プレスリリース
次期インフラシステム輸出戦略では海外の石炭火力発電への公的支援の中止を決定すべき
2020年5月26日
気候ネットワーク
国際環境NGO 350.org Japan
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
メコン・ウォッチ
小泉環境大臣のリードの下で設置された環境省の「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」(以下、ファクト検討会)が本日、結果をとりまとめ発表しました。同検討会は、政府が「パリ協定の目標達成に向け、石炭火力も含め世界の脱炭素化を進めるための取組については、石炭火力輸出支援の4要件の見直しについて、次期インフラシステム輸出戦略骨子に向け、関係省庁で議論をし結論を得る」としていることを受け、石炭火力輸出への公的支援に関するファクトを整理し、その方向性の検討を行ってきました。
ファクト検討会は、分析レポートの中で、石炭火力発電の公的支援について、エネルギー構造をロックインする恐れや座礁資産化するリスクがあるため長期的な視点が必要だということ、また政府が閣議決定したパリ協定長期戦略の規定、すなわち脱炭素社会の実現を目指すことやパリ協定の長期目標と整合的なインフラ国際展開を進めるという内容に反するということを指摘し、「今後の公的支援を、ビジネスへの支援という観点にとどまることなく、相手国の脱炭素化という長期的な視点を併せ持ち、脱炭素社会への現実的かつ着実な移行に整合的な『脱炭素移行ソリューション』提供型の支援へと転換していく重要性について、認識を共有した」と整理しています。
一方、経済産業省下におかれた「インフラ海外展開懇談会」の5月11日の中間取りまとめでは、石炭火力発電についてはこれまでの既定通りに、高効率石炭火力を選択せざるを得ない国には支援を続けるとの方向性が示されています。しかし、そのような現行の方針を続けることの課題が、今回のファクト検討会で示されたと言えます。
石炭火力発電所の新規建設は、たとえ次世代型の高効率技術であってもパリ協定との整合性がないことが明らかにされている上、経済面でも石炭火力発電の抱えるリスク評価が求められるようになっていることが指摘されています。また、対策の一つとされる次世代技術CCS(二酸化炭素回収・貯留)は、コスト・技術等の観点から、パリ協定の目標に資する時間軸での実現可能性は見い出せません。さらに、受け入れ国では大気汚染の悪化などを含む環境社会配慮面での問題が指摘されるなか、石炭火力への反対運動が高まっており、世界のエネルギー情勢は刻々と変化しています。もはや、石炭火力発電について技術や国の情勢から支援の是非の議論をする段階ではありません。
本日の会見で小泉環境大臣は、ファクト検討会の結果を受け、「日本は売れるから売るではなく、脱炭素への移行が促進されない限り輸出しない、いわば脱炭素化原則へと方針転換しないといけないとのメッセージと受け止める。」という認識を示しました。まさにその認識の通り、石炭火力発電輸出の公的支援のあり方はこれ以上先延ばしすることなく、早急に方針転換されなければなりません。
この先、6月にも閣議決定されると見込まれる次期インフラシステム輸出戦略骨子では、ファクト検討会で示された方向性を踏まえ、政府として、新規計画および現在進行中・建設中を含めたすべての石炭火力発電所の建設および石炭火力発電技術の輸出に対する公的支援を止めるという方針を決定し、それを速やかに実行に移すべきです。
参考
次期インフラシステム輸出戦略骨子策定 及び海外の石炭火力発電への公的支援に関する要請書(4月24日)(リンク)
環境省 「石炭火力発電輸出への公的支援に関する有識者ファクト検討会」の結果について(リンク)
経済産業省「インフラ海外展開懇談会」(リンク)
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