<プレスリリース>
日中韓NGOが石炭火力の現状をまとめた共同レポートを発表
エネルギー大転換を実行する中国、石炭脱却を目指す韓国、石炭推進政策の日本
2018年12月6日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美惠
中国市民気候行動ネットワーク(China Civil Climate Action Network, CCAN)と気候ネットワークは6日、ポーランド カトヴィツェで開催されているCOP24で記者会見を行い、中国、日本、韓国の東アジア三カ国による石炭火力の現状に関する共同レポート「中国、日本、韓国における石炭火力:よりクリーンなエネルギーシステムに向けた現状とこれからの道筋(原題:Coal Power Sector in China, Japan, and South Korea: Current and the Way Forward for a Cleaner Energy System)」をはじめて発表した。
2016年、京都で東アジア気候フォーラムを開催した際、気候変動に取り組む3ヶ国の環境NGOが集まり、石炭火力発電の問題について共有した。いずれの国も石炭火力に大きく依存し、今後パリ協定をふまえた削減を目指す必要があることを確認し、まずは各国のNGOがそれぞれの国の政策や石炭火力の現状、市民活動とその成果についてまとめることになった。本レポートは、各国のNGOがまとめた報告を、中国の環境NGO 盤石環境エネルギー研究所(Rock Environmental and Energy Institute, REEI)が取りまとめた。本レポートにおける日本の分析については気候ネットワークが行った。
現在、石炭火力に依存する3ヶ国は、いずれもパリ協定で定める「1.5℃~2℃目標」を遵守するレベルにはなく、野心的な目標設定と取り組みの強化や加速が求められる。しかし、今回のレポートでは、3ヶ国の中でも石炭火力を「推進」している日本のパリ協定からの逆行ぶりが改めて浮き彫りになった。中国では、2012年から2013年頃に石炭によるPM2.5の大気汚染が社会問題となり、大気の改善に向けた政策が加速した。さらに、市民や企業による再生可能エネルギーへの投資転換が急速に進んだことで再エネが競争力を持ち、急速なエネルギーシフトが進んでいる。韓国では、市民社会が脱原発ときれいな大気を求めてきたことを受け、文在寅政権が誕生した。文政権では、原発と石炭火力を低減する方針を打ち出している。また、既存の石炭火力発電の廃止を訴えて市長のハンガーストライキなども行われ、石炭火力を廃止した経緯なども本レポートで触れられている。韓国は実行性の面では課題も多いことがレポートでは明らかになったが、アジアの中で先駆けて排出量取引制度を導入したこともあり、今後の政治的リーダーシップの発揮が期待される。その一方で、日本は100基以上の既存の石炭火力発電所があることに加え、現時点で35基もの新設計画があり、政治的にも石炭火力を推進している状況だ。
なお、中国や韓国は国内で減少傾向にある石炭火力だが、海外への石炭火力輸出に対しては投融資を多額に投じる傾向が続き、日本を含めた3ヶ国は世界の中で投融資額がトップ3を占める。いずれも国際社会からは強烈な批判の対象となっている。
国内外において未だに石炭火力を推進している日本は、早急な石炭火力からの脱却を目指し、再生可能エネルギーを主力電源とする新しいエネルギーシステムへと舵切りしなければ、世界からは本当に取り残されることになるだろう。
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日中韓NGOが石炭火力の現状をまとめた共同レポートを発表~エネルギー大転換を実行する中国、石炭脱却を目指す韓国、石炭推進政策の日本~
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