気候ネットワークは、東北電力による「東新潟火力発電所1・2号機リプレース計画 環境影響評価準備書」についての意見聴取に対し、以下の内容の意見書(10件)を提出しました。

この計画の概要

  • 老朽化した1・2号機を廃止し、同程度の出力を持つ最新鋭のガスタービン・コンバインドサイクル発電設備の6・7号機へリプレースする
  • 運転開始予定は、6号機が2031年3月、7号機が2036年3月
  • 本リプレースによって、熱効率の向上により発電電⼒量あたりの燃料使⽤量及び⼆酸化炭素排出量を従来型に⽐べて 3 割程度削減する
  • リプレース後の発電設備においては、将来的にカーボンニュートラル燃料(⽔素、アンモニア)を導⼊することも検討する

計画についての詳しい内容や、意見提出の方法は、以下の東北電力Webサイトをご覧ください。意見の提出方法は郵送で、提出期限は2026年7月14日(火)まで(当日消印有効)です。

東北電力 環境影響評価準備書の公表・意見聴取・説明会の公告について

【意見1】効率改善(原単位低減)および最新鋭のガスタービン・コンバインドサイクルの採用をもって「環境影響が低減されている」とする自己評価の不妥当性について

対象の記述: [準備書 p.3, p.44, p.1135]
二酸化炭素排出原単位を現状(1号機0.556kg-CO2/kWh 及び2号機0.524kg-CO2/kWh)から0.333kg-CO2/kWhへと3割程度低減すること、および最新鋭のガスタービン・コンバインドサイクルを採用することをもって、「温室効果ガス等への環境影響は実行可能な範囲内で低減が図られている」と評価している点。

意見の理由・詳細:
気候変動対策において極めて重要なのは、個別設備の効率改善(原単位の低減)ではなく、その事業が将来にわたり大気中に排出する累積排出量が、1.5℃目標達成のための残余カーボンバジェット(炭素予算)にどのような影響を与えるかです。

貴社は既設設備との比較による「3割削減」のみを強調していますが、リプレース後も本計画が年間数百万トン、想定耐用期間全体で数千万トンに及ぶ膨大なCO2を排出し続ける巨大な排出源であることに変わりはありません。

さらに、貴社が示した将来の排出原単位「0.333kg-CO2/kWh」は、国際エネルギー機関(IEA)が1.5℃目標達成のために示したシナリオ『Net Zero by 2050』において、2030年時点で世界の電力部門に求めている平均排出係数「0.138kg-CO2/kWh」の2.4倍以上に達しています。したがって、自社基準の効率向上やBATの採用を盾に「環境影響が低減されている」と結論づけることは不適切であり、1.5℃目標や世界の排出削減経路と致命的に不整合であると言わざるを得ません。

【意見2】6号機の水素混焼・専焼ロードマップの遅さと不確実性、および7号機におけるタイムラインの欠如について

対象の記述: [準備書 p.3, p.44]
6号機に関して、2030年度の運転開始から「2040年代に水素20〜50%混焼を開始し、2040年代後半に水素専焼を開始する」という長期脱炭素電源オークション提出のロードマップを示している点。また、2035年度運転開始予定の7号機については具体的な燃料転換時期を示さず「詳細設計時点の状況に応じた最良の技術を選択していく」としている点。

意見の理由・詳細:
貴社が示した6号機のロードマップは、2030年度の運転開始から2040年代までの十数年間、排出削減対策の講じられていない「化石燃料100%全焼火力」として、膨大なCO2を垂れ流し続ける計画であることを自白しているに等しいものです。2030年代という気候危機対策における危急の10年間に大量の排出を固定化(カーボンロックイン)させる計画は到底容認できません。また、2040年代以降の水素転換計画についても、カーボンニュートラル燃料のサプライチェーンの構築の調・検討を進めるとの記述があるのみで、具体的な調達ルート、必要な設備対策、数百万トン規模の水素を安全に輸送・保管するための保安対策、それに伴う経済的コストの定量的裏付けが一切開示されておらず、現時点の確実な大量排出を正当化するための「グリーンウォッシュ」と言わざるを得ません。

さらに深刻なのは7号機です。日本も合意しているG7合意では「2035年までの電力部門の完全又は大宗の脱炭素化」が求められているにもかかわらず、本計画は国際目標の期限である2035年度に、具体的な脱炭素へのタイムラインを持たない新たなガス全焼火力を稼働させる計画となっています。「詳細設計時点の状況に応じた選択」という極めて曖昧な表現で燃料転換の義務を先送りにすることは、環境影響評価における説明責任の放棄であり、国際公約に対する明白な逆行です。

