長期エネルギー需給見通し案に向けた政府のパブリックコメントがスタートしました。今回の政府案は、5月1日の投稿でご紹介しているとおり、2030年の電源構成について、その割合を「原子力20~22%、再生可能エネルギー電力22~24%、石炭火力26%、天然ガス火力27%、石油火力3%」とされました。
原発40年廃炉を前提とすれば、2030年に既存の原発をすべて再稼働したとしても20%には届かず、非現実的な想定です。再生可能エネルギーの想定ももっと大幅に増やすことが前提と試算されているシナリオがあるにも関わらず、22~24%程度しか見積もられていません。
また、火力発電は、石油と天然ガスを現状から大幅に減らす一方で、CO2排出量の最も多い石炭火力発電を温存させる想定で、世界が脱石炭に向かう潮流からは大きく逸脱するものです。
脱原発と温暖化防止を両立し、持続可能な社会を実現するため、周りの団体・知人・友人にも呼びかけて、ぜひ1人でも多く私たちの意見を政府に提出しましょう!
気候ネットワークでは、以下の5つの点について意見を提出しました。なお、エネルギーミックスのパブコメとは別に「日本の約束草案(2030年の温室効果ガス削減目標案)」のパブリックコメントは別に行なわれているので、そちらにも意見を提出していきましょう!
1.エネルギー需給構造や電力消費量の見通しについて
2030年の見通しとして、経済成長にともなうエネルギー需要を過大に見積もり、省エネは過小に見積もっていることが問題です。人口減少社会に突入する現実をふまえればエネルギー需要・供給量や電力消費量は減少するはずであり、さらに省エネも大きく深掘りすべきです。
2.再生可能エネルギーの導入割合について
再生可能エネルギーは約9%の大規模水力を含めても22~24%と非常に低く見積もっており、風力、太陽光、地熱、バイオマス、小水力などの本来の自然エネルギーは13~15%程度にしかなりません。少なくとも、本来の自然エネルギーを30%以上に増やす目標を掲げて、それを前提に電力システムを改革していくべきです。
3.石炭火力への依存が大きすぎる点について
火力発電については、石油と天然ガスを現状から大幅に減らす一方で、CO2排出量の最も多い石炭火力発電を26%と大きく見積もるなど気候変動対策上極めて問題です。将来的には火力発電の依存度を大きく下げていくことを前提に、2030年には石炭を大幅に削減し、LNGをその代替として過渡的なエネルギーとして位置づけるべきです。
4.原子力発電を過剰に見込みすぎている点について
原子力発電20~22%というのは、廃炉が決まった原発以外の全ての原発を再稼働させたとしても届かず、そのうち何基かは60年稼動させ、さらに未だ建設中の原発も含めなければ届かない数字で、あまりに非現実的であり、見直すべきです。
5.市民参加プロセスについて
現在、エネルギーミックスの議論は、原発依存からの脱却を求めて声をあげてきた国民の意思が全く反映されていません。そもそも、原発依存度を減らして再エネを拡大するという、これまで政権が説明してきた方針からもかけ離れた内容です。
2030年の日本社会・経済と国民生活の将来像にかかる問題であり、国民的議論のプロセスを十分に踏まえて、決定していくべきです。
詳細は、「長期エネルギー需給見通し策定に向けた意見」をご覧ください。
パブリックコメントの募集ページ
● 長期エネルギー需給見通し策定に向けた御意見の募集について
気候ネットワークが提出したパブリックコメント
参考ウェブページ
- 約束草案検討ワーキンググループ
- 長期エネルギー需給見通し小委員会
- 気候ネットワークのプレスリリースなど