【プレスリリース】

電源開発の石炭火力発電所・竹原新1号機および鹿島火力発電所2号機
パリ協定に逆行する営業運転開始に対する抗議声明

2020年7月2日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

 一昨日6月30日、電源開発株式会社(以下、Jパワーという)が、広島県竹原市忠海にて建設を進めてきた石炭火力発電所の営業運転を開始したと発表した。この発電所は、旧1、2号機(25万kW、35万kW 燃料種:石炭)を廃止し、設備容量が60万kWの超々臨界圧(USC)の石炭火力発電所にリプレースする計画として建設が進められた。気候危機への対応として脱石炭火力は世界の緊急の課題であり、古い非効率な石炭火力発電は速やかに廃止すべきものである。これをリプレースするとして時代錯誤な石炭火力発電所を新規に稼働させ、年間316万t-CO2もの追加的な温室効果ガスを長期にわたって排出することは、到底容認できない。

 また同じくJパワーは、翌日7月1日、茨城県鹿嶋市にて日本製鉄株式会社と共同出資により設立した鹿島パワー株式会社の石炭火力発電所「鹿島火力発電所2号機」の営業運転を開始したことを発表した。こちらも64.5万kWの超々臨界圧(USC)で非常に規模が大きい。またこの発電所は東京電力が東日本大震災後に260万kWの電源入札を行った際に落札した計画の一つであり、東京電力福島第一原子力発電所事故以降、原発にかわり国内で石炭火力の新設計画が爆発的に増えるきっかけとなったものである。原発や石炭のような大規模集中型電源から分散型の新しい電力システムへの移行を阻害するものでもあり、気候変動対策にも逆行するものである。

稼働を開始した石炭火力発電所が立地するいずれの県でも深刻な気候災害があった。2年前、広島県では西日本豪雨における集中豪雨で、多数の犠牲をもたらした。また、2015年には茨城県常総市で記録的大雨があり、鬼怒川の堤防が決壊、甚大な被害が出ている。今後、気候変動のリスクはますます大きくなり、パリ協定に定められた気温上昇を1.5から2℃未満に抑える目標を達成するには、現状の各国の対策だけでは極めて不十分である。それに加えて、新たに石炭火力発電所を動かすことはパリ協定に逆行するものである。パリ協定がスタートした今、こうした石炭火力発電所を立て続けに稼働していくJパワーに対して厳重に抗議する。

Jパワーは世界最高水準の熱効率の達成や、バイオマス燃料混焼によりCO2排出量の削減をうたっているが、いずれをもっても、石炭火力発電所の稼働はCO2の排出を減らすどころか増やすものである。石炭を燃料とする限り、どんなに効率を高めてもCO2の排出量は天然ガスの2倍の排出がある。CO2排出係数は、766g/kWhもあり日本の発電事業者の業界団体が自主目標とする370g/kWhを大幅に上回る。また、バイオマス混焼10%を目指すとしているが、これもバイオマスの種類によっては大規模な森林破壊をもたらしかねず、海外から輸入される場合には運搬時のCO2排出の増加も懸念される。バイオマス混焼により、温室効果ガスの大規模排出源である石炭火力の稼働を正当化することはできない。

Jパワーは、パリ協定に整合する気候変動対策をうちだし、ただちに国内すべての石炭火力発電の稼働を見直すべきである。

 

プレスリリース(本文)

電源開発の石炭火力発電所・竹原新1号機および鹿島火力発電所2号機 パリ協定に逆行する営業運転開始に対する抗議声明

参考

竹原火力発電所新1号機の営業運転開始について (2020年6月30日 発表)
https://www.jpower.co.jp/news_release/2020/06/news200630.html

鹿島パワー株式会社 鹿島火力発電所2号機の営業運転開始について(2020年7月1日 発表)
https://www.jpower.co.jp/news_release/2020/07/news200701.html

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