。

私たち環境団体は、地球の平均気温が産業革命前の水準に比べすでに1.45度を超え(3)、パリ協定の1.5度目標達成が危ぶまれるいま、化石燃料からの脱却の必要性を訴えます。既存の化石燃料事業はフェーズアウトしていく必要があり、新規の化石燃料事業を展開する余地は地球上にありません(4)

ベトナムのブロックBオモン事業は、ベトナム南西沖のブロックBガス田(ブロックB&48/95鉱区、52/97鉱区)を開発し(上流事業)、採掘したガスを全長433km(海底約330kmおよび陸上約100km)に及ぶパイプラインでオモンガス火力発電所まで輸送する(中流事業)ものです。下流事業であるオモンガス火力発電所は4つの発電所で構成される予定で、合計3,810MWという大規模な発電所コンプレックスとして計画されています。この下流事業の一つ(オモンI:660MW)は既に稼働していますが、現在までのところ必要な緊急時に燃料油を用いて稼働(5)する運用のため、発電によるGHGの排出は限られています。しかし、パイプラインでガスが供給され常時稼働するようになれば排出量は格段に増加することになります。ましてやオモンII, III, IV(各1,050MW)が建設されて稼働することになれば、オモンガス火力発電所からのGHG排出は気候変動を加速させ、大気汚染も悪化させ、ベトナムの脱炭素化を阻害します。
 
また、発電所での燃焼によるGHG排出もさることながら、ガスが主にメタンで構成されており、そのメタンが強力な温室効果を持っていることも懸念材料です。メタンは最初の20年間スパンで見ると二酸化炭素の80倍もの温室効果があります(6)。メタンはガス産業のサプライチェーン全体で漏れ出しており(7)、IPCCの報告によると、温暖化を1.5℃程度に抑えるためには今後数年間が重要であり、メタン排出も2030年までに3分の1と大幅に削減する必要があります(8)。日本もベトナムもグローバル・メタン・プレッジ(9)の参加国で、メタン削減に取り組んでいます。日本企業や日本政府は、新規ガス田開発やガス関連インフラの新設を後押しすべきではありません。

三井物産は完全子会社である三井石油開発株式会社(MOECO)を通じて上流・中流事業に権益を持ち、事業パートナー(10)と共に3月28日に最終投資決断を行ない、関連契約を締結したと翌日発表しました。JOGMECは、MOECOとの合弁を通じ上流事業に権益を持っています。JOGMECは3月26日にブロックBオモン事業を債務保証対象事業として採択し、3月28日には最終投資決定に至ったと発表しました。

本事業は環境面だけでなく、人権面でも問題があります。本事業のパートナー企業の一つ、資源開発会社PTTEPはタイ石油公社(PTT)の完全子会社ですが、PTTEPが非人道的な行為を続けるミャンマー軍の資金源の一つとなっているとの理由から、ノルウェー政府年金基金はPTTを投資除外対象に指定しています(11)。更にベトナムではここ数年、環境活動家らが相次いで逮捕されており、環境・エネルギー政策について市民が自由に発言できない状況が続いています(12)。ビジネスと人権という観点からも、今回の決定は誤っています。

日本政府は2022年のG7エルマウ・サミットで「1.5度目標及びパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末までの終了」をすることにコミットしており、JOGMECの決定はこのコミットメントと整合しません。Climate Action Trackerは、ベトナムにはガスの消費を急増させる計画があるが、ガス分野を発展させようとするベトナム政府の取組みは1.5度目標と整合しない、また、深刻な座礁資産リスクを高めると分析しています(13)

私たちは、三井物産およびJOGMECの決定に抗議し、撤回を求めます。

また、中流事業については国際協力銀行(JBIC)及び民間銀行が融資を検討中ですが、融資はしないよう要請します。いま注力すべきは省エネや再生可能エネルギーです。地中に埋めたままにしておくべきガスの採掘および発電での利用を拡大する新規事業計画を可能にすべきではありません。

注釈
  1. https://www.mitsui.com/jp/ja/release/2024/1248969_14376.html
  2. https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00174.html
  3. World Meteorological Organization, "State of the Global Climate 2023", https://wmo.int/publication-series/state-of-global-climate-2023, March 19, 2024
  4. IEA, "Net Zero Roadmap: A Global Pathway to Keep the 1.5 °C Goal in Reach", https://www.iea.org/reports/net-zero-roadmap-a-global-pathway-to-keep-the-15-0c-goal-in-reach, September 2023
  5. JICA, 2018年度外部事後評価報告書, https://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2018_VNV-2_4_f.pdf
  6. Nature, “Control methane to slow global warming fast”, https://www.nature.com/articles/d41586-021-02287-y, August 25, 2021
  7. IEA, ”Global Methane Tracker 2024”, https://www.iea.org/reports/global-methane-tracker-2024, March 2024
  8. IPCC, “The evidence is clear: the time for action is now. We can halve emissions by 2030.”,
    https://www.ipcc.ch/2022/04/04/ipcc-ar6-wgiii-pressrelease/, April 4, 2022
  9. Global Methane Pledge, https://www.globalmethanepledge.org/
  10. ベトナム国営石油ガス会社Vietnam Oil and Gas Group (PVN)、PetroVietnam Exploration Production Corporation Limited (PVEP)、PetroVietnam Gas Joint Stock Corporation (PV Gas)、タイ国営石油ガス会社PTT Exploration and Production Public Company Limited (PTTEP)
  11. NBIM, Observation and exclusion of companies, https://www.nbim.no/en/responsible-investment/ethical-exclusions/exclusion-of-companies/
  12. OHCHR, Press Briefing Notes “Sentencing of environmental human rights defenders in Viet Nam” https://www.ohchr.org/en/press-briefing-notes/2023/09/sentencing-environmental-human-rights-defenders-viet-nam, September 29, 2023
  13. Climate Action Tracker, Viet Nam 20 Nov. 2023 Update, https://climateactiontracker.org/countries/vietnam/policies-action/

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