IPCC第5次評価報告書第3作業部会

日本の温室効果ガス削減政策、科学に基づきただちに見直しを

2014年4月14日
認定NPO法人 気候ネットワーク代表
浅岡 美恵

 4 月13日、ドイツのベルリンにて、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書第3作業部会による最新報告書が発表された。報告書では、 2100年に大気中のCO2換算濃度が450 ppmに抑えられれば、気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えられる可能性が高いことが示された。2100年に450 ppm未満とするためには、再生可能エネルギーなど低炭素エネルギーもしくは炭素ゼロのエネルギーの割合を大幅に増やす必要があるとされる。また、 2030年まで温室効果ガス削減の取り組みを遅らせれば、産業革命前から気温上昇を2℃未満に抑えることがより困難になることも明らかにされた。

 気候変動のリスクを回避するために、残された時間はあとわずかであるが、まだ道は閉ざされていない。早急に温室効果ガスの大幅削減を行うことが我々の世代の責任である。

 IPCC 報告では、エネルギー供給について、再生可能エネルギーが性能やコスト低減で進展しているため、大規模に拡大する可能性が高いことが示された。また、天然 ガスについて、掘削や供給時のCO2漏洩が小さければ、石炭火力発電から高効率天然ガス火力発電に切り替えると大幅な削減につながる可能性が高いことを示 している。また、原子力については、1993年以降世界の発電量における原発の割合は低下していることが記された。さらに、原発が稼働リスク、資金的・規 制的リスク、廃棄物の管理問題、核兵器拡散の懸念など、様々な障壁やリスクを伴うことも指摘されている。

 これまで、気候ネット ワークでは、 政府が推進する石炭火力発電は気候変動対策に逆行していることを指摘してきた。例え高効率の発電方法であったとしてもCO2の排出量は石油火力発電と同レ ベルかそれよりも多い。ましてや、今後新たに建設すれば温室効果ガスを長期にわたって増やし続けることにほかならない。今回のIPCCの報告書は、その主 張に沿うものであると言える。

 今回のIPCC報告を受け止め、私たち市民が長期的にめざすべきなのは、効率化や省エネによって大 胆にエネル ギー消費量を減らすとともに、再生可能エネルギーでエネルギー需要の大部分をまかなう社会である。そして、過渡的・中期的には、脱原発を実現し、CO2排 出量の多い石炭火力発電所から天然ガスの高効率火力発電に切り替えることでCO2の排出を大幅に減らす対策が必要である。そして、キャップ&トレード制度 の導入や炭素税(地球温暖化対策税)の強化など、各国で導入が進んでいる気候変動政策を日本においても早急に実現し、温室効果ガス削減の実効性をあげるこ とが不可欠である。

 今年9月には、潘基文国連事務総長主催の気候変動サミットが開催される。各国政府はIPCCの報告書を踏まえ、2020年までのみならず、それ以降の温室効果ガス削減目標についても議論することになるだろう。日本が大胆な政策転換を行なうことに期待したい。

 

声明 本文

IPCC第5次評価報告書第3作業部会 日本の温室効果ガス削減政策、科学に基づきただちに見直しを(2014年4月14日、PDF)

 

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