プレスリリース
「GENESIS松島計画」への経済産業大臣意見
~老朽石炭火力の延命策はここで絶つべき~
2022年1月28日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
昨年12月24日、経済産業省は電源開発株式会社によるGENESIS松島計画(以下「本計画」)に対する経済産業大臣意見を公表した。今般示された経済産業大臣意見は昨年12月16日に示された環境大臣意見を踏襲し、今求められる気候変動対策や国際社会の動向と不整合で、わが国の不十分な削減目標とも整合せず、老朽化した石炭火力を延命する本計画を容認するもので極めて遺憾である。
本計画は、稼働から40年が経過し、早期のフェーズアウトが求められている老朽化した電源開発・松島火力発電所2号機(超臨界圧・50万kW)にガス化発電設備を付加することで、期限を定めることなく延命させようとするものであり、脱炭素・脱石炭の時代に逆行するものである。
経済産業大臣は、この意見書で電源開発が示した具体性を欠く「CCUS/カーボンリサイクルの導入」、「カーボンフリー燃料の導入」といった構想に対してその明確化を求めることもなく、鸚鵡返しのように要望として示している。環境大臣意見に対するプレスリリースにおいても指摘したように、そもそもCCSは、1970年代から多額の研究開発予算を費やしているにもかかわらず、現時点で苫小牧での実証実験がようやく終ったにすぎない、国内には適地が乏しく、コストも高く、実現可能性を欠く構想である。またカーボンフリー燃料の導入に関してもLCA(ライフサイクルアセスメント)ガイドラインに基づき、「燃料の製造、加工も含む本事業のライフサイクル全体の温室効果ガス排出量を算定すること」を求めてはいるが、その結果の公表は求めず、結果を受けた事業計画の見直しについても事業者の判断に委ねるものとなっている。環境アセスメントにおける主務官庁としての主体性を欠くと言わざるを得ない。
パリ協定及び1.5℃を目指すグラスゴー気候合意のもとで、日本は2030年の温室効果ガス削減目標の引き上げと石炭火力発電の早期削減が求められている。「CCUS/カーボンリサイクル」、「カーボンフリー燃料」は高コストで排出削減効果の乏しい商用化されていない技術で、これを支援することは2030年削減目標の実現に寄与しないだけでなく、再生可能エネルギーへの転換を遅らせることになる。政府は火力発電事業者に、「石炭火力の脱炭素化」による石炭火力の延命ではなく、早期廃止に向けた事業計画の策定を促すべきである。あわせて、風力や太陽光などすでに実用化され、温室効果ガス削減への寄与が確実視される技術を各地域の実情を考慮しながら再エネ主力電源化を推進するよう転換し、公正な移行ひいては日本の脱炭素化の実現に踏み出すべきである。
参考
【プレスリリース】旧式石炭火力の延命策「GENESIS松島計画」配慮書について ~環境大臣は「是認できない」と意見表明をするべき~(2021/12/9)
【プレスリリース】 「GENESIS松島計画」への環境大臣意見は旧式石炭火力の延命の容認だ~気候危機に向き合うなら「是認できない」となるべきだ~(2021/12/16)
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【プレスリリース】 「GENESIS松島計画」への経済産業大臣意見~老朽石炭火力の延命策はここで絶つべき~(2022/1/28)
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