【意見3】「CCSバリューチェーンの検討」の抽象性と実効性の低さについて

対象の記述: [準備書 p.44, p.1135]
火力の脱炭素化のアプローチとして、東新潟火力のガスコンバインドサイクル発電設備をモデルプラントとした「CO2分離・回収の検討を進めている」「CCSの設備の必要スペースや課題抽出等の検討を進めている」としている点。

意見の理由・詳細:
貴社はCCS(CO2回収・貯留)を脱炭素化の主要手段の一つとして掲げていますが、その実効性には極めて大きな疑問があります。現在の技術において、ガス火力発電所から排出されるCO2の全量を回収することは不可能であり、大規模な回収・貯留技術はいまだ開発・実証途上です。

準備書には、東新潟火力においていつまでにCO2の分離回収設備を商用実装するのかというタイムライン、回収したCO2をどこへ輸送し、どこに永続的に貯留するのかという「貯留先の確保見込み」が一切示されていません。

実現可能性や経済合理性が何一つ担保されていない「調査・検討」段階のCCSを環境保全措置のように並べることは、化石燃料依存の延命策をカモフラージュするものであり、環境影響評価の結論(環境影響は実行可能な範囲内で低減が図られている)の根拠とすることは到底認められません。

【意見4】「オークション落札」や「省エネ法ベンチマークの遵守」等の国内制度への適合は事業正当化の理由にならない

対象の記述: [準備書 p.3, p.1135]
長期脱炭素電源オークションでの落札による開発計画への計上、および「省エネ法に基づくベンチマーク指標の確実な遵守」や「電気事業低炭素社会協議会」への参加をもって、地球温暖化対策としての妥当性としている点。

意見の理由・詳細:
貴社は、国の制度である長期脱炭素電源オークションでの落札や、改正省エネ法のベンチマーク遵守を強調して自社の計画を正当化しています。しかし、これらの国内制度は、製造・輸送段階(サプライチェーン)で大量のCO2を排出する化石由来の「グレー水素・グレーアンモニア」の混焼であっても非化石エネルギーとして評価・容認するなど、国際的な科学的要請(1.5℃目標)と著しく乖離した独自の不整合性を抱えています。

したがって、制度設計そのものに問題がある国内の枠組みを「遵守する」と表明することは、個別の環境影響評価手続きにおいて、本事業そのものが地球規模の気候変動に与える累積的な環境負荷を厳密に評価・回避すべき事業者としての責任を免責するものでは決してありません。

本計画が、20年間にわたり国民負担(電気料金への上乗せ)によって化石燃料インフラを延命させるオークション制度に依存していることは、社会全体の経済的・環境的便益を損なうものです。配慮書段階における経済産業大臣意見が「あらゆる選択肢(稼働抑制や休廃止)を勘案して検討すること」を求めた通り、国内制度への適合を隠れ蓑にせず、本計画を中止(ゼロオプション)して再エネや蓄電池への投資に切り替える代替案を真摯に検討すべきです。

【意見5】方法書で提出した意見に対する事業者の見解(No.2)について[準備書 6-3 (285)]

1.効率改善や「リプレース」の強調は、絶対排出量の多さと1.5℃目標との不整合を免責しない
貴社は、既設の従来型汽力発電設備(1・2号機)から最新鋭のガスコンバインドサイクル発電設備(6・7号機)へリプレースすることで、二酸化炭素排出原単位を現状の0.556〜0.524kg-CO2/kWhから0.333kg-CO2/kWhへと3割程度低減し、「火力の脱炭素化」に貢献するとの見解を示しています。

しかし、気候変動対策において極めて重要なのは、この事業が将来にわたりどれだけの絶対排出量および累積排出量をもたらすかです。事業者は既設設備との比較による効率改善(原単位の低減)のみを強調していますが、リプレース後も本計画が長期にわたり膨大なCO2を排出し続ける大規模排出源であることに変わりはありません。準備書には、6・7号機の想定運転年数、2030年代から2050年ネットゼロに至るまでの長期的な絶対排出量の推移や累積排出量の定量的評価が欠落しています。

また、貴社が示した将来の排出原単位「0.333kg-CO2/kWh」 は、国際エネルギー機関(IEA)が1.5℃目標達成のために示したシナリオ「Net Zero by 2050」において、2030年時点で電力部門に求めている世界平均の排出係数「0.138kg-CO2/kWh」の約2.5倍に達しています。したがって、「既設より高効率」という説明だけで本計画の気候変動対策上の妥当性を説明することは到底できず、1.5℃目標と整合しないことは明白です。事業者は、単年度の効率改善アピールに終始せず、長期的な排出経路と累積的な気候変動への影響を具体的に再評価すべきです。

