【ペーパー】仙台パワーステーション、汚染排出データの開示に転じる　旧式の低効率技術を採用。汚染排出も既存発電所に比べて最大で10倍（2016/10/12）

【小規模石炭火力計画の調査報告書：追補版】

仙台パワーステーション、汚染排出データの開示に転じる
旧式の低効率技術を採用。汚染排出も既存発電所に比べて最大で10倍

特定非営利活動法人気候ネットワーク
2016年10月12日

気候ネットワークでは、国や自治体の環境アセスメントの対象に一切なっていない7件の小規模な石炭火力発電所の新増設計画について、経済産業省産業保安監督部に対して情報開示請求を行った。その結果、事業者が汚染排出データ等の重要な情報を公開しないまま着工した案件が複数あるなど、不適切な状況であることがわかった（調査結果は2016年7月15日に発表済み）。

その中のひとつ、仙台パワーステーション（宮城県仙台市宮城野区。事業主体は仙台パワーステーション株式会社）は、環境アセスメントの基準をわずかに下回る11.2万ｋＷであり、発電性能に係る情報や、排出される汚染データに係る情報を開示せず、地元住民とのコミュニケーションにも応じていなかった。気候ネットワークは、不開示決定について、情報公開法に基づいて不服申立てを行い、また、今回の調査が明らかにした仙台パワーステーションの姿勢は宮城県議会議員や、住民、メディアによって問題視されてきた。

そのような状況の中、発電性能、汚染排出データ、工事計画に係る情報の不開示決定が取り消され、公開された。開示された内容から明らかになったポイントは次の通りである。

仙台パワーステーションの発電性能は、石炭火力発電技術のうち、1950年代から導入されている、低効率で最も古い「亜臨界圧（Sub-C）」という技術に該当することがわかった。なお、経済協力開発機構（OECD）は、途上国向けに亜臨界圧の公的支援を制限することに合意している。途上国でも導入すべきでないとされる旧式の技術を採用して現在建設中なのが仙台パワーステーションである。この事実は、仙台パワーステーションが「高効率石炭火力発電所を建設」と説明していることと矛盾する。
今回明らかにされた汚染排出データの窒素酸化物量とばいじん量の数字は、他の小規模石炭火力発電所（名古屋第二発電所）と比べて、それぞれ5倍、6倍である。また、2017年稼働予定の仙台パワーステーションの硫黄酸化物濃度、ばいじん濃度は、2009年より稼働している既存の石炭火力発電所（磯子発電所新2号機）の10倍、窒素酸化物濃度は8倍であることがすでに明らかになっている。これらの事実は、仙台パワーステーションが「環境に配慮した石炭火力発電所」と説明していることと矛盾する。
仙台パワーステーションが公開姿勢に転じたのは前進である。これは、気候ネットワークの情報開示請求及び不服申立ての活動のみならず、メディアによる問題提起や、議員、住民の働きかけがあったからである。今回は、重大な環境影響を孕む石炭火力発電所新設計画に対する地域社会の働きかけが重要であることを示す例となった。
本来であれば、地域環境に重大な影響を与える事業である以上、当初から発電所に関する情報開示を行い、地元住民とのコミュニケーションを図ることが当然求められる責任であった。この責任を果たさず、着工から10ヶ月間もたってようやく公開に転じたのは遅きに失したというほかない。また、公開された内容からは、これまでの事業者の説明と矛盾するデータが明らかになっている。事業者の姿勢が厳しく問われるとともに、これまでこの状況を変えられなかった国の環境アセスメントの制度及び行政の対応には課題が残る。

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