COP26グラスゴー会議の結果とその後の日本政府の対応の評価

2022年3月4日

特定非営利活動法人気候ネットワーク

2021年10月31日から11月13日にかけて、英国・グラスゴーで国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、気候ネットワークのメンバーもオブザーバー参加しました。

本ペーパーは、COP26グラスゴー会議を取り巻く情勢、交渉の内容や合意のポイントと評価、今後の気候交渉の見通し、COP26後の日本課題についてとりまとめたものです。

目次

  1. COP26グラスゴー会議の背景
  2. COP26交渉とその結果
  3. 今後の気候交渉の見通し
  4. COP26と日本の課題

要約 Executive Summary

新型コロナウィルスのパンデミックによって1年延期されたのち、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)及び関連会合は、10月31日(日)から11月13日(土)にかけて、英国の都市グラスゴーにて開催された。
COP26では、世界リーダーズ・サミットが開催され、日本の岸田文雄首相を含む各国首脳が参加し、気候変動対策の意思を表明した。交渉では、1.5℃目標への野心強化や国別貢献(Nationally Determined Contribution;NDC)の引き上げ、パリ協定6条の市場メカニズム(排出削減実績を国際的に取引したり、他国での削減事業を共同で実施したりする仕組み)などの議題で議論が行われた。交渉の枠外では、議長国イギリスは「1.5℃を達成不可能にしない(Keep 1.5 Alive)」、「石炭を終わらせる(End of Coal)」とのメッセージを随所で繰り返しつつ、「エネルギーの日」、「森林の日」などテーマ別のイベントを開催して共同声明を発表した。 「脱石油・脱ガス国際連盟(BOGA)」のように有志国による行動強化のイニシアティブが発信された。市民社会も新たな調査成果を発表し、日本政府に対して石炭火力発電の維持・推進方針に抗議するアクションを行った。
2週間の会期の後、「グラスゴー気候合意(Glasgow Climate Pact)」が採択された。2015年のパリ協定よりも踏み込んで、1.5℃上昇は、2℃上昇よりも気候変動影響がはるかに小さくなることを認識し、1.5℃目標の追求を「決意する」との合意がなされ、事実上「1.5℃」が国際社会の共通の目標となった。また、カーボンバジェットが急速に縮小していることに警鐘を鳴らし、この「決定的に重要な10年」の対策強化の必要性を強調するとともに、各国政府に対し、NDCの2030年目標を強化して2022年末までに再提出することを要請した。さらに、COPの歴史で初めて石炭火力発電の削減や化石燃料補助金の段階的廃止に係る文言が合意文書に盛り込まれたのも画期的であった。パリ協定6条については交渉が難航したが、京都メカニズムのクレジットの条件つき繰越しを認めるなどの妥協の上で合意がなされ、市場メカニズムの運用が本格始動することになった。その他、共通の時間枠、損失と被害、適応の世界目標といった論点でも交渉が行われ、それぞれ合意がなされた。COP25マドリード会議で決着しなかったパリ協定の実施指針の一部は、COP26グラスゴー会議で合意されたことで、いよいよ脱炭素の対策実施フェーズに移ったことが示された会議となった。
日本政府は、2020年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言し、COP26直前に「2030年までに2013年比で46~50%削減」との目標を位置づけたNDCを国連に再提出するなどの前進が見られたが、依然としてその目標・対策はパリ協定1.5℃目標の実現と整合せず、2030年目標の達成を含めて政策措置を欠いており、重い課題を残している。とりわけ、CO2排出量の大きい石炭火力発電から脱却する方針を示せず、アンモニア・水素混焼によって批判をかわそうとしたことはグリーンウォッシュであると厳しい批判を浴びた。
COP26終了後、日本政府が、グラスゴー合意の重要なポイントであるNDC引き上げ要請や石炭削減について国内向けに説明せず、それをまるでなかったことであるかのように無視し、何ら目標・対策強化の姿勢を見せていないことにも批判が集まっている。日本政府は気候科学に向き合い、目標のさらなる引き上げ、脱石炭・脱化石について、遅くともCOP27シャルム・エル・シェイク会議までに新たな方針決定ができるよう、速やかに政策強化のプロセスに着手する必要がある。

【ペーパー】COP26グラスゴー会議の結果とその後の日本政府の対応の評価(全17ページ・PDF版・2.74MB)

【ペーパー】COP26グラスゴー会議の結果とその後の日本政府の対応の評価(2022年3月4日)

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