現在、人類史上例のない水準に二酸化炭素の濃度が上がり、経験したことのないスピードで平均気温が上昇する中、危険な気候を回避するためには、温室効果ガスの排出をこの数年で劇的に削減し、2050 年までにゼロにすることが求められている。現状のカーボンバジェットを考慮すれば、日本においては、2030 年には2010年比で60%削減の経路を経て2050 年までにゼロにすることが求められるが、現在の日本の削減目標である2030 年46%削減や、火力発電依存のエネルギー政策は全く1.5℃目標に整合していない。
 日本の気候変動エネルギー政策が、いまだに化石燃料依存から脱却できない理由は、旧態依然とした電力会社等が保護されているためである。とりわけ日本最大のエネルギー企業であり、CO2 最大排出事業者である株式会社JERA の動向は、日本の政策に大きな影響を及ぼしてきた。JERA は、2020 年10 月に「ゼロエミッション2050」を宣言し、日本の“ 脱炭素社会をリードする” 企業として台頭しているが、その後のエネルギー基本計画や様々な法改正、GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針に示された水素・アンモニアへの過剰な投資政策など、日本が推進する「脱炭素社会」に向けた様々な政策はJERA のために整備されてきたと言っても過言ではない。実際、現在のエネルギー政策はJERA の方針を後押しし、手厚い国家予算が充てられている。
本レポートは、JERA が「ゼロエミッション」をかかげながら、足元では大量のCO2 を排出し続けていること、そして大規模排出事業者であるJERA に対する政府の手厚い支援について明らかにするものである。

 

発行:気候ネットワーク(2024年7月)
A4判/28ページ

<本レポートの論点>

  1. JERA は東京電力と中部電力の火力発電部門を合併して設立された日本最大のエネルギー企業であり、国内
    最大のCO2 排出事業者である。
  2. JERA は、国内事業における「JERA ゼロエミッション2050」を公表しているが、2020 年以降も石炭火力
    やLNG 火力の新設を進め、既存の火力発電所を維持し続けようとしている。「ゼロエミッション」の内容は、
    その柱が石炭火力のアンモニア混焼であり、1.5℃目標には全く整合していない。
  3. JERA の方針は、日本のエネルギー政策に多大な影響を及ぼしており、実態的にJERA の事業を支える政府
    の政策的・財政的な手厚い支援措置が次々につくられてきた。
  4. JERA は「CO2 が出ない火をつくる。」というコピーで広告を展開している。この広告は、アンモニア燃料
    がCO2 を排出しないかのような誤解を与え、世界の気候変動対策にJERA が真摯に対応しているかのよう
    な印象を与え、グリーンウォッシュである。
  5. JERA は世界各地で資源事業から発電事業まで、幅広くエネルギー関連事業に関与している。LNG、再エネ、
    水素・アンモニアを今後の事業展開の柱と位置付け、特にLNG、水素・アンモニアの調達を積極的に拡大
    している。

レポート

JERAレポート ~日本最大の排出事業者は本当にゼロエミッションをめざしているのか~(PDF

お問い合わせ

本レポートについてのお問い合わせは以下よりお願いいたします。

特定非営利活動法人 気候ネットワーク

(京都事務所)〒604-8124 京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305号(→アクセス
(東京事務所)〒102-0093 東京都千代田区平河町2丁目12番2号藤森ビル6B(→アクセス
075-254-1011 075-254-1012 (ともに京都事務所) https://kikonet.org