【共同声明】国際協力銀行及びシティバンクによるメキシコ・ガス火力発電2事業の融資決定に抗議（2024年3月29日）

共同声明：
国際協力銀行及びシティバンクによるメキシコ・ガス火力発電2事業の融資決定に抗議

「環境・持続社会」研究センター（JACSES）
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
Oil Change International

3月28日、日本の公的金融機関である国際協力銀行（以下、JBIC）が、メキシコのサン・ルイス・ポトシ及びサラマンカでのガス焚複合火力発電事業2案件に対し、それぞれ9,300万米ドル、1億6,700万米ドルの融資を決定したと発表しました^（1-2）。民間金融機関からはシティバンク、エヌ・エイ東京支店（以下、シティバンク）が協調融資に参加しています。また3月29日、日本貿易保険（以下、NEXI）も民間金融機関の融資部分に対して、保険引受を決定したと発表しました^（3）。私たち環境NGOはJBIC、シティバンク、NEXIの支援決定に厳重に抗議するとともに、融資機関であるJBIC及びシティバンク、保険を付保するNEXI、そして発電プラント技術を提供する三菱重工業株式会社に対して2事業への関与を中止するよう要請します。

本案件は、事業実施者であるメキシコ電力庁（CFE）が、ガス焚複合火力発電所を2か所で建設する事業であり、JBICは2023年11月2日に融資検討中の案件リストに本2案件を掲載し、NEXIも2023年12月6日より2案件の付保を検討していました。

2022年6月開催のG7エルマウ・サミットにおいて、日本政府は「1.5度目標及びパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末までの終了」にコミットしており^（4）、例外条項を今回の2案件に適用するにあたっては、支援対象国であるメキシコのエネルギー政策が1.5度目標と整合している必要があります。

2案件の融資決定について発表されたJBICのプレスリリースには、「メキシコ政府は、パリ協定に基づく気候変動対策計画である「Nationally Determined Contributions（NDC）」において2030年までの温室効果ガス（GHG）排出量35％削減（BaU比）を目標に掲げており、その具体的取組方針として、環境負荷の高い火力発電から高効率ガス火力発電への置き換え等を掲げています」と書かれています。しかし、Climate Analytics^（5）及びClimate Action Tracker^（6）は、メキシコ政府のNDC（国が決定する貢献）は1.5度目標と整合的でないと述べています。

また、私たちNGOは融資決定以前にJBICと会合を持ちましたが、JBICより、メキシコ政府のNDCが1.5度目標に整合的であると判断した根拠についての明確な説明は得られませんでした。JBICは3月26日にオーストラリアのスカボロガス田開発事業への融資も決定しており^（7）、すでにこれまでの化石燃料利用により地球沸騰化の時代に我々がいるのだという認識の欠如があると思われ、大変遺憾です。また、付保を決定したNEXIには2023年12月7日にG7エルマウ宣言との整合性等を問う質問を送付しましたが、いまだに何の回答も得られていません。こうした対応はアカウンタビリティの確保に努めると規定した「貿易保険における環境社会配慮のためのガイドライン」に明らかに違反しています。

さらに、Mexico Business Newsの記事^（8）では、メキシコにおける太陽光・風力発電の発電コストはガス火力発電よりも低く、コスト優位性が高いと指摘されています。メキシコにおいてコスト優位性が高い再生可能エネルギーによる発電ではなく、より優位性の低いガス火力発電である本2案件への支援は、再生可能エネルギーの最大限活用を示した日本政府のインフラシステム海外展開戦略2025にも整合しません。

以上から、JBIC、シティバンク、NEXI、三菱重工業株式会社に対し、G7合意違反に相当する可能性が高い2事業への関与を中止するよう要請します。