2.「調整力」を口実とした新設・リプレースは、長期にわたる化石燃料依存の固定化(ロックイン)を招く
貴社は、再生可能エネルギーは天候により発電量が安定しないため、安定供給や再エネ導入に必要な調整力として、一定程度の火力電源の確保が必要であると主張しています。

しかし、「再エネは不安定だから大規模火力が不可欠」とする事業者の認識は、国際的なエネルギー転換の潮流から著しく遅れています。現在、世界の先進的な電力システムにおいては、供給力や調整力の確保は大規模火力から、風力・太陽光を主とする再エネの大幅な拡大と、蓄電池、デマンドレスポンス(需要側調整)、広域系統連携、送配電網の強化といった「柔軟性(フレキシビリティ)」の組み合わせへとシフトしています。

仮に過渡期において一定の調整力が必要であるとしても、それは「既存」のガス火力発電設備の活用や稼働抑制の枠内で十分に電力供給が可能であり、2030年代以降(6号機:2031年、7号機:2036年予定)に新たに運転を開始するような化石燃料インフラを建設する理由にはなりません。今後数十年にわたって大量のCO2排出を固定化(カーボンロックイン)させる本計画は、地域の脱炭素化を阻害し、将来的に座礁資産化するリスクを抱える不合理な投資です。

3.「長期脱炭素電源オークション」での落札は、計画の温暖化対策上の妥当性を担保しない
 貴社は、長期脱炭素電源オークション制度において、将来的に脱炭素燃料に転換するLNG全焼火力が募集対象とされており、本計画がこれに適合していることをもって安定供給への貢献を正当化しています。
 しかし、同オークション制度で落札されたという事実は、国の制度上の枠組みに合致したという経営上の結果を示しているに過ぎず、本計画が国際的な科学的知見(1.5℃目標や残余カーボンバジェット)と整合していることを保証するものでは決してありません。
むしろ、本制度を活用して20年間にわたり確実な固定費収入(容量収入)を得ることで、事業者にとっての座礁資産化リスクを社会(国民負担)に転嫁することに他なりません。その原資は最終的に小売電気事業者の賦課金、ひいては消費者の電気料金に上乗せされ、長期間にわたり化石燃料インフラを延命させるために社会全体の経済的負担を固定化することになります。再エネや蓄電池といった、より安価で持続可能な代替手段が存在する発電部門において、あえて国民負担のもとで化石燃料インフラの新設を支援するような計画は撤回されるべきです。

4.水素・アンモニア混焼等の将来計画は極めて抽象的であり、将来にわたる排出を正当化するグリーンウォッシュである
貴社は、将来的に水素やアンモニアを混焼・専焼可能な設備への改造を見据え、メーカーの技術開発や自社の実証結果を踏まえながら「調査・検討を進めていく」としています。

しかし、事業者の主張する将来の燃料転換計画には、具体的な導入時期、混焼率のステップ、それに伴う確実な削減量、膨大な燃料の調達ルートの確保や国内サプライチェーンの構築見通し、さらにはコストについて具体的な定量的説明が一切示されていません。このような現時点では排出削減が不確実な未来の技術期待を並べるだけで、将来(稼働開始後)に膨大なCO2を排出する化石燃料インフラの建設を正当化することは、典型的な「グリーンウォッシュ」と見なさざるを得ません。

さらに、発電部門における水素・アンモニアの無差別な利用は、国際的にもエネルギー転換を遅らせるものとして批判されています。現在調達可能な水素・アンモニアのほぼ全ては、製造段階で大量のCO2を排出する化石燃料由来の「グレー水素・アンモニア」です。また、原料である天然ガスそのものについても、採掘・輸送(液化やパイプライン)の全工程における強力な温室効果ガスであるメタンの漏洩を考慮したライフサイクル全体(上流から下流まで)の評価を行わなければ、環境負荷を正確に把握したとは言えません。事業者は、燃料の製造・輸送・保管段階におけるライフサイクル全体の温室効果ガス排出量(サプライチェーン全体の排出量)を厳密に算定・開示し、その実効性を具体的に示す義務があります。

【意見6】方法書で提出した意見に対する事業者の見解(No.3)について[準備書 6-4 (286)]

1.「効率向上による原単位低減」の強調は、絶対排出量・累積排出量(残余カーボンバジェット)への影響評価の欠如を免責しない

貴社は、経年化した1・2号機を最新鋭ガスコンバインドサイクル発電設備にリプレースすることで「発電効率向上による二酸化炭素排出量の削減」が可能となり、「火力の脱炭素化」に貢献すると主張しています。

