Kiko」は、温暖化問題の国際交渉の状況を伝えるための会期内、会場からの通信です。

会議場通信 Kiko ドバイNo.2(2023年12月7日) 

エネルギー移行に関する有志国のプレッジが次々と発表、日本の動きは

COP28議長国(アラブ首長国連邦)は、今COPの優先課題の一つとしてエネルギー移行を掲げており、会議3日目の12月2日にはエネルギーに関する有志国の宣言等が次々と発表された。

再生可能エネルギー3倍のプレッジに100カ国以上が賛同

COP28の目玉の一つとして注目されていた、議長国リードによる「再エネの設備容量3倍・エネルギー効率2倍」のプレッジ(誓約)に日本を含む116カ国(12月2日の発表時点)が賛同した。議長国としては、今後、この内容をCOP合意に盛り込みたい考えだ。
日本政府はこのプレッジがあくまで世界全体で再エネ3倍を目指すことであり、賛同によって日本の政策を直ちに変える必要はないという認識だが、1.5℃目標達成に向けた責任や能力を鑑みて、現在の計画を60%以上に引き上げるなど、世界全体の目標を上回る水準となるよう見直し、政策措置を強化することを求めたい。

アメリカがPPCA(脱石炭国際連盟)に加盟

PPCA(脱石炭国際連盟)は、2017年のCOP23にて英国政府とカナダ政府のリードにより発足した、石炭火力発電からの脱却とクリーンエネルギーへの移行を目指す国際的な枠組みである。発足以来、国・地方政府・民間組織(企業等)のメンバーを増やしてきたが、12月2日にアメリカ、ノルウェーなど7カ国が加盟するという大きなニュースが飛び込んできた。これにより、G7諸国のなかでPPCAに参加していないのは日本のみとなった。PPCAの加盟には、OECD諸国とEUは2030年まで、その他の国は2040年までの石炭火力フェーズアウトを宣言することが求められている。

同日、さらに、フランスと米国主導で、1.5℃目標の実現には毎年92ギガワットの石炭火力の廃止が必要とし、特に新興国で再エネ投資を3倍にするなど、石炭からの公正な移行を支援するためのイニシアティブが発足した。ここにはインドネシア、マレーシア、ベトナムなど東南アジアの国も含まれている。COP28前には日本の参加も取りざたされていたが、結局、参加しなかった。

今後一層、日本に対して石炭火力の廃止年限を定めることへの国際的な圧力がますます強くなるだろう。

原発による発電容量3倍の宣言には、市民社会から反対の声が

一方で、12月2日には原発利用に関する宣言も発表されている。アメリカ政府のリードのもと、2050年までに原発による発電容量を世界で3倍を目指すという宣言を発表し、21カ国が賛同した(リード国のアメリカを含めると22カ国)。残念ながら日本も賛同している。これに対し、市民社会はこの宣言を非難する声明を発表し、断固反対する意思を示した。

参考:【共同プレスリリース】原発は気候変動対策にならない https://kikonet.org/content/32645

エネルギー分野に限らず、連日、有志国のプレッジやイニシアティブが発表されている。野心的な内容を掲げているものもあるが、打ち上げ花火で終わらないことを期待したい。

エネルギーの日:再エネと公正な移行を求める市民の声

化石燃料からの脱却と公正な移行を求めるアクションの様子

12月5日は「エネルギーと産業/公正な移行/先住民」の日。

世界各地からドバイに集まった市民によって、エネルギーや公正な移行に関するさまざまなアクションが行われた。化石燃料からの脱却は、多くの産業に構造的な変化をもたらす。脱炭素社会への移行にあたり、影響を受けるコミュニティや人の参加を確保し、雇用や生活を守り、より良い社会を作っていく取り組みを「公正な移行」という。

COP28では、パリ協定の目標達成のための公正な移行のあり方をどのように議論するかについての交渉が進められている。

日本は再び「本日の化石賞」を受賞(12月5日)

12月3日の受賞に続き、日本は12月5日に「本日の化石賞」を受賞した(他の受賞国はアメリカとロシア)。COP28では2度目の受賞となる。化石賞を主催するClimate Action Network(CAN)は、日本は「化石賞大賞」を狙っているのでは、と皮肉たっぷりに評価した。

