意欲のない温室効果ガス削減目標は受け入れられない
原発ゼロで温暖化対策の深掘りをすべき
2015年4月24日
認定NPO法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
本日の各種報道によれば、政府は23日に、2030年の温室効果ガスの削減目標を25%にすることと、電源構成(エネルギーミックス)について最終調整に入ったということです。
温室効果ガスの2030年削減目標は、基準年も明確にされないまま「25%削減」という数字だけが新聞紙面に踊っていますが、IPCCで示された「2℃目標」を達成するために必要な大幅削減にはほど遠く、決して受入れられる数字ではありません。少なくとも、日本国内において2050年に80%削減という長期目標に向けて直線的な道筋を描くためには、2030年に1990年比40~50%削減が不可欠であり、25%でも不十分です。さらにこの基準年は2005年あるいは2013年と伝えられており、1990年から約10%程度増加していますので、実質的には1990年比で15%程度しか削減しないというものです。これでは、世界から大きな顰蹙を買うことになるでしょう。
一方、温室効果ガス削減と表裏一体であるエネルギーミックスの議論では、政府は2030年に原子力発電20~22%、再生可能エネルギー22~24%、天然ガス火力27%、石油火力3%で調整していると報道されています。この数字は非常に問題です。まず大前提となる2030年の電力需要の見通しでは、政府の長期エネルギー需給見通し小委員会の、2013年の9670億kWhから2030年9810億kWhに増加することを前提としています。再生可能エネルギーは22~24%としていますが、ここには大規模水力も含まれ、約9%を占めていますので、風力、太陽光、地熱、バイオマス、小水力などの本来の自然エネルギーは13~15%程度にしかなりません。これでは、大幅に増やすことになりません。少なくとも、本来の自然エネルギーを30%以上に増やす目標を掲げて、それを前提に電力システムを改革していくべきです。
さらに、2030年の原子力発電を20~22%も見込むことは、現時点で一基も稼働しておらず、40年を経過した、あるいは経過が近い原発が多数存在することからも、非現実的な想定です。稼働期間を60年に延長し、新増設も予定した案であり、福島原発事故の被害を直視せず、原発依存からの脱却を求める国民の声に背を向けた案といわざるを得ません。
また、火力発電については、石油と天然ガスを現状から大幅に減らす一方で、CO2排出量の最も多い石炭火力発電を温存させる案であり、石炭火力発電所の割合を大きく減らそうという世界の潮流からは大きく逸脱するものです。
現在、エネルギーミックスの議論は原発依存から脱却を求めて声をあげてきた国民の意思を反映させるプロセスがとられず、国民的議論のないまま、今回の「25%削減」という数字も突然報道ベースで出てきました。
2030年の日本と国民生活の将来像にかかる問題であり、国民的議論のプロセスを十分に踏まえて、決定していくべきです。
プレスリリース本文(PDF)
意欲のない温室効果ガス削減目標は受け入れられない ~原発ゼロで温暖化対策の深掘りをすべき~(2015年4月24日)
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