しかし、気候変動対策において極めて重要なのは、個別設備の単年度の効率改善(原単位の低減)ではなく、その事業が将来にわたりどれだけの絶対排出量および累積排出量をもたらすかです。方法書段階で指摘した通り、IPCC第6次評価報告書が示す「地球温暖化を1.5℃以内に抑えるための残余カーボンバジェット(50%の確率で5000億トン)」という科学的限界を考慮すれば、追加的なCO2排出は1トン増えるごとに気候変動をさらに確実に進行させます。

本計画が効率改善を謳おうとも、稼働後に長期にわたって膨大な絶対量のCO2を排出し続ける大規模排出源であることに変わりはありません。準備書において、本設備の想定運転年数全体における累積排出量の定量的評価や、それが1.5℃未満の残余カーボンバジェットに与える影響の検証が完全に欠落していることは極めて不適切です。事業者は単年度の効率向上アピールを自己正当化の根拠とせず、長期的な累積気候影響を厳密に評価し直すべきです。

2.「調整力・慣性力の確保」を口実とした化石燃料インフラの固定化(カーボンロックイン)は不合理である
貴社は地域の電力供給事業者として、再エネ導入拡大に伴う周波数変動などへの「調整力」や系統維持に必要な「慣性力」として、脱炭素社会においても一定程度火力電源が必要であると主張しています。

過渡期や再エネ拡大期において需給調整機能が必要であるとしても、それは「既存」のガス火力発電設備の枠内における稼働抑制や運用の見直しによって機能分担すべきであり、2030年代以降に新たに稼働し、今後数十年にわたって大量のCO2排出を固定化(カーボンロックイン)させるような大規模化石燃料インフラをリプレース・新設する理由にはなりません。

国際的には、供給力や調整力の確保は大規模火力への依存から、風力・太陽光などの再エネの劇的な拡大と、蓄電池、デマンドレスポンス(需要側調整)、広域系統連携といった「柔軟性(フレキシビリティ)」の組み合わせへと急速にシフトしています。調整力を口実に新たなガス火力建設を既定路線とすることは、地域の真の脱炭素化と再エネ最優先導入の障壁となるため容認できません。

3.水素・アンモニア転換という抽象的な将来計画による、現時点の確実な排出の正当化は「グリーンウォッシュ」である
貴社は、将来的にカーボンニュートラル燃料(水素もしくはアンモニア)を混焼・専焼可能な設備への改造を見据え、プラントメーカーの技術開発状況や自社の実証結果を踏まえながら「調査・検討を進めていく」としています。

しかし、貴社が主張する将来の燃料転換計画には、具体的な混焼・専焼の開始時期、段階的な混焼率のロードマップ、それに伴う確実な削減量、膨大な量のクリーン燃料を調達するルートの確保や国内サプライチェーンの構築見通し、さらにはその経済的コストについて、具体的な定量的説明が一切示されていません。

このように実現可能性や経済性が極めて不確実な未来の技術期待を並べるだけで、現時点で膨大なCO2を排出し始める化石燃料インフラの建設を正当化することは、典型的な「グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)」と言わざるを得ません。さらに、発電部門における水素・アンモニアの利用は、製造・輸送・保管段階(サプライチェーン全体)で大量の温室効果ガスを排出する化石燃料由来の「グレー燃料」への依存や、天然ガスの採掘段階における強力な温室効果ガスであるメタンの漏洩リスクを考慮したライフサイクル評価を行わなければ、真の脱炭素化には絶対につながらないことが国際的にも厳しく指摘されています。

4.「グループ全体での削減加速」は、本計画の1.5℃目標不整合を免責しない
貴社は、本計画のみならず、事業者グループ全体で再エネや原子力の最大限活用、電化の実現などによりCO2排出削減を加速化させるとしています。

しかし、グループ全体の他の取り組みを並べることで、本東新潟火力発電所1・2号機リプレース計画そのものがもたらす巨大な環境負荷とCO2排出影響を相殺することは不可能です。配慮書段階における経済産業大臣意見では、「CO2排出削減の取組の道筋が1.5℃目標と整合する形で描けない場合には、稼働抑制や休廃止などを計画的に実施することも含め、あらゆる選択肢を勘案して検討すること」が明確に求められています。

貴社の回答通り、将来の水素・アンモニア転換が不確実な「調査・検討」段階にとどまり、現時点で1.5℃目標と整合する具体的な脱炭素への道筋を描けていない以上、貴社は「リプレースありき」の前提を撤回すべきです。リプレースを行わずに1・2号機を早期に廃止し、より確実かつ大幅な排出削減が可能となる太陽光発電・風力発電・蓄電池への転換(ゼロオプション)を含めた「あらゆる選択肢」を真摯に比較検討し、準備書を抜本的に改定することを強く求めます。

【意見7】方法書で提出した意見に対する事業者の見解(No.4)について[準備書 6-5 (287)]

