2025年3月5日
国際環境NGO 350.org Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)

4日、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)が国連のイニシアチブである「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(Net-Zero Banking Alliance: NZBA)」から脱退したと複数のメディアが報道しました。これを受け、350.org Japanは、同社に問い合わせ、NZBA脱退が事実であることを確認しました。私たち気候NGOは、気候の危機が深刻化する中、同社が金融機関の国際的な脱炭素の協力枠組みから脱退したことについて、懸念を表明します。そして、他の国内の大手金融機関に対して、国際枠組みから脱退することなく、脱炭素への対応を強化し続けるよう求めます。

NZBAでは、遅くとも2050年までに金融機関の投融資ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを約束し、科学的根拠に基づいて1.5℃未満に気温上昇を抑えるシナリオに整合した2030年目標や部門別目標の設定、排出量や炭素原単位、対策の進捗の公開などが求められます。三井住友FGはNZBA脱退後も気候変動対策を続けるとしています。しかし、NZBAのように世界中の大手金融機関がポートフォリオにおける脱炭素目標や取り組みの標準を設定し、進捗を比較しやすくする共通の枠組みから外れることは、三井住友FGにとっても、長期的な経済成長を企図するアセットオーナーやその他の金融機関にとっても後退であり、気候危機の被害に直面する市民にとっての悲劇です。

昨年3月には、三井住友FGの三井住友銀行は、大規模な開発プロジェクト向け融資における環境社会配慮基準であるエクエーター原則(赤道原則)から脱退したことが発覚しています。このような国際枠組みや指針に相次いで距離を置く三井住友FGの姿勢は、気候や環境、人権への対応をめぐる懸念をますます深め、評判リスクを高めるものです。

三井住友FGに対して、NZBA脱退について再考するよう求めるとともに、他の国内の大手金融機関に対してはNZBAから脱退することなく、脱炭素への対応をより一層強化するよう要請します。

国際環境NGO 350.orgジャパン・キャンペーナーの伊与田昌慶は次のようにコメントしました。
「日本の主要な金融機関である三井住友FGによるNZBA脱退は残念です。米国における政治状況の変化が背景にあるとされていますが、気候危機が深刻化し、脱化石燃料の加速が必要となっていることは変わりません。NZBAを脱退しても取り組みを変わらず続けるのであれば、あえてNZBAを脱退する必要性はなかったはずです。三井住友FGを含む国内大手金融機関に対して、あらためて、NZBAのような国際枠組みに参加し、透明性を高め、他の大手金融機関との比較可能性を担保した上で脱化石を進めるよう求めます」

国際環境NGO マーケット・フォース・日本エネルギー金融担当の渡辺瑛莉は次のようにコメントしました。
「三井住友FGがNZBAを脱退したことは、益々悪化する気候災害や記録的気温上昇の影響を鑑みれば、非常に憂慮されます。中央銀行と規制当局は、現在の各国政府の気候政策では、世界の気温上昇を防ぐことができず、2050年までに日本のGDPに952兆円もの損失をもたらすと警告しています。地球温暖化を1.5度に抑えることは、我が国や世界の経済と安全な未来にとって極めて重要です。しかし、SMBC、MUFG、みずほの日本のメガバンクは、NZBAの加盟中であっても、1.5度目標に沿った排出削減目標や化石燃料投融資方針を欠いており、同セクターに世界トップクラスの資金提供を続けています。NZBAを脱退したSMBCは、危険な気候変動を緩和するために、2050年ネットゼロ公約を維持し、排出削減目標や化石燃料顧客の移行支援方針を含む気候リスク管理を継続的に強化していくことが極めて重要です。」

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)・プログラムディレクターの田辺有輝は次のようにコメントしました。
「三井住友FGはこれまでNZBAに基づいて投融資ポートフォリオ排出量の中期目標と毎年の排出量実績を公表してきました。例えば発電セクターの2030年の排出目標は138~195gCO2e/kwhですが、直近の排出量(2022年度)は292gCO2e/kwhと、依然として大きな乖離がある状態です。三井住友FGはNZBA脱退後も独自に気候変動対策を続けるとしていますが、この中期目標を達成するために投融資ポートフォリオの脱炭素化を加速する必要があります」

参考報道

日本経済新聞「三井住友FG、脱炭素の国際枠組み脱退へ 邦銀にも波及」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2055N0Q5A220C2000000/

ブルームバーグ「三井住友FGが気候変動対策グループ脱退へ、国内大手金融では初」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSL9MDT1UM0W00

本件に関する連絡先

国際環境NGO 350.orgジャパン・キャンペーナー伊与田昌慶
japan@350.org