4月28日(木)、気候ネットワークは丸紅株式会社、株式会社関電エネルギーソリューションが計画している「秋田港火力発電所(仮称)環境影響評価方法書」に対する意見書を提出しました。
秋田港火力発電所(仮称)環境影響評価方法書に対する意見書
環境影響評価方法書についての環境の保全の見地からの意見
1.石炭火力発電所の計画全般について
秋田港火力発電所(仮称)建設計画は、既存の火力発電所のリプレースではなく、新規に建設する計画である。65万kwを2基建設するもので、
高効率(USC)を採用しているものの、天然ガスの約2倍ものCO2を排出し、将来への気候変動への甚大な環境影響を及ぼすものであることから、
環境の観点から本計画には反対する。
2.石炭種について
設備利用率については記されているが、CO2排出源単位や総排出量、石炭種など、算出の前提となる情報を明示すべきである。発電端効率、送電端効率も環境保全の見地から検討するにあたって重要な情報である。その他、使用する石炭種を変える場合、あるいはその可能性があるのであれば、主要産炭地毎の評価を実施すべきである。
3.二酸化炭素削減の評価手法について
第6.2.1-8表に示された「評価の手法」として「二酸化炭素が、実行可能な範囲内で回避又は低減されているかを検討し、環境保全についての配慮が適正になされているかを評価する。」とあるが、石炭を燃料とすること自体が「実行可能な範囲で回避又は低減」できていない。二酸化炭素の排出が大きい石炭を燃料としない方法にするべきではないか。
4.「パリ合意」との整合性に関する評価について
昨年12月、COP21において「パリ協定」が合意され、地球平均気温を2℃を十分下回る水準(1.5℃)ないし、2℃未満にすることを目指し、今世紀後半にはCO2排出が実質ゼロとすることが決まった。この間示された国の削減目標はエネルギーミックスは、「パリ協定」に合うものではなく、長期目標も示されていないため、今後の見直しが迫られる。
本方法書において「国の『エネルギー基本計画』によると、石炭は『安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源の燃料として再評価されており、高効率石炭火力発電の有効利用等により環境負荷を低減しつつ活用していくエネルギー源』と、また石炭火力発電は『老朽火力発電所のリプレースや新増設による利用可能な最新技術の導入を促進する』」と、国の方針だけを根拠に事業を推進しているが、「パリ協定」を踏まえた観点からも環境リスクのみならず、事業リスクも踏まえるべきである。評価の手法には、「パリ協定」の批准の観点からも計画を評価すべきである。
5.硫黄酸化物(SOx)の排出について
第2.2.6-3表にあるSOxの排出量について、第2章2.1対象事業の目的において「現在利用可能な最良の技術(BAT)である超々臨界圧(USC)発電設備の導入により、電源の高効率化・低炭素化に貢献するとともに、適切に環境設備を設置することで、硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)・ばいじんの排出を抑制し地域社会への環境負荷低減を図ることとした。」ならびに、第2.2.6-3にある「排煙脱硫装置を設置して、硫黄酸化物の濃度及び排出量を低減する。」と記載しているが、SOxの排出濃度が41ppmとされている。
しかし、これは、電源開発磯子火力発電所新1号機(20ppm)の2倍以上、新2号機(10ppm)の4倍に相当することから、「地域社会への環境負荷低減」、「排出量を低減する」との記述と矛盾するものであり、環境対策が不十分である。現在、実現可能な最も排出量が少なくなる環境対策を行うことを強く求める。
6.窒素酸化物(NOx)の排出について
第2.2.6-3表にあるNOxの排出量について第2章2.1対象事業の目的において「現在利用可能な最良の技術(BAT)である超々臨界圧(USC)発電設備の導入により、電源の高効率化・低炭素化に貢献するとともに、適切に環境設備を設置することで、硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)・ばいじんの排出を抑制し地域社会への環境負荷低減を図ることとした。」ならびに、第2.2.6-3にある「排煙脱硝装置を設置して、窒素酸化物の濃度及び排出量を低減する。」と記載しているが、NOxの排出濃度が30ppmとされている。
しかし、これは、電源開発磯子火力発電所の新1号機(20ppm)の1.5倍、新2号機(13ppm)の約2.3倍に相当することから、「地域社会への環境負荷低減」、「排出量を低減する」との記述と矛盾するものであり、環境対策が不十分である。現在、実現可能な最も排出量が少なくなる環境対策を行うことを強く求める。
7.水銀の複合的周辺環境影響について
水俣条約の批准に伴い、石炭火力発電所からの水銀排出が大きな問題となってきている。大気放出については、環境省で規制の方針が検討されている。今後運転を開始する発電所としては、環境保全、汚染防止の観点から、予測レベルと放出削減の方策を明示すべきである。
8.情報公開について
環境アセスメントにおいて公開される資料は、縦覧期間が終了しても閲覧できるようにするべきである。また、期間中においても、印刷が可能にするなど利便性を高めるよう求める。これについては、環境省が平成24年「環境影響評価図書のインターネットによる公表に関する基本的な考え方」において、インターネットでの公表について「法定の公表期間後であっても、対象事業に対する国民の理解や環境保全に関する知見の共有・蓄積といった観点から、インターネットを利用した公表を継続することが望まれます。」と記述しているとおり、継続した情報提供の必要性を示している。さらに、同書では「インターネットにより公表されている環境影響評価図書の閲覧及びダウンロードに要する 費用は、無料とします。また、法定期間後も継続してインターネット上で公表する図書など、 自主的にインターネットで公表する図書の閲覧及びダウンロードに要する費用も、無料とすることが望まれます。」としているとおり、方法書などの環境影響評価図書のダウンロードを無料で行うことも推奨している。
また、インターネットの公表期間を限定し、ダウンロードやコピー、コピー&ペースト機能にも制限をかけているが、地図の引用元である国土地理院が著作権上の問題について「認めるか認めないかは作成者が決めること。承認は必要無い」としており、インターネット上の公開については問題ないはずである。