1.「国の戦略を認識している」とするのみで、本事業における具体的な定量的評価・開示を回避している
貴社は、国の「水素基本戦略」においてサプライチェーン全体を考慮する基準や必要性が言及されていることを「認識している」とし、「今後検討を進めていきたい」と述べるにとどまっています。

国の戦略や基準を「認識している」と表明することは、環境影響評価において事業者が果たすべき説明責任を果たしたことにはなりません。配慮書への経済産業大臣意見では、「水素やアンモニア等の導入に当たっては、発電所稼働時に二酸化炭素を排出しないことのみに着目せず、燃料の製造や輸送等も含む事業のサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を算定し、サプライチェーン全体にわたる温室効果ガスの排出量を適切に削減していくこと」と明確に個別事業での算定・対応を求めています。

にもかかわらず、今回の準備書において、将来的に本発電所で導入予定とされる水素・アンモニアについて、サプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量の具体的な試算値や、それによる確実な削減効果の定量的評価が一切開示されていません。大臣意見に対する実質的な応答を放棄していると言わざるを得ず、環境影響評価の手続きとして不適切です。

2.カーボンニュートラル燃料に関する現実性の欠如とグリーンウォッシュの懸念
ライフサイクル全体での二酸化炭素排出量を考慮しつつ、カーボンニュートラル燃料を導入するための検討を進めるとしています。

しかし、現在世界で製造・流通している水素・アンモニアのほぼ全て(99%以上)は、製造段階で大量のCO2を排出する化石燃料由来の「グレー水素・アンモニア」です 。国際エネルギー機関(IEA)の『Global Hydrogen Review』等の報告書によれば、低炭素水素等の製造・供給能力は世界的に見ても極めて限定的であり、大規模火力発電所の需要を賄えるだけのサプライチェーンがいつ、どのように構築されるのか、その見通しは全く立っていません 。

調達ルートや時期、燃料の排出原単位(低炭素度合)の具体的根拠を示さないまま、水素・アンモニアを「カーボンニュートラル燃料」と呼称し、それを理由に現時点での天然ガス燃焼による確実かつ大量のCO2排出を正当化することは、典型的な「グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)」であり、容認できません。

3.国際機関(IRENA等)が指摘する発電部門での水素利用の非効率性と国民負担の増大
貴社は、「発電コストも勘案し」ながら検討を進め、温室効果ガスの適切な排出量削減に貢献したいと主張しています。

しかし、発電部門における水素・アンモニアの利用は、エネルギー効率および経済性の観点からも極めて不合理です。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は報告書において、「水素は製造、輸送、変換に多大なエネルギーが必要で、無差別的な使用はエネルギー全体の需要を増大させ、エネルギー転換を遅らせる」と強く警告しています。水素は鉄鋼や化学工業など、代替手段のない高温熱需要分野に限定して使用されるべき(脱炭素の定石)であり、発電部門のように太陽光や風力といった「直接的かつ効率的で、すでに火力より安価な代替手段(再生可能エネルギー)」が存在する分野で水素を燃やすことは、エネルギーの著しい浪費です。

また、事業者は「発電コストも勘案」とするものの、高価な輸入水素・アンモニアの利用やそのための設備改造は、将来的に発電コストを劇的に押し上げます。本計画は長期脱炭素電源オークションに落札されていますが、こうした不確実で非効率な技術の延命に多額の費用を投じることは、最終的に小売電気事業者の賦課金や電気料金の上乗せという形で「国民負担の増大」に直結します。

【意見8】方法書で提出した意見に対する事業者の見解(No.5)について[準備書 6-5 (287)] 

1.蓄電池等の「現時点の課題」のみを強調し、将来の技術進展や再エネ主電源化への投資を軽視している
貴社は、蓄電池等の柔軟性手段の存在を認識しつつも、「現時点においてはコストや貯蔵できる電力量の制約等の課題がある」ことを理由に、安定供給のためには多様な電源(大規模火力)で調整力を確保することが望ましいと主張しています。

しかし、本計画の6号機が稼働する2031年、7号機が稼働する2036年以降の電力システムを見据えれば、蓄電池のコスト低減や大容量化、送配電網の広域運用、ディマンドレスポンス(需要側調整)などの柔軟性手段は急速に深化・普及することが見込まれます。「現時点の課題」のみを切り取って大規模化石燃料インフラの必要性を合理化することは、将来の技術進展や国際的なエネルギー転換の潮流を見誤った判断と言わざるを得ません。

