JERAの「CO2の出ない火」などのグリーンウォッシュ広告について
JAROへの申立とその回答を国連に情報提供

特定非営利活動法人気候ネットワーク
理事長 浅岡 美恵

2024年7月22日は、1940年に欧州連合の気象情報機関が観測を開始以来、最も暑い日となり、翌23日も同等の暑さになったと報じられています。日本でも7月の平均気温が過去最高を更新し、命にかかわる猛暑が続いています。7月25日、異常な暑さに関する記者会見においてグテーレス国連事務総長は、「異常な暑さは新たなアブノーマル(非常態)」で「足下に火がついています。」と述べ、気候変動対策の強化を各国に要請しました。対策の一つとして「速やかに、そして公正に、化石燃料の使用を段階的に廃止」しなければならないことが具体的に挙げられています。

日本では、株式会社JERAが石炭火力へのアンモニア混焼を、「CO₂の出ない火」「ゼロエミッション火力」などと広告しており、日本政府も火力発電における水素・アンモニア混焼を地球温暖化対策と位置付け、第7次エネルギー基本計画でも推進しようとしています。 公益社団法人日本広告審査機構(JARO)のホームページには、「JAROは消費者に迷惑や被害を及ぼすウソや大げさ、誤解をまねく広告をなくし、消費者から信頼される良い広告を育てたいという思い」で設立された自主規制機関であり、「『ウソ』や『大げさ』、『まぎらわしい』などの広告・表示を見かけたらJAROにご連絡ください。」とあるので、気候ネットワークと環境法律家連盟(JELF)は昨年、共同でJAROに対し、消費者を誤認させるJERAおよび主要電力会社2社(関西電力と電源開発)の広告の中止勧告を求めてきました。しかしながら、JAROは今年5月28日付の書面にて、「当機構が可能な広告・表示に関する判断の範囲を超えているため、審査は行わないことといたしました」と回答したのに加え、「当機構としての最終回答」とも記載していました。

その直後の6月5日、グテーレス国連事務総長は、化石燃料の広告の禁止および、広告・PR会社にグリーンウォッシュ広告へのほう助をやめるよう、世界に訴えました。気候危機への緊急対応が求められるなか、消費者を誤認させる情報によって化石燃料を使い続けることを正当化しようとすることや、これを助長する広告は許されないことを明らかにされたものといえます。残念ながら、JAROの今回の回答は、時代認識を誤り、あるいは、広告監視および規制機関の役割を自ら放棄したものと言わざるを得ません。

そこで、本日、国連事務総長室に対し、添付のレターを提出し、国際的な監視がなされるよう情報提供をいたしましたことを、報告いたします。

また、8月6日には、中学生を含む日本各地の若者16人が、JERAなど主要火力発電事業者10社に対し、IPCCが求める1.5℃目標と整合するCO2排出削減の実行を求める訴訟を名古屋地方裁判所に提起しました(https://youth4cj.jp/)。彼らにとってだけでなく、その次の世代のために、日本のCO2排出量の3割以上を占める主要火力発電事業者に、「ゼロエミッション火力」といったまやかしの取組みによって火力発電を延命させるのではなく、1.5℃目標の実現に求められている脱火力・再生可能エネルギーへの転換を求めたものです。

気候ネットワークは、未来を見据えて立ち上がった若者たちを支援するとともに、引き続きグリーンウォッシュ広告への監視を続けて参ります。

国連事務総長へのレター(PDF

                                  

関連プレスリリース

プレスリリース】JAROのグリーンウォッシュ広告に関する審査の進捗の問合せを送付(2024年5月2日)

プレスリリース】関電と電源開発の「CO2を排出しない燃料」広告は気候グリーンウォッシュ~JAROに不当広告の中止勧告を申立~(2023年12月25日)

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