【プレスリリース】

COP25、市場メカなどの合意を持ち越して閉幕

日本は自らの削減目標の引き上げと脱石炭の宿題へとりかかるべき

2019年12月15日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 12月15日(マドリード時間)、国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)は、パリ協定の実施指針の積み残し課題を中心に交渉が行われたが、2日延長して続けられた交渉の末、市場メカニズムについては各国の立場の溝を埋めることができず、COP26グラスゴー会議に持ち越す形で閉幕する形となった。損失と被害についてもガバナンスのあり方等は持ち越された。パリ協定の実施指針を完全に仕上げることが目指されていた本会議において、その目標を達成できずに終わったことは極めて残念である。ただ一方で、交渉終盤で探られる譲歩案によって、パリ協定の実質的な抜け穴となる恐れもあったことから、先送りをし、よりよい合意を目指すほうが賢明だったという面も否定はできない。
 また今回のCOP25では、パリ協定2条の1.5?2℃未満及び排出実質ゼロという長期目標を達成するために、国別約束(NDC)における温室効果ガス排出削減目標の引き上げ(野心の引き上げ)をいかに各国に求めるかという論点が重要視されていた。この点についてもCOP25は各国に行動強化を改めて求めることには踏み込めなかった。
 しかし、今回のCOP25の結果は、私たちの気候危機への行動を弱めてよい理由にはならない。各国が対策を先延ばしする理由も何もない。私たちは国内に戻り、パリ協定の目標達成に向け、すぐさま行動強化へと着手する必要がある。
 この1年余、グレタ・トゥーンベリさんから始まった気候の非常事態と行動強化への訴えは日本を含む世界中の750万人に広がった。COP会議場には「気候非常事態」との言葉が溢れ、これまでにない緊張感をもたらした。現在の各国の不十分な排出削減目標のままでは気温上昇は約3℃にもなる。パリ協定の1.5℃の気温上昇に抑えるために残された時間はあと約10年しかない。我々の選択は行動強化のほかにない。各国は2020年中に、パリ協定1.5目標に沿うようにNDCを引き上げ、再提出する国内プロセスに重点的に取り組まなければならない。
 日本政府はこのCOP25で、NDCの目標引き上げについて何も意思表明をしなかった。さらに、CO2排出の大きい石炭火力発電を国内外で推進する日本への「石炭中毒」との批判を「真摯に受け止める」と言いながら、いつまでにどうやって脱石炭を進めるのかを示さなかった。COP25で最も求められていた行動に欠く日本には、不名誉な「化石賞」が2度にわたって贈られ、会議場前で日本への抗議アクションが繰り返し行われた。
 小泉大臣の言葉どおり、日本が「脱炭素化に完全にコミットしている」ことを証明するには、パリ協定1.5℃目標のために2050年排出実質ゼロを確認し、2030年目標を引き上げると同時に、石炭火力については、海外輸出及び国内の建設計画いずれもただちに中止し、既存の設備の「2030年石炭火力発電ゼロ」へのロードマップを構築することが不可欠だ。また、脱石炭と脱原発を前提に再生可能エネルギー100%への普及加速、炭素の価格付けなどの具体策を強化し、NDCに盛り込まなければならない。
 小泉大臣は、会場の各所で示された世界の危機感と脱炭素経済への潮流を政府全体で共有し、日本政府として、削減目標引き上げと脱石炭という2つの宿題に着手すべきである。

プレスリリース(全文)

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