関電と電源開発の「CO2を排出しない燃料」広告は気候グリーンウォッシュ
~JAROに不当広告の中止勧告を申立~

2023年12月25日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

ドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、「化石燃料からの脱却(transitioning away from fossil fuels)」を盛り込んだ成果文書を採択して12月13日に閉幕しました。この文書には、気温上昇を1.5℃未満に抑え、世界の温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロにするためには、19年比で2030年までに43%減、2035年までに60%減と、大幅に減らす必要があると明記され、世界の再生可能エネルギーの容量を3倍とすることも盛り込まれています。これらの目標を達成するための日本の応分の責任を果たしていくためには、日本も、2030年までに、エネルギー起源CO2排出の約40%を占める電力セクターで大幅に排出を削減し、再生可能エネルギーを大幅に導入拡大しなければなりません。しかしながら、日々の広告には、電気の消費者として、気候危機を回避でき、持続可能で適正な価格で利用できる電気を選択するために必要な情報ではなく、逆に、消費者をミスリードする情報や広告があふれています。

広告における訴求・主張は、事実であり、根拠が示されなければなりません。日本有数の電力事業者である関西電力株式会社(以下、関電)および電源開発株式会社(以下、電源開発)は、アンモニア・水素燃料や、原子力発電を、「CO₂を排出しない燃料による発電」あるいは「CO₂フリーの水素発電」などとする広告を発出していますが、その訴求は事実に基づかず、根拠も示されていません。CO2を排出しない燃料やCO2フリーの水素による発電ではなく、1.5℃目標の実現に貢献するものでもありません。「明るい未来」につながるものでもないにもかかわらず、そのように消費者をミスリードするもので、排除されるべきものです。

気候ネットワークは環境法律家連盟と共同で、「誤解をまねく広告をなくし消費者から信頼される良い広告を育てる」ことを目指す公益社団法人 日本広告審査機構(JARO)に、10月5日にJERAの広告についての申立を行ったところですが、本日、関西電力と電源開発の上記広告についても、中止を求める申立を提出いたしました。

また、本日、気候ネットワークは、JAROが公益広告審査機関として機能するために備えるべき審査手続きや対応体制、申出の案件や審査結果のホームページ上での開示などの提言を公表いたしました。

世界では、気候変動対策強化の緊急性とともに、企業の広告・表示、資金供与(グリーンボンド)に関するグリーンウォッシュへの関心が高まっており、広告・表示の監視が強まっています。JAROにおいては、消費者が適切な商品を選択し、消費行動によって気候危機の回避に貢献するために、先般のJERAの広告についての申立とあわせ、これらを審査し、早急に中止を求める措置をとり、その役割を果たすことを期待します。

参考

  • 関西電力株式会社による不当な広告の中止勧告の申立【全文】(PDF
  • 電源開発株式会社による不当な広告の中止勧告の申立【全文】(PDF
  • 公益社団法人 日本広告審査機構への提言(PDF

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