2026年1月7日、経済産業省は「二酸化炭素の貯留事業に関する法律第4条第1項の規定に基づく試掘の許可(千葉県九十九里沖)に係る公告及び縦覧について」を公開しました。気候ネットワークでは、この千葉県九十九里沖で計画されている二酸化炭素貯留事業の試掘許可に関する本文書につき、以下の意見を提出しました。
▼意見募集についてはこちら
意見提出:郵送もしくはメール(宛先などは上記PDFをご覧ください)
意見募集〆切:2月9日(月)17時 必着
▼概要
どんな計画か:千葉県九十九里沖にCO2を埋める(「首都圏CCS」と呼ぶ)ための坑井の試掘を行う計画
どこからCO2を持ってくるのか:千葉県内房の工業地帯でCO2を分離・回収、昇圧したのちにパイプラインで房総半島を横断し、輸送する
どこに掘るのか:試掘区域は以下の通り。AとBの2か所に坑井を掘る

1.首都圏CCS事業における位置づけと全体像
本試掘許可に係る意見募集は重大な不備
本件は、将来の首都圏CCS事業の実施を前提とした重要な前段階であるにもかかわらず、試掘を単なる調査行為と位置付けることで、事業全体との関係性、想定される影響、判断プロセスが明確に示されていない。その結果、情報公開、住民参加、環境影響の事前把握といった公共事業に不可欠な要素が十分に確保されないまま、限定的な意見募集となっており、非常に問題である。したがって、試掘のみを切り離して扱うのではなく、二酸化炭素の回収、運搬、貯留、さらには長期的な管理や将来的影響を含めた首都圏CCS事業全体の構想と位置づけを明確に示した上で、本件を単なる一地域の調査としてではなく、広範な公共的影響を伴う事業として、対象を限定しない形で広く意見を募集すべきである。
2.告知方法
意見を募ることへの配慮がない
試掘許可に対する意見を求めるとしているにもかかわらず、その公告方法は、経済産業省 資源エネルギー庁のウェブサイト内の特定区域の指定に関するお知らせにPDFを掲載しているのみで、意見を募ることへの配慮が全くなされていない。
しかも、9ページからなる本文書に書かれている試掘の目的は、「貯留層及び遮蔽層となり得る地層(以下「目的層」という。)の申請する試掘区域内での存在を確認するために、評価井2坑井を掘削する。」とあるのみで、「目的層」を確認することの意味、さらに本来の目的である首都圏CCS事業と試掘調査との関わりが全く書かれていない。
試掘による「目的層」の確認が何を目的としたものなのかを十分に周知せず、周辺住民が十分にその中身を理解できないような意見募集を、周辺市町村の住民に知らせることなく行うべきではない。
また、集まった意見について、今後どのように取り扱われるのか不明な点も問題である。意見が公表され、それに対する回答が得られるのか、提出された意見がどのように検討材料として加えられるのか明らかにするべきだ。
3.試掘地点
試掘する坑井の詳細が示されていない
本文書に記されている試掘地点は、九十九里沿岸から沖合7地点を結ぶ線により囲まれる海面および海面下深度150メートルから2,500メートルまでとしており、その中に2つの評価井を掘削する計画となっている。しかし、2つの評価井の位置はおおまかな地図上に示されているのみで具体的な位置は示されておらず、しかも評価井2坑目からは傾斜井を掘削するとあるものの、その傾斜井がどのような位置に予定されているかも示されていない。
4.試掘方法と試掘による影響
試掘の安全性、環境への影響が示されていない
本文書には試掘方法(工法)は書かれているが、各地点にて作業を行うジャッキアップ型掘削バージの停泊位置および期間は示されていない。また坑井でのデータ取得後には坑内をセメントで埋め戻し、安全化措置を講じるとあるが、安全化処置とは具体的にどのようなものか、どのように「安全」とするのかは明示されていない。
また、試掘中の掘削泥水の循環方法、掘屑の回収方法も具体性がなく、海底掘削地点周辺および海洋環境への影響をどのように評価し、環境負荷を抑えるのか不明である。指定区域および海域は良質な漁場であるとともに多種多様な海洋生物が生息している。評価井の試掘であるからこそ、バージの往来、掘削による音や振動、掘削時および掘削後の海底環境の変化がどのように対象となっている陸域生態系と海域生態系に及ぼすかを測定・評価すべきである。
