現在、日本各地でLNG火力発電所の新設やリプレース計画が進められています。しかし、1.5℃目標の達成に向けては、化石燃料への依存を急速に減らしていくことが必要です。新たな火力発電所を建設すれば、その設備は今後30~40年にわたってCO₂を排出し続ける可能性があり、化石燃料への依存を固定化する「ロックイン」につながります。
ところが、日本の環境アセスメント制度では、火力発電所のCO₂排出量や発電効率などは評価されても、「1.5℃目標から見て、そもそも今、新たな火力発電所を建設することが適切なのか」を根本から問う仕組みにはなっていません。国全体の温室効果ガス削減目標と、個々の発電所の建設・運転を結びつける仕組みがないためです。
また、評価の中心となるのは、発電電力量あたりのCO₂排出量や、建替え前後の環境負荷の変化です。しかし、古い火力発電所を高効率設備に更新することで、単位発電量あたりの排出量が減ったとしても、それで問題が解決するわけではありません。出力が増強され、設備が今後数十年にわたって運転されれば、発電所全体から排出されるCO₂の累積量は大きくなる可能性があります。気候変動対策において重要なのは、効率の改善だけでなく、建設・運転によって将来どれだけのCO₂を排出するのか、そしてその累積排出量が1.5℃目標と整合するのかという点です。
こうした制度上の限界があるにもかかわらず、2025年に成立した環境影響評価法の改正を受け、既存の発電所を建て替える「建替事業」について、環境アセスメントの手続を簡略化する仕組みが導入されようとしています。法改正の背景には、陸上風力を含む建替事業について、既存事業の環境影響に関する情報を活用し、手続きを合理化するという考え方がありました。しかし、法改正後の具体的な制度設計を検討する中で、火力発電所についても簡略化の対象とする方針が示されました。
今回の政令案では、建替え後の火力発電所の出力が既存設備の「2倍以下」であることなどを条件に、一定の手続きを簡略化することが想定されています。しかし、出力比や局地的な環境負荷の変化だけでは、建替え後の設備が長期間にわたって排出するCO₂の累積量や、1.5℃目標との整合性を十分に評価することはできません。
本来なら、こうした観点から環境アセスメントを強化すべきところ、今回の改正は逆に建替えの手続きを簡略化する方向に進んでいます。そこで私たちは、この政令案に対して意見を提出しました。
以下に、その意見を掲載します。
▼「環境影響評価法施行令の一部を改正する政令案」等に関する意見の募集(パブリックコメント)について(〆切:2026年9月24日0時0分)
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=195260051&Mode=0
提出した意見
該当箇所
- 【案文】第七条の二の一
「別表第一の五の項のホ又はヘに該当する事業」の「数値」について、「発電所又は発電設備の出力について、二・〇」となっている点 - 【概要】p.1
「火力発電所の設置又は変更の工事の事業に係る政令で定める距離は300メートル、政令で定める数値は新設する発電所又は発電設備の出力について既存の発電所又は発電設備の出力に対する比が2.0 」となっている点
意見
火力の出力2.0倍までの簡易化は、気候変動対策に逆行する
今回の政令案では、各電源が建て替え時に規定を下回った場合、「建替配慮書」の適用となり、環境アセスの配慮書段階を簡易化できるという内容になっている。火力の場合は、建て替え時の出力が既存設備の2.0倍以下であれば簡易化の対象となる。
しかし、火力の建て替え出力2倍まで簡易化することは、気候変動対策および環境保全の観点から問題がある。まず、当然ながら出力が最大2倍になれば、発電所全体からのCO2の絶対排出量が増加する可能性が高まる。
この2倍の根拠となっている「改正環境影響評価法の施行に関する技術検討会 報告書(令和8年2月)」p.6で示された図では、建替えの実績24件の内訳が不明であり、建て替え前が相当古い機種も含まれることが予想され、また建て替え前後の燃料転換の有無も明らかになっていない。しかも、図5では1.2倍付近でCO2排出量が増加している事例があることを無視しており、恣意的である。
相当古い機種からの建て替えであれば効率化されるのはある意味当然だ。むしろ重要なのは「火力を今建てていいのか」という点である。現行の環境アセスメントでは、気候変動という差し迫った問題に対して、今から火力を建て替えるということの課題感が全く考慮されておらず、効率化されていれば建て替えて良いとの考えが押し出されている。
大規模な火力へ建て替えることで、今後30〜40年にわたりCO2を大規模に排出し続けるロックインをもたらす。G7をはじめとする国際社会では「排出削減対策が講じられていない化石燃料火力の早期フェーズアウト」が求められており、効率向上を理由に火力の規模拡大を容認・手続き緩和することは、1.5℃目標達成に向けた国際的な気候目標と逆行する。
本案には明確に反対する。少なくとも、「改正環境影響評価法の施行に関する技術検討会 報告書(令和8年2月)」p.6の恣意的な読み取りは止め、燃料や建て替え日時も加味したうえで検討するべきと考える。
参考
- 改正環境影響評価法の施行に関する技術検討会 報告書(令和8年2月)https://assess.env.go.jp/files/0_db/seika/1079_03/houkoku.pdf
- 【プレスリリース】環境影響評価法改正案の閣議決定にあたって~どさくさ紛れに原発・火力の建替まで簡略化~(2025年3月19日)
https://kikonet.org/content/37578
お問い合わせ
本プレスリリースについてのお問い合わせは以下よりお願いいたします。
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
(京都事務所)〒604-8124 京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305号(→アクセス)
(東京事務所)〒102-0093 東京都千代田区平河町2丁目12番2号藤森ビル6B(→アクセス)
075-254-1011 075-254-1012 (ともに京都事務所) https://kikonet.org

