「川崎市地球温暖化対策推進条例の改正に関する重要施策の考え方(案)」の太陽光発電に関する項目への意見

2022年12月6日

「川崎市地球温暖化対策推進条例の改正に関する重要施策の考え方(案)」のパブリックコメントについて、気候ネットワークは以下の意見を用意しました。

川崎市地球温暖化対策推進条例の改正に関する重要施策の考え方(案)

URL:https://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/300/0000144938.html
募集期間:2022年11月18日~2022年12月17日

 

気候ネットワーク意見

1、「第4章 (仮称)建築物太陽光発電設備等総合促進事業の考え方」全体について

 本事業内容に賛同する。ロシアのウクライナ侵攻により、改めて資源を他国からの輸入に依存することのエネルギー安全保障上の危険性と脆弱さが浮き彫りとなった。世界的に化石燃料からの脱却がますます求められている今、エネルギー自給率向上とそれに向けた再生可能エネルギーの拡大は急務である。屋根および屋上への設置であれば自然を損なうこともないため、住宅用・事業用の建築物へ太陽光発電設備の設置は最大限推進するべきであると考える。

 第6次エネルギー基本計画において、2030年には新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置することが目標とされた一方で、残念ながら国としては再生可能エネルギー設備の設置義務化はされていない。1.5℃目標達成に向けて残されたカーボンバジェットが限られており、ここ十年での気候変動対策が決定的に重要であるとされている中、自治体が今、太陽光発電設置義務化に踏み切ることは非常に意義深く、他の自治体も川崎市を見本にして新築建築物への太陽光発電導入施策を実行していくことが望まれる。

 また国際的にも企業活動においてカーボンニュートラルに向けた取組が前提とされている中で、国内でも有数の工業地帯である川崎市が太陽光発電導入に大きく踏み切ることは産業競争力を維持するうえで重要である。

 一方で、本事業による効果は、川崎市の2030 年度再エネ導入目標における必要追加的措置の約4割相当であることから、太陽光発電設備を既存の建築物に早急に導入する施策が必要である。

2、制度2「(仮称)特定建築事業者太陽光発電設備導入制度」について

 本制度に賛同する。日本における一次エネルギー供給の化石燃料依存度は85.5%であるため、化石燃料の価格高騰は電気料金の高騰に直結する。第1章p.20に記載された通り、電気料金の高騰は市民の家計を圧迫している。さらに、直近では中国電力および東北電力が30%超の一般家庭向けの規制料金の引き上げを予定しており、東京電力も含め大手電力各社もこれに続く見込みである。

 太陽光発電設備は、個人でエネルギー自給を進めることができるほぼ唯一の手段である。資源価格高騰や円安の影響もあり設備の部材費は以前よりも高くなってきているが、化石燃料価格の高騰が今後も長期化する見込みであることから、自宅で太陽光発電した電気を使う方が、電気代を支払うよりもますます経済合理的になっている。

 加えて、停電が生じた際に太陽光発電が設置されていれば自立運転機能を使用でき、地域の重要な防災の拠点ともなりうる。

 住宅に太陽光発電を導入することは家計を助け、地域のレジリエンスを向上させることとなるため、一刻も早く導入を進める施策が必要である。

3、「(2)制度2(仮称)特定建築事業者太陽光発電設備導入制度の考え方」p.56「ウ 太陽光発電設備の設置基準量の考え方」について

 p.56によると設置基準量は「年間供給棟数」×「棟当たり基準量(kW)」×「算定基準率(%)」となり、例として基準量2kW・算定基準率70%が示されている。しかし、p.57の通り補助金を利用した太陽光発電のうち90%以上が2kWなのであれば、より高い棟当たり基準量もしくはより高い算定基準率を設定するべきである。P.56の例など、場合によっては新築戸建て住宅の6割に設置するという目標に合致しなくなる。条件の悪い建築物には設置しないよう配慮したとしても、太陽光発電のもたらすメリットを考えれば更なる高い基準を設定することが重要である。

4、「(4)制度4( 仮称) 建築物太陽光発電設備誘導支援制度の考え方」p.61「イ具体的な支援の考え方」について

 市内での条例に基づく太陽光発電の導入促進を円滑に進めるために、情報提供と支援をワンストップで行う窓口を設け、体系的かつ統合的な支援を行えるような体制を早く構築すべきである。また、こうした体制の構築に向けては、行政や温暖化センター、専門家に加えて、制度の対象となる事業者や建築事業主にとっては金融機関の働きかけ(融資等の基準)も重要な要素になると考えることから、支援体制への金融機関の参加・協働についても検討すべきと考える。

5、p.86「(6)今後のスケジュール」について

 案では、制度1・2の施行が2025年度以降になっているが、気候変動の進行速度の深刻さを鑑みれば、一刻も早く本制度が施行されることが求められる。今後5年以内に世界の気温は産業革命後1.5℃上昇に達してしまう可能性が高いと言われている。準備・周知期間を早め、遅くとも2024年内に開始するべきである。