仮に再エネ拡大の過渡期において一定の調整力が必要であるとしても、それは「既存」のガス火力発電設備の稼働抑制や運用の見直しによって十分に対処可能であり、わざわざ2030年代以降に新たな化石燃料インフラをリプレース・新設して温室効果ガス排出を今後数十年にわたり固定化(カーボンロックイン)させる理由にはなりません 。むしろ、調整力を口実とした新たな火力への投資は、地域の真の再エネ最優先系統の構築を阻害する要因となります。

2.長期脱炭素電源オークションへの適合は、座礁資産化リスクと国民負担の「社会化」に過ぎない
貴社は、長期脱炭素電源オークション制度において「将来的に脱炭素燃料に転換するLNG全焼火力が募集対象とされている」ことを挙げ、老朽火力廃止に伴う短期の供給力・調整力不足を防ぐために本計画が国の期待に応えるものであると正当化しています。

しかし、同オークション制度で落札されたという経営上の結果は、本計画が国際的な科学的要請や1.5℃目標と整合していることを何ら保証するものではありません。

むしろ、この制度を利用して20年間にわたり確実な固定費収入(容量収入)を得ることは、事業者にとっては「座礁資産化リスクの社会化(国民への転嫁)」に他なりません。その原資は小売電気事業者の賦課金、ひいては国民の電気料金に長期間上乗せされるため、非効率で環境負荷の高い化石燃料インフラを延命させるために社会全体の経済的負担を固定化することになります。今後、世界情勢による化石燃料価格の大幅な変動や、カーボンプライシングの本格導入が確実視される中、このような不確実なガス火力発電に国民負担を投じることは経済的合理性を著しく欠いています。

3.不確実な水素・アンモニアの「調査・検討」を前提とした長期稼働計画は「グリーンウォッシュ」である
貴社は、ガス火力として運転開始後、将来的にカーボンニュートラル燃料(水素もしくはアンモニア)を混焼・専焼可能な設備への改造を見据え、「プラントメーカーの技術開発状況や自社の実証結果を踏まえながら調査・検討を進めていく」としています。

しかし、将来技術への期待を抽象的に示すだけでは、現時点で大規模なLNG火力設備を導入し、膨大なCO2を排出し始めることの妥当性を説明したことにはなりません。事業者の言う燃料転換計画には、具体的な混焼・専焼の開始時期、段階的な削減ロードマップ、クリーンな燃料を確保する現実的な調達ルートやコストの定量的裏付けが一切欠落しています。

このような「調査・検討」段階の不確実な未来の計画を前提に、現時点での確実な化石燃料依存を正当化することは典型的な「グリーンウォッシュ」です。再エネという確実で安価な代替手段が存在する発電部門において、実現性の低い水素・アンモニア利用に固執することは、化石燃料火力を不必要に延命させ、より迅速な再生可能エネルギーへの投資と移行を妨げる結果となります。

4.大臣意見が求めた「あらゆる選択肢(ゼロオプション)」との真摯な比較検討を依然として回避している
貴社は、「カーボンニュートラルチャレンジ2050」の下、「再生可能エネルギーと原子力発電の最大限活用」や「電化」などグループ全体の取り組みを進めることで、我が国のCO2排出削減に貢献するとしています。

しかし、事業者グループ全体の他の取り組みを並べ立てることは、本「東新潟火力発電所1・2号機リプレース計画」そのものがもたらす巨大な環境負荷や長期的リスクに対する免責事項にはなりません。

配慮書段階における経済産業大臣意見が求めたのは、事業そのもののCO2削減の道筋が1.5℃目標と整合しない場合、稼働抑制や休廃止を含めた「あらゆる選択肢」を検討することです。事業者は「リプレースありき」の前提から脱却せず、本計画を中止(ゼロオプション)して太陽光や風力などの再生可能エネルギー、および大型蓄電池インフラの拡大へ直接投資を転換する代替案との実質的・定量的な比較検討を一切示していません。

【意見9】方法書で提出した意見に対する事業者の見解(No.6)について[準備書 6-6 (288)]

1.G7合意(2035年電力部門脱炭素化)と本計画の運転開始時期(2031年・2036年)との致命的な時間軸の矛盾
貴社は、本計画を「最新鋭の設備へのリプレース」および「火力発電の脱炭素化を実現するための電源」と位置づけ、将来の水素・アンモニア混焼・専焼の「調査・検討」を前提に計画を正当化しています。

日本も合意しているG7広島サミット等の国際合意では、「2035年までの完全又は大宗の電力部門の脱炭素化」が明確に義務づけられています。しかし、本計画の運転開始予定は6号機が2031年3月、7号機にいたっては国際目標の期限を過ぎた2036年3月となっています。

