【プレスリリース】
IPCC第6次評価報告書(AR6)第2作業部会報告書
~気温上昇を1.5℃以内に抑える努力が急務、
日本は2030年までの脱石炭に向けエネルギー政策の抜本的見直しを~
2022年3月4日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
2月28日、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第55回総会及び同パネルWG2第12回会合にて、第6次評価報告書(AR6)第2作業部会(WG2)報告書の政策決定者向け要約(SPM)とともに、同報告書の本文及び付録などが受諾された。報告書全文は、総会での議論を経て、2022年7月頃に公表される予定である。
WG2では、世界・地域レベルにおける生態系、生物多様性、および人間のコミュニティに対する気候変動の影響評価を行い、気候変動に適応するため、自然と人間社会の脆弱性と能力と限界に関して考察を行った。その結果をまとめた本報告書は、「人為起源の気候変動はより頻繁で激しい異常気象を伴い、自然の気候変動を超えて、自然や人間に広範な悪影響と関連する「損失と損害」を引き起こしている」と述べた上で、気候変動に対して最も脆弱な人々は最も大きな打撃を受けていると指摘している。現在、世界で約33~36億の人々が、異常気象、海面上昇、食糧と水不足などの気候リスクに対して非常に脆弱な状態に置かれているという。
地球の平均気温上昇は近いうちに1.5℃に達しつつあり、気候ハザードの増加は避けられず、将来的に生態系ならびに人間に対して深刻かつ複合的なリスクをもたらす確率が高まっている。リスク評価における中長期的影響は、現在観測されている影響の数倍となると見られており、気候変動に関連する損失と損害を低減させるためには、平均気温が1.5℃を超えて上昇する(オーバーシュート)するのを避け、1.5℃以下に抑える対策が不可欠であると述べている。
一方で、温暖化を1.5℃付近に抑える短期的な対策で損失と損害を低減できたとしても、全てを無くすことはできない。気候変動の影響に対する「適応」が求められているが、適応には限界があり、すでに一部の生態系は対応が困難な状態に到達していることから、今後、地球温暖化が進行することで損失と損害が増加し、より多くの人間や自然が適応の限界に達すると指摘されている。
さらに報告書は、人間システム及び生態系における適応は実施されているもののその進捗は不均衡であることを指摘し、その上で、適応の実施、加速、継続には、政治的コミットメントとその遂行や明確な目標と優先順位を掲げた政策など、適応策を可能にするための条件が重要であると述べている。また、気候変動が既に人間と自然のシステムを破壊していることは疑う余地がないことを踏まえ、気候にレジリエントな開発のための行動をとる緊急性が高まっていることが示された。
WG2においても気温上昇を1.5℃以内に抑える重要性が改めて確認された。1.5℃を目指して温室効果ガスの排出量を早急に削減し、すでに生じている損失と損害に対処しつつ、将来の気候変動リスクを軽減していかなければならない。それは、日本の持続可能な発展・産業競争力の再構築にも不可欠である。
そのためにも日本は、2050年脱炭素に向けて2030年までの脱石炭を実現させるべく、エネルギー政策を抜本的に見直し、パリ協定1.5℃目標と整合させる必要がある。まずは、2030年までに石炭火力をフェーズアウト(段階的廃止)するため、再エネ目標を大きく引き上げ、主力電源化に本気で取り組み、早々に化石燃料からの脱却の目標年を明確に示すべきである。
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参考
IPCC第6次評価報告書第2作業部会報告書
Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/
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