2024年3月22日
気候ネットワーク
 代表 浅岡 美恵

株式会社JERAは3月13日、所有する碧南火力発電所(愛知県)にて、アンモニア20%混焼の実証試験を3月26日に開始するとして、報道陣向けにアンモニア混焼用の燃焼装置や配管、アンモニア貯蔵タンクなどを公開し、報道各社は碧南火力発電所でのアンモニア20%混焼の実証試験開始について報じました。石炭火力発電所でのアンモニア燃料利用の推進は気候変動対策のグリーンウォッシュであり、パリ協定の1.5℃目標実現に向け世界が急ぐ脱石炭火力の取り組みに反しています。また、これに関する報道では、アンモニア混焼方策が実際のCO2の排出削減に殆ど寄与せず、1.5℃目標の実現と整合しない等の問題点に留意することなく、結果として、グリーンウォッシュに加担する記事が散見されます。

JERAは碧南火力発電所の4号機(100万kW)の燃料にアンモニアを20%混焼させる実証試験を、燃焼装置を開発するIHIと共同で約3か月間行う予定です。大型の商業炉でのアンモニア20%混焼は世界初とされています。JERAはアンモニア20%混焼によって燃焼時のCO2排出量を20%削減できると主張し、2027年度以降に20%混焼の商用化、さらに2050年までにアンモニア100%専焼の実用化を目指すとしています。

しかし、石炭火力発電所でのアンモニア燃料の利用は、先進諸国が脱石炭火力を求められている2030年はおろか、2050年になっても石炭火力を維持することと表裏一体にあり、本来取り組むべき気候変動対策とは逆行するものです。今回の実証実験で使用されるアンモニアは、約3~4万トンとされていますが、化石燃料由来のグレーアンモニアであり、燃料アンモニアの製造時の環境負荷を加えたライフサイクルでみたCO2削減効果はごく僅かなものです。しかも、コスト髙であることはJERA自身が自認し、今、こうした火力発電における混焼に用いられる水素・アンモニアの高コスト分を事業者が事業リスクとして引き受けるのではなく、国が公的資金をもって、あるいは電気料金に転嫁して支援するための法律(水素・アンモニア等供給利用推進法)まで用意されようとしています。こうしたアンモニア混焼における問題については、気候ネットワークをはじめ、国内外の複数の団体が分析レポートを発表しており、1.5℃目標と整合せず、石炭火力の延命策であるとして、国際的にも批判されてきたところです。

2023年に開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の成果文書では「化石燃料からの脱却(transitioning away from fossil fuels)」が宣言されたほか、地球の平均気温上昇を1.5℃未満に抑えるには、世界の温室効果ガス(GHG)排出量を2019年比で2030年までに43%減、2035年までに60%減と、大幅に減らす必要があると明記され、世界の再生可能エネルギー容量を3倍とすることも盛り込まれました。これらの目標達成に向け日本が先進国としての責任を果たすためには、2030年までにエネルギー起源CO2排出の約40%を占める電力セクターで大幅に排出を削減し、再生可能エネルギーの導入を大幅に拡大しなければなりません。再生可能エネルギーと比べコストが高く、削減効果も乏しい石炭火力でのアンモニア燃料利用を進めるJERAの取り組みは、早急に必要な気候変動対策と矛盾するものです。

気候ネットワークが確認する限りにおいて、本件についての報道(時事通信社、日本経済新聞、NHK、名古屋テレビ放送)は総じて、「CO2を出さないアンモニア」「2050年までにCO2を排出しない『ゼロエミッション火力』実現を目指す」といったJERAの主張をそのまま報じる内容であり、アンモニア燃料の製造時・輸送時のCO2排出やコストの高さ、1.5℃目標と整合しないことなど、課題点を説明した報道はありませんでした。事実に反するJERAの主張を批判的視点なしに報道することは、グリーンウォッシュに加担するものとして、懸念を表明します。

JERAは従来より各種広告媒体において、「2050年カーボンニュートラル」「ゼロエミッション火力」「CO2の出ない火」といった主張を繰り返してきました。こうした広告におけるJERAの主張には科学的根拠が示されておらず、事実にも反する「グリーンウォッシュ」であるとして、気候ネットワークは昨年10月、日本環境法律家連盟と共同で、公益社団法人 日本広告審査機構(JARO)に対し、JERAへの広告中止勧告を求める申立を行ったところです。

参考

  • プレスリリース】JERAの「CO2が出ない火」広告は気候・グリーンウォッシュ~JAROに排除勧告を申立~(2023年10月5日) 
  • グリーンウォッシュパンフレット(PDF

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