運転開始の当初から「対策の講じられていない(unabated)化石燃料火力」として大量のCO2を排出し、さらに稼働後に「技術開発状況を踏まえて水素等の改造を調査・検討する」という事業者の極めて不確実で悠長な計画は、2035年までの電力脱炭素化という国際合意のタイムラインに全く整合しません。とりわけ2035年以降に稼働を始める7号機を、現時点で確実な脱炭素の裏付けがないまま新設することは国際的な公約に対する明白な不履行であり、容認できません。

2.IEA「Net Zero by 2050」シナリオが求めるガス発電削減カーブおよび排出係数との著しい逆行
貴社は、高効率ガスコンバインドサイクル発電設備の導入により、既設の1・2号機に比べて発電効率を向上させ、二酸化炭素排出量を削減する(あらましによれば0.333kg-CO2/kWhへ低減)としています。

国際エネルギー機関(IEA)の1.5℃シナリオ(Net Zero by 2050)では、天然ガスによる発電量は「2030年までに世界全体でピークを迎え、2040年までに90%削減する」ことが求められています。世界が化石燃料からの脱却とガス発電の急速なフェーズアウト(段階的廃止)に向かう2030年代において、新たな大規模LNG火力を建設し、今後数十年にわたり長期稼働させることは、世界の排出削減経路と完全に逆行する行為です。

また、貴社が誇る最新鋭の排出原単位「0.333kg-CO2/kWh」であっても、IEAシナリオが2030年時点で世界の電力部門に求めている平均排出係数「0.138kg-CO2/kWh」の2.4倍以上もの高濃度な排出を続けることに変わりありません。「従来型より3割マシ」という事業者内の相対的な評価は、気候科学や国際的な目標が求める絶対的な削減要請の前では何ら免責の根拠にはなりません。

3.不確実な水素・アンモニアの「調査・検討」は、現時点の確実な大量排出を免責しない
貴社は、将来的にカーボンニュートラル燃料(水素・アンモニア)の混焼・専焼が可能な設備への改造を見据え、メーカーの技術や実証結果を踏まえて「調査・検討を進めていく」と主張しています。

しかし、具体的な燃料調達の見通し、膨大なコストの裏付け、ライフサイクル全体の温室効果ガス(GHG)排出量の算定すら示されていない「調査・検討」段階の計画は、現時点における天然ガスの確実な大量排出を覆い隠すための「グリーンウォッシュ」と見なさざるを得ません。

また、日本の改正省エネ法等の国内ベンチマークや国のエネルギーミックスは水素・アンモニアを「非化石エネルギー」と位置づけていますが、これらは1.5℃目標という科学的要請から乖離した国内独自の制度設計に過ぎません。国際基準においては、製造・輸送段階(サプライチェーン全体)で大量のCO2を排出する「グレー燃料」の利用は脱炭素とは認められず、むしろ国際合意を形骸化させるものとして厳しく批判されています。不確実な技術期待を盾に、排出削減対策の講じられていない化石燃料インフラを固定化(カーボンロックイン)させる本計画は即刻撤回されるべきです。

4.「グループ全体での削減加速」を個別事業における環境影響評価の隠れ蓑にすることは許されない
貴社は、本リプレース計画のみならず、事業者グループ全体で再エネや原子力の最大限活用、電化の実現を進めることで我が国の二酸化炭素排出削減に貢献するとしています。

しかし、事業者グループ全体の他の取り組みを並べ立てることは、本東新潟火力発電所のリプレースがもたらす巨大な環境負荷や長期的リスクに対する直接的な回答にはなっていません。環境影響評価制度は、当該事業そのものが周辺環境や地球環境(温室効果ガス)に与える影響を厳密に評価し、回避・低減するためのものです。他の場所で再エネを拡大するからといって、本計画が国際合意を無視して排出する膨大なCO2が相殺されるわけではありません。

配慮書段階における経済産業大臣意見では、「CO2排出削減の取組の道筋が1.5℃目標と整合する形で描けない場合には、稼働抑制や休廃止なども含め、あらゆる選択肢を勘案して検討すること」が明確に求められています。事業者が現時点で1.5℃目標やG7合意と整合する具体的な脱炭素のタイムラインを示せない以上、「リプレースありき」の前提を捨て、計画の中止(ゼロオプション)を真摯に検討すべきです。

【意見10】方法書で提出した意見に対する事業者の見解(No.7)について[準備書 6-6 (288)]

1.10年前の古い研究(2016年電中研報告)への過度な依存は、劇度に進展した近年の気候科学・実測知見を軽視している
貴社は、電力中央研究所が2016年7月に公表した古い報告書を引用し、天然ガス採掘時のメタン漏洩に伴うCO2換算の排出原単位はわずか「0.006 kg-CO2/kWh」であり、燃焼時の排出(0.341 kg-CO2/kWh)に比べて無視できるほど低いと主張しています。

