4月14日、気候ネットワークは、(仮称)千葉袖ケ浦天然ガス発電所建設計画 環境影響評価準備書に対する意見書を提出しました。
(仮称)千葉袖ケ浦天然ガス発電所建設計画 環境影響評価準備書に対する環境保全の見地からの意見書
気候危機の観点から意見を述べる。
もともと本計画は、2015年に株式会社千葉袖ケ浦エナジーが出光興産株式会社所有地内において、石炭を燃料とする総出力約200万kWの火力発電所計画だったが、2019年1月に十分な事業性が見込めないとの判断から断念すると発表された。その後、事業は千葉袖ケ浦パワーへ引き継がれ、燃料が石炭から天然ガスへと変更され、2020年に方法書が公表され、現在の準備書に至った。元の計画時点から約7年経ち、気候変動問題はより深刻化し、世界は2℃ではなく1.5度の上昇に抑えるよう追求することが確認されている(COP26合意)。IPCC第6次評価報告書のレポートがWG1~3まで出そろい、1.5℃目標の達成まで、残された選択肢はわずかであることが明らかになってきた。化石燃料を使うことそのものが問題であり、脱炭素社会への速やかな移行が求められる中、エネルギー事業者は脱炭素型の電源を追求すべきであり、大量のCO2を排出する本計画を進めるべきではない。
また昨今の情勢をふまえ、エネルギーの海外依存度を下げ、エネルギーの自給率を高めていくことが、持続可能な社会の構築につながり、再生可能エネルギーへの早急な対応が求められる。石炭から天然ガスに燃料を変えたとしても、気候危機への対応やエネルギー安全保障上の観点からも依然として問題が多く、計画は白紙に戻すべきである。
① 1.5度との整合について
準備書では、「他の化石燃料に比べて二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスを使用することにより二酸化炭素の排出原単位を低減する」とある。
しかし、Climate Action Trackerの報告によれば、1.5℃目標と整合する2030年のベンチマークとして、日本全体の温室効果ガスの排出を2013年比で2030年までに62%以上削減する必要がある。また、石炭火力は2030年までに全廃、ガス火力については2050年までに全廃する必要がある。
IEAが2021年5月に発表した「Net Zero by 2050」では、1.5度の抑制に関するシナリオとして天然ガスについて「2030年までに発電量をピークとし、2040年までに90%低下させる」ことが示されている。本計画は2028年からの運転開始を見込んでいるが、3基の合計で472万トンものCO2を排出するとあり、2030年にこのような膨大なCO2を発生する発電所を建設すべきではない。具体的にパリ協定や1.5度目標との整合について準備書で明らかにすべきである。
② CO2の排出係数について
Climate Action Trackerの報告では、1.5℃目標と整合する排出係数は2030年に0.09~0.2kg/kWh、2040年に0.01~0.11g/kWhとしており、IEAが2021年5月に発表した「Net Zero by 2050」では、2030年に0.138kg/kWh、2040年には-0.001g/kWhとされている。
準備書では、二酸化炭素の排出原単位を各号機ともに0.307㎏/CO2としているが、0.307kg/CO2は上記を大幅に上回るものである。また、総排出量を段階的に削減するためには、2040年に電力分野では排出係数をゼロにするべきであり、その道筋を描くべきだがそれも示されていない。
なお、将来的なメタネーションなど、実現性の見通しのない現実離れしたイノベーションを前提にすべきではなく、確実に今ある技術の普及を進める意味では再生可能エネルギーへと切り替えるべきである。
意見書(ダウンロードはここから)
(仮称)千葉袖ケ浦天然ガス発電所建設計画 環境影響評価準備書に対する意見書(PDF)
関連文書
(仮称)千葉袖ケ浦天然ガス発電所建設計画 環境影響評価準備書の公表について(リンク)