2月26日(金)、気候ネットワークは千葉袖ヶ浦エナジー(出資:出光興産株式会社・九州電力株式会社・東京ガス株式会社)が計画している(仮称)千葉袖ケ浦火力発電所1,2号機建設計画の環境影響評価方法書に対する意見書を提出しました。
(仮称)千葉袖ケ浦火力発電所1,2号機建設計画の環境影響評価方法書に対する意見書
1.石炭火力発電の計画全般について
(仮称)千葉袖ケ浦火力発電所1,2号機建設計画は、既存の火力発電所のリプレースではなく、新規建設計画である。2基あわせて200万kWにもなり、国内の火力発電所建設計画では最大規模になる。高効率の最新技術(USC)の利用とはいえ、天然ガスの約2倍ものCO2を排出し、将来への気候変動への甚大な環境影響を及ぼすものである。環境の観点から本計画には反対である。
2.石炭種・バイオマス混焼について
設備利用率は記されているが、CO2排出原単位や総排出量、石炭種など、算出の前提となる情報を明示するべきである。発電端効率、送電端効率も環境保全の見地から検討するにあたって重要な情報である。そのほか、使用石炭種を変える場合、あるいはその可能性があるのであれば、主要産炭地毎の評価を実施すべきである。またバイオマス混焼についても検討しているとのことだが、混焼することによる環境影響についても評価するべきである。
3.二酸化炭素削減の評価手法について
6.2.1 調査、予測及び評価の手法第6.2-10表に示された「評価の手法」として「発電所から発生する二酸化炭素に係る排出が、実行可能な範囲で回避又は低減されているか」とあるが、石炭を燃料とすること自体が「実行可能な範囲で回避・低減」できていない。
二酸化炭素の排出が大きい石炭を燃料としない方法にすべきではないか。
4.「パリ合意」との整合性に関する評価について
昨年12月、COP21において「パリ協定」が合意され、地球の平均気温を1.5℃/2℃未満にすることを目指し、今世紀後半にはCO2排出が実質ゼロとすることが決まった。この間示された国の削減目標やエネルギーミックスは、「パリ合意」に合うものでもなく、長期目標も示されていないため、今後の見直しが迫られる。
方法書では、「国の『エネルギー基本計画』において、『地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量あたりの単価も化石燃料で最も安い』ことから、『安定供給性と経済性に優れた重要なベースロード電源』と位置づけられており、その開発意義は十分にある」と、国の方針だけを根拠に事業を推進しているが、「パリ協定」をふまえた観点からも環境リスクのみならず、事業リスクもふまえるべきである。評価の手法には、「パリ協定」の批准の観点からも計画を評価すべきである。
5.市原火力発電所建設計画に対する環境大臣意見について
2015年11月13日に出された市原火力発電所建設計画 計画段階環境配慮書(市原火力発電合同会社)に対する環境大臣意見において、(別紙2)(1)大気環境①において、「事業実施想定区域の周辺には、他事業者による石炭火力発電所が環境影響評価手続き中であり、大気汚染物質に係る累積的な影響が懸念されることから、今後、可能な限り、環境影響評価図書等の公開情報の収集を行う等、当該石炭火力発電所との重畳を踏まえた予測に必要な情報の収集に努め、必要な調査、予測及び評価を行い、大気環境への影響低減のための適切な環境保全の検討。」が求められており、市原火力発電合同会社による計画と、本計画による複合的な周辺環境影響についても考慮するべきである。
6.情報公開について
環境アセスメントにおいて公開される資料は、縦覧期間が終了しても閲覧できるようにするべきである。また、期間中においても、印刷が可能にするなど利便性を高めるよう求める。これについては、環境省が平成24年「環境影響評価図書のインターネットによる公表に関する基本的な考え方」において、インターネットでの公表について「法定の公表期間後であっても、対象事業に対する国民の理解や環境保全に関する知見の共有・蓄積といった観点から、インターネットを利用した公表を継続することが望まれます。」と記述しているとおり、継続した情報提供の必要性を示している。さらに、同書では「インターネットにより公表されている環境影響評価図書の閲覧及びダウンロードに要する 費用は、無料とします。また、法定期間後も継続してインターネット上で公表する図書など、 自主的にインターネットで公表する図書の閲覧及びダウンロードに要する費用も、無料とすることが望まれます。」としているとおり、方法書などの環境影響評価図書のダウンロードを無料で行うことも推奨している。
さらに、インターネットの公表期間を限定し、ダウンロードやコピー、コピー&ペースト機能にも制限をかけることについて、本方法書の第7章 「1-2表(7)一般の意見に対する事業者の見解」の中で「当社以外が作成した地図等を含むことから、無断複製等の著作権に関する問題が生じないよう留意する必要がある」などと説明されているが、地図の引用元である国土地理院では「認めるか認めないかは作成者が決めること。承認は必要無い」としており、インターネット上の公開については問題ないはずである。