2023年12月13日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催されていた国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)は、会期を一日延長した12月13日に、第1回グローバルストックテイクを踏まえ今後の取組を集約した文書を採択して閉幕した。2023年はこの12万5000年で最も暑い年となり、グテーレス国連事務総長が地球沸騰化時代に入ったと述べ、さらに、気候崩壊の始まりとも評した。過去最大の10万人を超える参加登録があり、化石燃料業界のロビイストも多く参加しているという分析が発表されるなか、開会冒頭で損失と損害基金の運用ルールを採択し、広い会議場で多彩な会合が開かれ、これまでのCOPとは少し様相を異にしていた。


 直前のグローバルストックテイクに関する議長案には、島嶼国をはじめ、多くの国やNGOから強い批判の声が沸き起こっていたが、最終的に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書を踏まえた決定文書が採択された。1.5℃目標の重要性とその実現を重く掲げ、かつ残余のカーボンバジェットの急速な減少を踏まえ、IPCCが提言した温室効果ガスを2019年比で2030年までに43%削減、2035年まで60%削減する目標が取り入れられた。そして、公正で衡平な方法でエネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却、科学にもとづき2050年にネットゼロを達成するために、この重要な10年のうちに行動を加速させることを確認し、2030年までに世界で再エネ設備容量を3倍に、エネルギー効率改善を2倍にすることも盛り込んだ。これは、1.5℃目標の実現と整合させた経済社会への道筋を確認したものといえよう。排出削減対策がとられていない石炭火力のフェーズダウン(段階的削減)の加速や、ゼロカーボンあるいは低炭素の燃料を2050年までに加速させる、また非効率な化石燃料補助金をできるだけ早く廃止するといった指標も、この大きな文脈のなかでとらえる必要がある。合意案の一つであった「化石燃料の廃止」は取り入れられなかったが、COP決定文書で化石燃料削減の方向性が示された意味は大きい。残念ながら原子力の文字は残っているが、その影は極めて小さく、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)についても、排出削減が困難なセクターにおける利用が特記されている。
 既に深刻な影響に苦しんでいる国や地域への適応策や損失と損害への応分の支援が急務であることはいうまでもないが、同時に、温暖化を1.5℃未満に抑えることを実現することは、すべての人々と将来世代の被害を最小化するために不可欠である。


 日本は、石炭火力アンモニア混焼や化石燃料に依存したエネルギー政策の転換を回避するために合意文書の抜け穴を探すのではなく、産油国で開催されたCOP28での世界の潮流をしっかりと受け止め、次期NDCの提出までに脱化石、再エネの拡大に向け、抜本的に気候・エネルギー政策を改める議論を速やかに開始すべきである。

以上

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