環境影響評価において、10年も前の古い推計データに依存して「メタン漏洩の影響は極めて小さい」と結論づけることは、科学的誠実さを著しく欠いています。ここ数年、気候科学の分野では、サテライト(人工衛星)観測技術の進展や現地での実測調査により、従来の事業者による自己申告ベースの統計が、実際のメタン漏洩量を劇的に過小評価(数倍から十数倍)していたことが世界的な常識となっています。

例えば、スタンフォード大学が2024年3月に発表した大規模な実測研究では、米国の主要な石油・ガス生産地域において、公式統計の約3倍ものメタンが実態として漏出していることが突き止められています。事業者が引用する2016年の電中研データは、これら最新のサテライト実測知見が反映される前の「机上の低位推計値」に過ぎず、本事業の気候影響を正確に評価する根拠として妥当ではありません。

2.最新の国際的な査読付き論文・研究は、LNGのライフサイクル排出量が「石炭に匹敵、あるいはそれ以上」であるリスクを証明している
貴社は、採掘時の漏洩を過小評価した上で、LNGは「二酸化炭素排出量が少ないLNG火力」であるとして気候変動対策への貢献を主張しています。

方法書段階でも指摘した2023年7月の『Environmental Research Letters』誌の論文や、米国公共ラジオ(NPR)の報道、さらに2024年10月に発表され英紙ガーディアン等でも大きく報じられた大規模なライフサイクル評価(LCA)研究によれば、「天然ガスのサプライチェーン全体でわずか1%〜2%程度のメタン漏洩が発生するだけで、ガス火力の温室効果ガス排出量は石炭火力を燃焼させた場合と同等、あるいはそれを上回る気候変動悪化をもたらす」ことが科学的に実証されています。

とりわけ、日本が輸入を拡大している米国産シェールガス等に由来するLNGは、長距離の海上輸送や液化・再ガス化プロセスを伴うため、インフラ全体でのメタン漏出リスクが極めて高いことが指摘されています。事業者は、化石燃料であるLNGの「燃焼時のみの優位性」を強調して温暖化対策になるかのように主張することをやめ、採掘・液化・輸送・保管に至るサプライチェーン全体の最新のLCA評価を真摯に行い、その結果を定量的に準備書に開示し直すべきです。

3.「自社設備での漏洩防止」という限定的な回答は、インフラ全体の大部分を占める上流・中流の漏洩責任を放棄している
貴社は、メタンの強い温室効果を認識しているとしつつも、「当社としては新設設備の建設や運用にあたっては、極力、燃料である天然ガスが漏洩しないように努めてまいります」と自社敷地内での対応のみを強調しています。

しかし、東新潟火力発電所の敷地内(サプライチェーンの最末端である下流)において漏洩防止に努めることは当然の義務であり、それをもって回答とすることは論点のすり替えです。前述の通り、LNGインフラにおけるメタン漏洩の大部分は、海外の採掘井戸(上流)、液化プラント、長距離輸送船、パイプライン網(中流)で発生します。

本計画によって新たな大規模LNGインフラをリプレース・新設し、今後数十年にわたる長期のガス需要を固定化(ロックイン)させる以上、事業者はその調達活動が引き起こす海外上流・中流での膨大なメタン漏洩と環境破壊、人権侵害に対して直接的な加担責任を負うことになります。「自社設備の外側だからコントロールできない」のであれば、それ自体が本事業が抱える致命的な環境リスクであり、事業を中止(ゼロオプション)して国内で完結する純国産の再生可能エネルギー拡大へと舵を切るべき強力な根拠となります。

4.オークション制度の適合や不確実な水素計画は、現時点のメタン排出・気候破壊の免責事項にならない
貴社は、長期脱炭素電源オークションでのLNG火力の位置づけや、将来的な水素・アンモニア混焼の「調査・検討」を盾に、供給力・調整力としての必要性を繰り返し述べています。

国が設計したオークション制度に適合していることや、将来の極めて不確実な水素・アンモニア転換の「調査・検討」を進めることは、現時点で膨大なメタン漏洩とCO2排出を伴う新たな化石燃料インフラを建設することの環境妥当性を何ら担保しません。メタンは二酸化炭素の28〜34倍(短期的な20年タイムスケールでは80倍以上)という極めて強力な温室効果を持つため、今後10〜20年の危急の気候危機対策において、ガス火力の新設は最悪の選択肢です。不確実な未来の技術期待を口実に、現在進行形の気候破壊インフラの延命を正当化することは容認できません。

参考

【意見書】東新潟火力発電所1・2号機リプレース計画 環境影響評価方法書に対する意見(2024年6月13日)
【意見書】東新潟火力発電所1・2号機リプレース計画 計画段階環境配慮書に対する意見(2023年12月8日)

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