<声明>
コロナ禍に学び、気候変動対策に共に行動しよう
2020年5月25日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
新型コロナウイルスは世界でほぼ同時に日々の暮らしや事業活動を一変させました。既に感染者は500万人、死者は30万人を超えています。命の危機に脅かされ、自由が制約され、第2次世界大戦以降最大とされる経済的影響に直面し、人々は様々な不安の中にあります。極めて厳しい状況に置かれ、今すぐ手を差し伸べなければならない人たちもいます。私たちは、コロナ禍からの回復に手を取り合って突き進んでいかなければなりません。
コロナ禍への対応と備えは、多くの側面で気候変動対策と重なります。
新型コロナも気候変動も、地球規模で人、モノ、金が駆け巡り、膨張を続ける経済社会のもとで起こっています。二酸化炭素は幾何級数的に蓄積し、ウイルスはその数百倍の速さで人とともに世界に広がりました。また、経済力や対応力の格差が拡大するなか、脆弱な層が被害の直撃を受けていることも類似しています。とはいえ、豊かな先進国であれば安全ともいえない、世界共通の国境のない深刻な課題です。新型コロナ対策で評価される国や自治体の取組には、科学に基づくバックキャストの思考が見られますが、これらは、気候変動対策でもかねてから強調されてきたことです。
コロナ禍で都市のロックダウンや緊急事態宣言が受け入れられたのは、ワクチンや治療薬がなく、死に繋がるという危機感があったからでしょう。気候変動もまた、危機感を持つべき命や人権に関わる問題です。近年、極端な豪雨や熱波などによる気候災害で多くの人命が奪われ、人々の生活基盤や経済活動の基盤が破壊されています。国内でも、2018年の熱波、西日本の豪雨被害、2019年の台風による関東・東日本一帯での河川洪水などの被害が度重なりました。この5月には、インドとバングラデシュの国境の低地の人口密集地帯をスーパー台風が襲来し、米国ミシガン州では豪雨により2つの堤防が決壊しました。コロナ禍の時代における大規模な気候災害時の住民避難が現実の課題となっています。2019年、オランダの温室効果ガス排出削減目標の引き上げを求めたオランダ最高裁判決は、気候災害は既に人権問題となっていることを明らかにしています。
しかし、日本における気候変動への危機感は、政治の側にも市民の側にも乏しいままです。世界では石炭火力発電から再生可能エネルギー100%へのダイナミックなエネルギー転換が起こっていますが、日本では、既得権益を守ろうとする勢力が変化を阻み、脱炭素の取り組みは本格化してきませんでした。
新型コロナの経験は、生命を守るためならば政府も個人も大胆に行動することが可能であることを指し示しました。これを教訓に、私たちは、気候変動の緊急性に向き合う必要があります。問題の解決には、これまでとは違う日常、違う経済活動を進めながら、脱炭素型の産業構造への転換や雇用環境の変化を推し進める持続可能な経済政策を講じる必要があります。経済対策では、旧来型のエネルギーの多消費型の社会に逆戻りするという誤った誘導ではなく、原発も温暖化もない未来へと舵を切る道筋を作らねばなりません。
災害は時代の変化を加速させます。地球温暖化を1.5℃の気温上昇に止めるために残された時間は限られています。産業、雇用、暮らし方を公正に移行していく知恵と制度づくりを加速させ、共に行動を進めましょう。
以上