気候ネットワークは、「第六次環境基本計画(案)」に対して以下の意見を提出しました。

P46 11行目~ 参加の促進

 日本の気候政策策定にあたって、政策決定プロセスに市民が参加していないことが非常に問題である。とりわけエネルギー政策においては、エネルギー多消費産業の既存産業の既得権益を持つ関係者が多数参加する審議会や関連会合で決定され、ほぼ内容が固まった時点で形式的なパブリックコメントの募集があるというスタイルが常態化している。

 本案では、「参加の促進」として、「国民の環境意識の向上に働きかける施策や行動、国民相互のコミュニケーションの充実、政策決定過程への国民参画とそのための政策コミュニケーション、 その成果の可視化が必要である。」などと示されているが、リオ宣言第10原則で謳われた、環境政策における人びとによる情報への アクセス、決定過程への参加、司法へのアクセスの権利に関する諸原則を、「環境政策における参加原則」として位置づけ促進すべきである。

P49~ 第3章 環境政策の原則・手法  1環境政策における原則等

 本案では、環境政策における原則として「リスク評価と未然防止原則」「汚染者負担の原則」「環境効率性」が提示されているが、環境政策の原則として、「参加原則」を位置付けるべきである。また、リオ宣言第10原則に謳われた諸原則を、環境基本法に規定することが不可欠で、法改正を念頭に、議論をすべきである。

P51~ 第3章 環境政策の原則・手法  2 環境政策の実施の手法

 本案では、環境政策の実施の手法として、「直接規制的手法」「枠組規制的手法」「経済的手法」「事業的手法」が示されているが、これに加えて「参加的手法」を位置付けるべきである。近年、気候市民会議のような形で気候政策について、科学的な情報提供を行った上で市民が議論し、政策に反映させる方法などが欧州を中心に広がっている。「参加原則」に基づき、参加的手法を政策実施の手法の一つとして位置づけ、実行すべきである。

P99 14行目~  国民に対する科学的知見の効果的な共有

 本案では「昨今の異常気象の認識は浸透しているものの」、それが「国民の脱炭素への意識や行動に必ずしも直結していない状況がある」として、「『デコ活』の推進と合わせ、その前提となる科学的知見について、政府を始め各主体による情報発信を進めていく。」などとしている。科学的知見の情報発信は不可欠だが、その具体的な取り組みとして、単なる「できることから、こつこつと取り組む、活動」などと評されるような現状行われている活動の延長ではなく、1.5℃目標に整合するために必要な削減レベルや、そのために求められている2035年の電源の脱炭素化や、2030年までの再エネ3倍などに向けた世論を喚起するような情報発信を進めるべきである。そのためにも、政策形成プロセスでの多様な市民の「参加」は不可欠で、多様な意見を集めて可視化することが必要である。

P99  37行目~ 「新たな成長」を支える科学技術・イノベーションの開発・実証と社会実装

本案で示す 「「新たな成長」を支える科学技術・イノベーション」とは何を指しているのか。現在、政府が進める「グリーントランスフォーメーション(GX)」とされる水素・アンモニア、CCUSなどが想定されているが、こうした技術は未だ実用化には程遠く、短期的なCO2排出削減効果はほぼゼロであり、その評価すらなされていない。これらに多額の予算を講じる前に、気候変動対策として実施すべきは、すでに実用化している再生可能エネルギーや省エネ技術を徹底して普及拡大することである。特に太陽光発電や風力発電などのポテンシャルが高く、コストが最も安い分野であることはIPCCでも示されているとおりである。まずはこれらを着実に社会の中に実装することこそが不可欠であり、国民の理解を深めていく必要がある。

 また、「イノベー ションは自ずとグリーンな方向に向かうわけではないことから、環境目的以外の技術群であっても、環境収容力を守る形での技術とするとともに、環境問題の解決に貢献する技術としていく必要があることを念頭に入れ、施策を展開していくことが重要」としているが、そのための「評価」をすることも記載しておくべきである。

 現在、「脱炭素」を目的としている「水素やアンモニア」「CCUS」でもCO2の削減効果やコスト効果などがまともに検証されないまま進められており、CO2の削減効果のみならず、その他の環境影響を含めて客観的な評価が求められる。

P115 5行目~ 気候変動対策

本案では「我が国は、1.5℃目標と整合的な形で、「2050年カーボンニュートラル」「2030年度46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」という目標を掲げており」とあるが、2030年度に2013年度比46~50%削減、2050年カーボンニュートラルでは1.5℃目標に整合的な形とは言えない。1.5℃目標に整合する目標としては、少なくとも2030年に60%以上の削減が求められ、国連からは先進国は2040年までのカーボンニュートラル達成が必要だとされている。今後、NDCの検討にあたって、1.5℃目標と整合する目標への見直し議論を念頭に表現を改めるべきである。また、NDCの検討にあたっては、「パリ協定6条」の活用などと、海外からのクレジットをあてにすることを念頭にした文言が見られるが、まずは国内での真水の削減を確実に行うことを強調すべきである。

P115 10行目~ 気候変動対策

本案では「脱炭素成長型経済構造移行債(以下「GX経済移行債」という。)を活用した20兆円規模の先行投資支援など成長志向型カーボンプライシング構想の速やかな実現・実行等、引き続きあらゆる施策を総動員しながら加速化していく」としているが、気候変動対策は「あらゆる施策を総動員」ではなく「選択と集中」が必要である。とりわけ、政府のGX経済移行債の20兆円規模の先行投資先として、リスクの高い、民間では投資が集まりにくい分野に投資を向けるとしているが、石炭火力でのアンモニア混焼やCCSといった分野に投資することで、再エネの拡大を妨げるリスクが高まる。気候変動対策としての効果を検証し、最も効果的な分野に投資を集中するべきである。

P136 38行目~ 電力部門

本案では、「電力部門において、脱炭素電源を最大限活用することに加え、火力発電については、電力の安定供給を大前提に、できる限り発電比率を引き下げていくべく、2030 年に向けて非効率石炭火力のフェードアウトを着実に進める。さらに、2050年に向けて水素・アンモニアや CCUS/カーボンリサイクル等の活用により、脱炭素型の火力発電に置き換える取組を推進していく 」とあるが、電力部門については、本案のP26で示されたG7広島首脳コミュニケ「我々は、2035 年までに電力セクターの完全又は大宗の脱炭素化の達成」を前提に、大幅な見直しが必要である。現状では、2020年に創設された容量市場、2024年から追加された長期脱炭素電源オークションなどが、石炭火力発電をはじめとする既存の石炭火力発電所の維持につながっており、OCCTOの供給計画とりまとめでは非効率石炭火力発電所を含め廃止計画は10年先までほとんど出ていない。仮に、非効率石炭火力を2030年に全廃したとしても2035年に多くの石炭火力発電が残ることになり、国際合意に全く整合がとれていない状況である。このギャップを検証すべく、かつて環境省が実施していた「電力レビュー」のような評価のしくみを再度つくって客観的に評価していくべきである。

P176  4行目~ 地域脱炭素の加速化

大規模排出事業者である発電所や製鉄所等の事業所が立地する地域では、その事業所の存在が地域全体の経済や雇用などに甚大な影響を及ぼしている。地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画の策定にあたっては、大規模排出事業者の事業所からの排出の削減を含めて地域の脱炭素化と地域の産業構造のあり方や持続可能な地域社会へといかに転換するか、「公正な移行」の観点から実行計画を策定することが求められる。

参考

パブコメ(4月10日24時締切):https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620223035&Mode=0

環境省:第六次環境基本計画(案)の公表及び本案に対する意見の募集について

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