<プレスリリース>

2030年目標を50%以上へ大幅引き上げを
~2050年温室効果ガスネットゼロ表明を歓迎~

2020年10月26日

特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

菅義偉首相は、本日から始まった第203回臨時国会の所信表明演説において、2050年に温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。

昨年12月の気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25) 時点で、すでに120を超える国が、2050年CO2ネットゼロ目標を設定、または検討を進めることを表明していた。2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを達成することは、パリ協定に基づく気温上昇1.5℃抑制の目標を達成する上で不可欠である。今回の菅首相による方針表明により、日本も遅ればせながら世界の国々とともに、最新の科学に基づき気候危機に向き合う上で必要な削減目標を掲げることになる。世界と同じゴールを見据え、日本として向かうべき「脱炭素社会」への方向性と時間軸を明確に示したことを歓迎する。また、グリーン産業を育成すること、産業構造の転換への発想の転換を図っていくこと、そして、石炭火力に対する政策を抜本的に転換すること、などの方針が示されたことも歓迎する。

一方、2050年ネットゼロ目標を設定するだけでは、気温上昇1.5℃抑制を実現することはできない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の知見に基づけば、累積のCO2排出量は気温上昇と比例することが明らかにされている。このままでは、すでに排出したCO2によって2030年までに気温が1.5℃を超えてしまう可能性がある。1.5℃目標達成のためには2030年までの世界のCO2排出をほぼ半減(45%削減)する必要があることが示されている。すなわち、1.5℃度目標の達成には、2050年に確実に排出をゼロにすることとともに、その経路において2030年に大幅削減を実現していることが決定的に重要である。そのため日本は、2030年目標と政策措置についても抜本的に見直す必要がある。以上から、本表明を受け、必要なことを以下に示す。

2050年目標を日本の目標として明確に位置付けるための法定目標化

2019年6 月に決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」は、2050年ネットゼロ目標を定めていないため、これを見直すとともに、2050年ネットゼロ目標を法定化するべきである。

2030年目標を少なくとも温室効果ガス50%削減(1990年比)へ引き上げ、脱原発・脱石炭のエネルギーミックスを策定すること

2050年目標及びパリ協定1.5℃達成に必要な行動と整合するよう、目標を引き上げること。さらにそのために不可欠な、2030年までの「石炭火力フェーズアウト(段階的全廃)」を目標に定め、脱原発も同時に進め、2030年の電力構成を、再生可能エネルギーとLNGのみで賄う計画を定めること。

不確かな革新的技術への依存ではなく、2030年までの大幅削減を導く、社会エネルギーシステムと社会転換を進めることへ投資すること

菅首相は、次世代太陽電池やカーボンリサイクルなどの革新的イノベーションを推進する方針も示した。しかし、2020年1月決定の「革新的環境イノベーション戦略」は、2030年以降の実装を目指す実用化の目処が立たない技術(CCS/CCUSなど)、もしくは不適切な原発技術などを多く含んでおり、これらの多くは2030年までの削減にほとんど貢献できず、目下の気候対応の要請に応えられるものではない。また、1.5℃目標に資するように2030年までに排出量を半減させるには、産業構造の転換が不可避であり、現在の投資方針を抜本的に見直す必要がある。

投資を強化すべき先は、第一に、今すぐ進められる再エネ・省エネのための制度・技術対策である。第二に、エネルギー多消費産業からクリーンな産業への移転を促進するための雇用の移転(公正な移行)への支援である。産業構造の転換が不可欠な中では、火力発電や製鉄などのエネルギー多消費産業の雇用者一人一人が脱炭素化の加速を通じてより良い仕事に就けることを支援することが重要である。

脱炭素社会の移行を加速させるためのカーボンプライシングを強化すること

脱炭素社会というゴールに向けて社会・経済システム全体の転換を加速させる政策手法が不可避である。高炭素の事業や製品を脱炭素に振り向ける各主体の行動加速のためにこそ、カーボンプライシングの導入に向けた本格議論を進めるべきである。

以上

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