2025年5月28日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
2026年5月20日(ニューヨーク時間)、国連総会は、日本や中国も含む141か国の賛成多数で、国際司法裁判所(ICJ)による「気候変動に関する国家の義務」についての勧告的意見を歓迎する決議(A/80/L.65)を採択した。気候ネットワークは、多くの国がICJの勧告的意見を支持したことを心から歓迎する。
これまでの経緯
ここに至る経緯は、2021年9月に、気候変動の影響を最も強く受けている地域の一つである南太平洋の島嶼国の若者たちが声を上げ、それに応えたバヌアツ政府が主導し、気候変動に関する国家の義務について世界で最も権威ある裁判所であるICJの勧告的意見を求めることを提案したことが始まりであった。
2025年7月に全員一致で言い渡された勧告的意見は、「清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利」を人権として認めた2022年7月28日の国連総会決議を踏まえ、同権利が他の人権を享受するための前提条件であるとし、すべての国に厳格なデューデリジェンスの基準をもって気候変動対策を講じる法的義務があるとした。
今回の国連決議は、「既存の国際法の明確化に対する権威ある貢献」として、このICJの勧告的意見を尊重し、その重要性を確認するとともに、各国には、パリ協定のもとで気温上昇を1.5℃未満に抑える集合的な目標の達成のための措置を講じることも含め、温室効果ガスの排出から環境を守る義務があること、そして義務の履行を怠った場合は国際法上の不法行為を構成し、違反した義務を履行する継続的義務があるとした、ICJの意見を再確認したものである。
国連で「気候変動対策は国家の義務」を決議 日本にいま求められること
本決議には、勧告的意見を歓迎するとともに、ICJの判断を多国間協力の強化と気候変動対策の加速へと確実に結びつける決意も盛り込まれた。これが賛成多数で採択されたことは、各国政府が勧告的意見を具体的な行動に移す意思を示したことに他ならず、国際社会の意思としての重みを有するものである。そして、ICJの勧告的意見が、裁判所およびその機能を尊重し国際法および正義、法の支配に基づいて気候変動問題に対処する国際秩序を構築していくための、今日の国際法に基づく権威をも備えたものであり、加盟国には勧告的意見を尊重すべきことを確認したものである。今回の歴史的な決議によって、先の勧告的意見が多国間協力の強化と各国が気候変動対策を加速させていく礎となることがより明確になった。
本決議の採択はまた、各国が気候変動に対し適切な措置を取る責任を認識したことを意味する。日本はこの決議に賛成票を投じたが、NDC(国が決定する貢献)は1.5℃目標の達成に求められる削減目標とはいえず、火力発電の維持拡大に利用される容量市場や長期脱炭素電源オークション、GX-ETSなどを通じて、気候変動の主な要因であるCO2を大量に排出する火力発電を温存させる政策を取り続け、再エネの拡大を抑制している。そして、世界的なエネルギー危機に直面し、各国が化石燃料からの脱却を模索するなか、石炭火力の抑制策を解除するなど気候変動対策に逆行する政策をとっている。
勧告的意見では、1.5℃目標の達成に向け最大限の努力を前提とした目標(NDC)を立てることが求められている。また、化石燃料の生産や消費、化石燃料補助金の提供等により温室効果ガス排出削減を怠った場合は国家の義務の違反となるおそれがあることや、企業等の民間主体の規制も国家の義務であることが提示されている。日本政府は勧告的意見で示された国家の義務の誠実な履行の第一歩として、速やかに排出削減目標の強化や排出削減に逆行するエネルギー政策の見直しの議論を始め、民間企業のGHG排出量の削減を実効的に促すことも含めた政策転換することが不可欠でる。
参考
General Assembly Strengthens Fight against Climate Change, Adopting Contentious, Yet Broadly Supported Draft among Several Texts on Myriad topics(国連ウェブサイト)
CAN-Japan:【プレスリリース】国連総会が気候変動における歴史的な決議を採択—ICJ勧告的意見を賛成多数で支持したことを歓迎する(2026年5月21日)(CAN-Japanウェブサイト)
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気候ネットワークでは、これまでICJ勧告的意見が明らかにした気候変動に関する国家の義務について、日本でも広く知っていただくため、日本語での情報発信をおこなってきました。
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