<プレスリリース>

G7気候・環境大臣会合の閉幕を受けて

脱石炭へ重要な一歩。日本は6月のサミットで2030年石炭火力全廃に合意を

2021年5月22日

特定非営利活動法人気候ネットワーク

代表 浅岡美恵

5月20-21日に開催されたG7気候・環境大臣会合は、コミュニケを採択して閉幕した。同会合は、COP26(気候変動枠組条約第26回締約国会議)の議長国を兼ねるイギリスによってオンラインで開催され、気候変動問題は最重要議題の一つと位置付けられた。

合意されたコミュニケでは、気温上昇を1.5℃に抑制するとのパリ協定の目標に向け、G7諸国が野心的かつ加速度的に努力をすることが確認された。今年4月の日米気候パートナーシップ合意に続き、目指すところが2℃未満ではなく1.5℃であることが明確にされたことは重要である。

本会合で最も大きな焦点となったテーマは石炭火力発電の扱いであった。1.5℃の気温上昇抑制には石炭火力からの脱却を最優先で進めなければならないことは明白であり、今週、国際エネルギー機関(IEA)が発表した2050年ネットゼロのレポートでは、先進国は電力セクターを2035年に100%クリーンにする必要があることが示されたばかりである。

しかし日本は本会合で、国内事情を繰り返し述べ、石炭火力の海外支援を終了することや、国内石炭火力を全廃することに強く反対し、G7諸国の中で孤立を深めた。交渉の進展を妨げてまで石炭火力を守ろうとする姿勢は、日本が2050年ネットゼロに向けてエネルギー転換を加速させる覚悟を持ち合わせていないことを改めて露呈するものであった。しかし結果として、脱炭素へ加速する潮流に抗うことはできず、コミュニケではG7として一定踏み込んだ合意が図られた。

コミュニケでは、石炭火力発電が気温上昇の最大の原因であることを認識し、2030年代の電力システムの脱炭素化に今コミットすること、2021年中に、CCUSなどの脱炭素化が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を全面的に終了することに合意した。脱石炭へ大きな一歩を踏み出したことは極めて重要である。

さらにコミュニケでは、ネットゼロ・経済、ネットゼロ・エネルギー、ネットゼロ・モビリティと、全てのセクターがネットゼロに向かうこととされ、他にも、省エネや公正な移行、HFCsの削減、気候資金の拡大など、1.5℃目標と整合して進められるべき重要な合意が含まれている。

今回の合意は、6月11-13日の首脳級のG7サミットの土台となる。サミットにおいて、ネットゼロの実現に向けたさらなる意欲的なG7合意の成立に日本政府が水を差すのではなく、今回の合意を踏まえ、4月に菅総理が発表した46~50%削減目標のさらなる引き上げを検討し、2030年までの国内の石炭火力発電の全廃や、石炭火力に止まらない化石燃料事業の海外支援の終了、2025年までの気候資金の拡大についてコミットできるよう方針を強化して臨むべきである。かかる気候変動目標・対策の強化にあたって、危険な原発に頼るべきでないことは言うまでもない。

参考ページ(環境省ウェブサイト)

G7気候・環境大臣会合コミュニケ(原文)

G7気候・環境大臣会合コミュニケ(暫定仮訳)

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【プレスリリース】G7気候・環境大臣会合の閉幕を受けて 脱石炭へ重要な一歩。日本は6月のサミットで2030年石炭火力全廃に合意を(2021/5/22)