<プレスリリース>

G7気候・エネルギー・環境大臣会合閉幕にあたって
日本は議長国として、石炭火力発電の全廃時期も含めた1.5℃への具体的な道筋を示すべき

2023年4月17日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 4月15~16日に札幌市で開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合はコミュニケ(合意文書)を採択し、閉幕した。IPCCが3月に発表した第6次評価報告書の統合報告書では、「この10年の選択や行動は、現在から数千年先にまで影響する」とし、この10年の取組みが決定的に重要であり、2030年までにでき得る限りの対策をとるように警鐘を鳴らしている。またロシアのウクライナ侵攻による世界的なエネルギー危機も継続している。このような状況を背景に、化石燃料依存からの脱却やクリーンエネルギーへの公正な移行の加速に向けた具体策に合意できるかが焦点となった。

取りまとめられたコミュニケには、気候変動、生物多様性の喪失、汚染の3つの危機にどう対応するかが盛り込まれている。
気候変動・エネルギー分野では、G7として初めて、排出削減対策の講じられてない化石燃料のフェーズアウトを加速することに言及した。さらに、排出削減対策の講じられていない石炭火力発電所の新規建設を終了させる必要性も盛り込まれた。また、2030年までの洋上風力発電、太陽光発電の導入目標や具体策が明記された。
一方で、昨年のG7首脳コミュニケの「2035年までに電力部門の全部または大宗を脱炭素化する」コミットの強化には至らなかった。さらに、一定の条件のもとでガス部門への投資を許容し、石炭火力発電の全廃時期の明記は見送られた。CCSも2050年ネットゼロ達成に向けた脱炭素ソリューションの広範なポートフォリオの重要な一部であるとの認識や、原子力は一部の国で化石燃料の依存度を下げる低炭素エネルギーを提供する可能性があるとの認識も示している。昨年の合意より前進はあったものの、各国が石炭火力、ガス、原子力などを温存する道を残したことを懸念している。

日本は2023年の議長国として気候変動対策の加速に向けた議論のリードを期待されたが、1.5℃目標達成に向けた道筋とは逆の対応をしている。この間の報道では、石炭火力の全廃時期の明記や電気自動車(EV)の導入をコミュニケに盛り込むことに消極的であったことが報じられている。
また今回、水素とその派生物(アンモニア等)の電力部門での利用について盛り込まれた。GXを国内およびアジアにも展開していきたい日本政府が、コミュニケにおいて水素・アンモニアを低排出のエネルギー源として位置づけることに注力したとされる。イギリス、フランス、カナダがこれに難色を示したことが報道されたが、結果、1.5℃の道筋と、2035年電力部門の脱炭素化のG7合意に整合し、N2OやNOxの排出が回避された場合にという条件付きでコミュニケに盛り込まれた。日本政府が推進する火力発電への水素・アンモニア混焼技術は、排出削減効果が小さく1.5℃への道筋にも整合しない。これら「新技術」が本コミュニケをもってG7でも承認された技術であるとは言い難い。

1.5℃目標達成まで残された時間はあとわずかであり、5月のG7広島サミットでは、G7がパリ協定1.5℃目標の達成に向けた国際協調をリードする約束を示すべきである。
議長国である日本は、自国のGX政策推進の後ろ盾とするために、水素・アンモニア混焼やCCS、原子力の推進を盛り込むことに注力するべきではない。日本はパリ協定1.5℃目標の達成に向け、石炭火力の全廃時期も含めた化石燃料フェーズアウトと再生可能エネルギーへの公正な移行に向けて具体的な年限や目標を伴った自らのロードマップを明らかにして議論を進めることが、気候危機におけるG7広島サミットでの議長国としての責務である。

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G7気候・エネルギー・環境大臣会合閉幕にあたって―日本は議長国として、石炭火力発電の全廃時期も含めた1.5℃への具体的な道筋を示すべき

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