2011年8月26日
「再生可能エネルギー買取法」成立!
~再生可能エネルギー普及への大きな一歩~
特定非営利活動法人気候ネットワーク 代表 浅岡美恵
本日、再生可能エネルギーで作られた電気の買取価格を保証して普及を促す制度「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案再生可能エネルギー促進法」が全会派一致で可決成立した。日本における電力のうち再生可能エネルギーの割合はたった1%程度にとどまり、広く普及させるために「固定価格買取制度」の導入が不可欠であった。
この法案の成立は、日本がようやく世界の潮流にも乗り、今後、再生可能エネルギーを普及させるための大きな一歩である。東日本大震災の被災地の復興、地球温暖化対策のためのCO2削減、エネルギー自給率の向上に加え、新たな産業の発展や雇用拡大も期待でき、法案成立を歓迎したい。
一方、同じく今国会に上程されていた「地球温暖化対策基本法案」については、今国会での成立がほぼ絶望的となり、大変遺憾である。今後、基本法案は継続審議とし、再生可能エネルギーの導入目標を定め、原発推進を見直し、この次の臨時国会では必ず成立させる必要がある。今年11月から12月にかけてダーバンで開催される気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)の前に法案を成立させ、世界に向けて脱原発と温室効果ガス25%削減の両立を示していくべきだ。
今後、再生可能エネルギーを本格的に普及拡大させることができるか否かは、政省令の策定や、普及拡大のための電力構造改革などの今後の議論にかかっている。以下に、再生可能エネルギー買取法成立後の論点を示す。
★今後の論点のポイント
1.導入目標を明示すべき
再生可能エネルギーの導入割合をどの程度まで増やすかについて明示されていない。現状の「エネルギー基本計画」では、2020年までに1次エネルギーの10%とする目標はあるが、白紙から見直すこととされている。また、5月に菅首相がG8はサミットで発表した「2020年代の早い段階で20%とする」目標には法的根拠が何もない。
法案審議では、本制度の賦課金による産業や家計への影響に対する懸念が多く表明されていたが、目標なきまま賦課金の議論が先行し、結果的に再生可能エネルギーの導入が伸びなければ本末転倒である。「脱原発」に向け、エネルギー政策を大きく転換させる野心的な目標設定が必要だ。
2.買取価格と買取期間はコストベースで設定を
本制度の肝である再生可能エネルギー電気の買取価格や買取期間について、政府は「太陽光発電以外の風力、地熱、バイオマスなどの電源種においては一律20円で15年間の買取とする」と一貫した答弁を繰り返していた。しかし、今回成立した法律は、この方針を覆し「設置の形態および規模」を勘案する条項が書き加えられ、いわゆる「コストベース」の議論の道筋が開かれた。
買取価格などを決めるのは、資源エネルギー庁に置かれる「調達価格等算定委員会」とされている。委員は「電気事業、経済等に関して専門的な知識と経験を有する者」5名で、国会の承認を得て任命される。委員の選定では既得権者やその代弁をするような学者を排除し、再生可能エネルギーの普及に向けた適正な判断をできる人物が公正に決められる必要が求められる。
3.再生可能エネルギーの優先的な接続を
電力会社には再生可能エネルギーの電力系統の接続義務が課せられることとなったが、「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずる恐れがある」場合には接続を拒否できる規定がある(第5条)。この例外規定によって、再生可能エネルギーの優先接続が拒否されることが懸念される。法案審議期間中、北海道電力が風力発電は買い取らないと発表したことが報じられ問題になったが、優先接続は大前提とし、接続に必要な系統整備を進めていくことが必要である。
4.電力多消費型産業の情報はすべて公開すること
修正案から電力多消費型産業に配慮する条項が加わり、製造業のうち、電気使用量が平均使用量の8倍を超える電力多消費型産業は、申請があった場合に賦課金を80%以上(省令で定める額)に免除されることとされた。電力使用量が平均の8倍以上にするために、それ以下のところも賦課金免除のために電力を大量に使用することにつながるのではないかとの懸念も出ている。判断の基本となる情報は全て公開することが前提だ。
5.電力事業改革に早急に踏み込むこと
再生可能エネルギー大幅普及の道筋をつくるためには、今後の電力事業の構造改革が不可欠である。発電・送電・配電の事業の独占構造を切り分け、電力の自由化を進めるとともに、地域間の系統連系強化やスマートグリッド導入が求められる。
法律制定によって再生可能エネルギーの普及拡大の展望が開けたが、再生可能エネルギーの固定価格買取制度についての枠組みができただけだ。再生可能エネルギーを大きく普及拡大させていくための長い階段を一段上ったにすぎない。その一歩を踏み外さないようにするためにも、今後の政省令で定める事項で、再生可能エネルギー普及効果を確保する制度を作り上げることが必要だ。
以上
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