2024年11月25日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

アゼルバイジャン共和国のバクーで開催されていた国連気候変動枠組条約第29回締約国会合(COP29)は会期を2日延長した11月24日早朝(バクー時間)に閉幕した。

気候危機が深刻化するなか、世界全体での気候変動対策の加速と目標の引き上げがより一層求められている。2025年2月までに各国が2035年までの次期削減目標(NDC)を提出することになっているが、気候資金は途上国を含めた世界全体の野心の引き上げと行動の加速の裏付けとなる重要な要素である。

今回のCOPは「資金COP」と呼ばれ、2025年以降の気候資金目標(NCQG)が最大の焦点となったが、その歩みはわずかであった。NCQGの合意にはこぎつけつけたものの、年3000億米ドルの金額目標に留まるなど、気候変動の悪影響にさらされている途上国の要望する金額目標にも、資金の性質にも見合う内容でなく、途上国からも市民社会からも抗議の声が次々とあがった。緩和に関しては、昨年のCOP28でおこなわれた第1回グローバル・ストックテイク(GST)で合意された化石燃料からの脱却、再エネ3倍、エネルギー効率倍増といった温室効果ガス排出削減への貢献をさらに促すことを期待したが、合意にいたらず議論を継続することとなった。

この間、アメリカ大統領選挙におけるトランプ氏再選、アルゼンチンの政府代表団の会議の離脱などが報じられたが、COP会場のアメリカやアルゼンチン等の非国家アクターによる1.5℃目標達成に向けた動きが止まることはなかった。また、COP29開催期間中には有志の「Call to Action for No New Coal」が立ち上がり、オーストラリアなど25カ国が賛同した。これは、NDCを含む国の気候変動対策計画に新たな石炭火力を使用しないことを宣言し、他国にもそれを呼びかける内容である。1.5℃目標の達成に向け、化石燃料、特に石炭火力からの早期脱却、再生可能エネルギーの導入拡大と省エネの徹底の方向性は変わらない。

日本では、2025年2月までのNDC提出を控え、第7次エネルギー基本計画および次期NDCに関する議論が大詰めを迎えているが、日本はCOP29期間中に発表された、EUやカナダらによる1.5℃目標に整合した次期NDC強化に関する共同宣言に参加しなかったことが報じられている。しかし、先進国としてIPCCの示す世界全体の排出削減目標を大きく上回る、野心的な排出削減目標を打ち出す必要があり、国際環境シンクタンクClimate Action Trackerによる分析では、日本は2035年までに81%削減(2013年比)すべきとの目標が示されている。

加えて、日本政府は依然として、アンモニア混焼やCCSといった石炭火力の延命につながり、排出削減効果に乏しい技術の活用を脱炭素対策の切り札としているが、COP29での各国や非国家アクターの動きを受け止め、脱化石燃料、再エネの主力電源化、省エネの徹底を基本とした政策に舵を切り、それら真に脱炭素につながる政策に十分な投資をおこなうこと、および海外支援においても同様に再エネと省エネに資金を集中的に投入していくことが求められる。

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