2026年7月15日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
気候ネットワークは、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 家庭用温水機器判断基準ワーキンググループにおいてとりまとめられた、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)施行令の一部を改正する政令案に対し、以下の意見を提出しました。
▼意見募集ページ:
エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律施行令の一部を改正する政令案に対する意見公募要領|e-Govパブリック・コメント
意見公募要領によると、意見募集対象の政令案は、「(家庭用温水機器判断基準)ワーキンググループ(以下WGとよぶ)にて取りまとめられた制度に必要となる改正を行うもの」とされているため、関連資料として掲載されている当WGのとりまとめについて意見致します。
1. 総論:目標年度の前倒しと1.5℃目標への整合について
【意見】
目標年度である「2034年度」は遅すぎます。世界的な1.5℃目標の達成および日本の2030年度温室効果ガス削減目標に整合させるため、目標年度を「2030年度」へと大幅に前倒しすることを強く求めます。
【理由】
家庭部門におけるエネルギー消費の約3割を占める給湯分野は、早期に太陽熱温水器や高効率の電化を進めるべきセクターです。本取りまとめ案が提示する「2034年度」という目標設定は、気候危機の緊急性に照らして極めて不十分です。住宅の長寿命化を考慮すると、2030年代半ばまで効率の低い機器や化石燃料ベースの機器の出荷を許容することは、将来にわたる排出量の「ロックイン効果」を生み出し、2050年カーボンニュートラルの達成を著しく困難にします。
2. 定量的な目安(基準値)および出荷比率について
【意見】
定量目安値のさらなる深掘りと、高効率給湯器(ヒートポンプ温水機器等)の出荷台数比率を劇的に引き上げる基準設定を求めます。
【理由】
本案で示された目標年度の出荷台数比率(高効率給湯器39.3%、潜熱回収型42.5%、その他18.1%)では、依然として化石燃料を直接燃焼させる給湯器が主流を占め続けることになります。給湯分野においては、再エネ電気を活用するヒートポンプ温水機器(エコキュート等)や太陽熱温水器へのシフトを本質的に義務付けるような、より野心的な定量基準へ見直すべきです。
3. 化石エネルギー消費量の算定方法および係数の不適切さについて
【意見】
本取りまとめにあたって導入された「化石エネルギー量評価」は、根拠となる係数自体が政策目標の数字を恣意的に組み合わせたものであって合理性を欠き、省エネ効果を著しく過小評価するものであるため、算定方法の全面的な再審議を求めます。
【理由】
本とりまとめに当たって電気の化石エネルギー量換算値が、0.41×9.4MJ/kWh=3.854MJ/kWhであり、省エネ法で設定されている電気の一次エネルギー換算値8.64MJ/kWhの半分以下という極めて歪んだ数値になっています。実際の効果を評価することにもならず、省電力の効果を過小評価することになりかねません。この算定方法には以下の点で致命的な問題があり、当WGの取りまとめは極めて不適切と言わざるを得ません。
(1) 「0.41」という係数自体の無意味さと論理的破綻:
そもそも「0.41」という数値は、「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」で掲げられた電源構成目標における火力発電比率(LNG 20%、石炭 19%、石油 2%)の合計値(41%)に過ぎません。これは「政策目標としての将来の電源構成の目安」であり、特定の電気機器が消費する電力のエネルギー消費量を測定するための係数として組み込むこと自体、科学的・客観的な意味をまったく成しません。目標値に過ぎない数値を固定係数として用いることは、実態ベースの排出削減効果を正確に評価する機能を喪失させています。
(2) 省電力効果の過小評価:
この歪んだ算定法によって省電力を計算すると、化石エネルギーだけでなく、本来一次エネルギー量として評価するべき原子力や再生可能エネルギーまで一律に減少したとみなされる計算構造になってしまい、消費者が電力を節約した際の実質的な省エネ効果が著しく過小評価されます。これはいたずらに電力需要の増加を誘導しかねません。
(3) 原子力エネルギーの議論不足:
この化石エネルギー評価では、原子力発電のエネルギーを「ゼロカウント」としており、これは原子力エネルギーを省エネルギーの対象から外すことを意味します。このようなエネルギー政策の根幹に関わる方針転換の是非について、社会的な議論やWG内での十分な審議がなされた形跡がありません。
(4) 既存の高効率給湯器評価との著しい不整合:
本方法で試算すると、最もエネルギー効率が悪いとされる「電気ヒーター温水器(貯湯ロスをゼロとした場合)」が、これまで高効率とされてきた「潜熱回収型ガス給湯器」とほぼ同等、あるいは従来のガス給湯器よりも優れた機器であると逆転評価されてしまいます。逆に、燃料電池(エネファーム)が電気ヒーター温水器の1.4倍悪いシステムとして評価されるなど、これまでの省エネ政策の評価軸とまったく整合しません。
(5) 他機器・他分野への悪影響と波及リスク:
本取りまとめで導入された「化石エネルギー量評価」は、科学的根拠を欠いた恣意的な手法であり、省エネ効果を著しく過小評価するものです。このような意味のない不適切な評価方法が一度認められてしまえば、今後、他の電気機器や住宅・建築物、さらには産業界全体の省エネ・非化石転換政策へと波及し、日本の気候変動対策全体の整合性を根本から揺るがしかねないと猛烈に懸念します。したがって、本手法の採用は断じて容認できません。
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