本日、日本とオーストラリアの市民社会グループが、オーストラリアにおける石炭採掘および日本における石炭消費に起因する影響に焦点を当てたレポート『知らないでは済まされない:日本によるオーストラリア石炭の消費が及ぼす影響』を発表した。
本レポートは、オーストラリア・コンサベーション財団(Australia Conservation Foundation)とオーストラリア研究所(Australia Institute)、気候ネットワークが共同で、日本でのオーストラリア産の石炭の消費が気候、人々の健康、生態系および野生生物の生息地に及ぼす影響についてまとめたものである。以下に本レポートの鍵となっているポイントを記す。
- 日本は世界で5番目の温室効果ガス排出国であり、国内で燃焼させている石炭の60%以上をオーストラリアから輸入している。日本において燃焼されるオーストラリア炭は年間約4億9000万トンの温室効果ガスを排出し、世界規模の気候変動に影響を及ぼしている。
- 日本はオーストラリアにとって最大の石炭輸出相手国であり、日本の石炭需要はオーストラリアの石炭輸出および炭鉱業において重要な位置を占めている。
- 近年、オーストラリアの炭鉱事業の拡張は、グレートバリアリーフや、危機的な状況にある絶滅危惧種、コアラの生息地を含む森林、河川、農地、農村社会のみならず、人々の健康や先住民(ファーストネーション)の権利にまで影響を及ぼしている。
- オーストラリア炭を燃焼させることは、日本の都市の大気環境の悪化につながる。日本では大気汚染が原因で毎年少なくとも6万人が早期死亡していると推定されている。
- 日本企業は、オーストラリアで激しい論争となっている炭鉱を含む数々の炭鉱の権益を保有している。
オーストラリア・コンサベーション財団(Australia Conservation Foundation)のガヴァン・マクファジアン(Gavan McFadzean)は、「このレポートは、オーストラリアと日本の石炭貿易がもたらす真のコスト、つまり、コアラの生息地、水資源、人々の健康、農村社会、さらに原住民(ファーストネーション)の権利に関する損失を明らかにするものです。」と述べる。
気候ネットワークの平田仁子は、「日本は石炭に大きく依存していますが、オーストラリアの石炭を消費することによる現地への影響はほとんど知られていません。私たちは、気候変動だけでなく、オーストラリアの自然と人々にもたらすダメージを軽減するためにも2030年までに石炭火力発電所の使用を止めなければなりません。」と述べる。
オーストラリア研究所(Australia Institute)のロッド・キャンベル(Rod Campbell)は、「オーストラリアは、世界で3番目に大きな化石燃料輸出国ですが、政府は石炭およびガスの輸出を拡大することにしか関心がありません。そのため、日本とオーストラリア、両国でさらに気候変動による被害が拡大することが懸念されます。日本国内でオーストラリア炭を燃焼させることで生じるCO2排出量は、オーストラリアで毎年排出される排出量に概ね匹敵します。」と述べている。
本レポートの共同制作グループは、オーストラリアと日本が両国間の石炭貿易を2030年までに段階的に廃止する(フェーズアウト)ことを求めており、この新しいレポートが、高リスクな石炭火力および原子力発電への依存から脱却し、クリーンで安全な再生可能エネルギーを活用する持続可能な将来に移行するための運動支援の一環として、人々の認識を高めることに役立てたいと考えている。
ファイルダウンロード
- プレスリリース:日本によるオーストラリア石炭の消費が及ぼす影響 石炭への依存を断ち切り早期フェーズアウトを(PDF)
- レポート『知らないでは済まされない:日本によるオーストラリア石炭の消費が及ぼす影響』(PDF)
- レポート“Out of sight, out of mind: Impacts of Japanese use of Australian Coal”(英語PDF)
本レポートに関するお問い合わせ
気候ネットワーク 平田仁子:khirata@kikonet.org
オーストラリア・コンサベーション財団(Australia Conservation Foundation)Josh Meadows:media@acf.org.au
オーストラリア研究所(Australia Institute) Anna Chang:anna@australiainstitute.org.au