CANは「本日の化石賞」を発表するプレスリリースで、「自国の脱炭素戦略が厳しい評価を受けたにもかかわらず、改善どころかより悪く動いている」と述べている。1回目の受賞では、岸田首相のスピーチについて、「日本が推進する化石燃料への水素・アンモニア混焼はグリーンウォッシュ。実質的な排出削減にはつながらないどころか、日本のエネルギーの脱炭素化と化石燃料フェーズアウトの可能性を潰してしまう」と厳しく批判された。経産大臣は「日本の新しい技術を理解しない方々が言っているのでは?」との見方のようだが、日本の目指す「ネットゼロ」とは、計画中の施設は新設終了宣言に含まれないことや、混焼を口実に老朽化した石炭火力を使い続けるというものだ。このような重要な点を語らずに「脱炭素」をアピールしようとする姿勢に、市民社会から再度、厳しい評価が下された。

GSTマラソン、今こそゴールに向けて疾走を(eco抄訳12/3)

パリ協定第14条で定められているグローバル・ストックテイク(GST)は、何時間も費やして技術的な対話を行い、何千ページもの書類を提出するという、2年間にわたる激しいマラソンだった。 このレースが、COP28で大詰めを迎えている。GSTは、気候変動に対する野心的な取組みにおけるギャップについて説得力のある評価を行い、現在の軌道を修正する方法について明確な指針を示し、結論を出さなければならない。

ECOは、締約国が、気候行動強化のための強力で野心的なGST決定という賞を獲得するためにゴールに向かって疾走するのではなく、深い溝に足を取られていることを懸念している。つまりパリ協定とUNFCCCの関係に始まり、衡平性の意味、途上国への資金供与を拡大する必要性までもが、締約国がGSTマラソンのゴールに向けて疾走する妨げとなっている。さらに、GSTの技術評価統合報告書がここまでのマラソンの重要なチェックポイントであったにもかかわらず、一部の締約国が、GSTの決定においてこの報告書を承認するに留まり、それ以上のことには消極的であることに驚いている。またECOは、何カ国かの締約国が、いまだに化石燃料の段階的廃止を推進せず、その代わりに化石燃料の採掘と燃焼を続けると主張していることも懸念している。これではマラソンランナーがタバコを吸って肺を毒しているようなものだ。

ECOは議長国に対し、積極的に監督の役割を果たし、締約国がゴールまで疾走できるよう、溝を埋めるために必要なあらゆるサポートを提供するよう呼びかけたい。あわせて、リーダーシップを発揮し、締約国が化石燃料中毒から抜け出す助けとなることを強く求める。ECOは議長国と締約国が、COP28でGSTマラソンに勝利するチャンスをつかむことを願う。それができなければ、強力かつ野心的なGSTによってもたらされる成果という金メダルは、悪化する気候危機の中で溶けてしまう恐れがあるだろう。

損失と損害への資金:COP28でやるべきことはまだ終わっていない!(eco抄訳12/5)

COP28の初日に、損失と損害(ロス&ダメージ)基金の運用化が異例の採択となったことは、もちろん私たちを力づけてくれた。30年もの困難や落胆ののち、脆弱な国々やコミュニティは彼らの言ってきたことにようやく耳が傾けられた、と言うことができるだろう。だが、COP28ですでに損失と損害資金に対するアクションは終わった、次に進むことができるというシナリオにECOは危惧している。実際には、損失と損害資金の決定文書は気候正義を果たすには程遠いものである。グローバル・ストックテイク(GST)が決定内容における大きなギャップに対処し、資金増額に向けた政治的気運を高め、継続的で予測可能な損失と損害資金が減少しないように求めていかなくてはならない。

COP28で承認された損失と損害基金、そして、これまでの各国のプレッジは始まりにすぎない。損失と損害への資金が、現在と将来のニーズに見合ったものへ増額されるよう、GSTはその役割を果たさなければならない。ECOは、議長国に対し、積極的に監督の役割を果たし、締約国がゴールまで疾走できるよう、溝を埋めるために必要なあらゆるサポートを提供するよう呼びかけたい。

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