5.関係者への説明
漁業関係者や観光産業など、周辺関係者への説明が不十分
試掘方法には「掘削バージの設置・掘削の作業前には周辺海域で操業する漁業者に作業内容と留意事項を説明するとともに、掘削中は、周辺を航行する船舶が掘削バージに誤って接近しないよう警戒船を配置する措置を講ずる。」と書かれているが、現時点で漁業関係者、沿岸域の海水浴場などを営む業者への説明が行われているとは確認できていない。試掘予定期間が今年4月から秋までであることを鑑みれば、漁業関係者に限らず、指定海域を航行する船舶関係者、さらに夏の観光産業の関係者、特に九十九里が有名なサーフィンスポットであることから関連ショップなども含めた被影響者への周知・説明が必要である。早急に作業試掘方法および試掘に伴う注意事項の説明予定、通達方法を明示することを強く求める。
なお、本文書への意見書締切は2月9日となっているが、被影響住民・関係者への説明をしないまま意見書の募集を行うことは非常に問題である。
6.意見書の提出条件
意見募集の対象を限定するような書き方をするべきではない
本文書の「5.意見書の提出方法及び提出先」に「試掘の許可について利害関係を有する者は(中略)意見書を提出することができる。」とあり、フォーム(別添3)にも「試掘の許可について利害関係を有する者に該当する事実」の記載を求めている。つまり、試掘許可に対して意見を述べることができるのは利害関係者のみと限定している。にもかかわらず、試掘に対して誰が利害関係者に該当するのかは本文書のみならずCCS法でも示されていない。このような限定的な意見の募集はすべきでない。本件は九十九里周辺の一地域に限定される問題ではなく、二酸化炭素の長期貯留という地球システム全体に関わる行為を将来的に伴う可能性のある事業の前段階である。したがって、地域関係者への説明にとどまらず、国の気候変動対策の一環として、首都圏CCS事業の位置づけや意義、リスクについて全国的に説明し、幅広い市民の理解と意見を求める姿勢が不可欠である。
7.首都圏CCS事業との関連性
首都圏CCS事業との関連性が不明、かつ住民に説明不足
試掘申請者が首都圏CCS株式会社となっていることからもこの試掘が首都圏CCS事業に係るものであることは明らかである。にもかかわらず、本文書には一切そのことが書かれていない。首都圏CCS事業には、首都圏CCS株式会社以外にINPEX、日本製鉄、関東天然瓦斯開発が参加しているが、計画全体を統括した説明はいずれの事業者からも行われていない。パイプライン付設については、パイプライン埋設予定地の周辺住民向けの説明会が順次開催されてきてはいるが、二酸化炭素貯留地である九十九里周辺への事業説明は行われていない。2025年12月21日に経済産業省と千葉県が主催で「九十九里沖CCS政策セミナー」が九十九里町中央公民館で開催されたが、日本のCCS政策、苫小牧CCS実証実験、CCSそのものの概説があったのみで、首都圏CCS事業についての説明はなく、九十九里沖で計画されているのはあくまでも「試掘」であると繰り返すのみだった。これでは、住民や関係者が試掘とその先にある首都圏CCS事業の全体を理解することはできない。これでは、あえて分断して全体を見えないようにして巨額の資金を要するCCS事業計画を進めようとしているようにしか見えない。首都圏CCS事業全体の説明を十分にした上で、試掘許可への意見を、対象を限定せずに、首都圏CCS事業に関心のある住民あるいは市民団体から広く募るべきである。
8.試掘調査の結果
試掘調査の結果をどう扱うのか不明
本文書での試掘の目的は「貯留層及び遮蔽層となり得る地層(以下「目的層」という。)の申請する試掘区域内での存在を確認するため」となっている。この試掘によって存在が確認されるか否かが首都圏CCS事業の実施を左右する重要なものであるにも関わらず、試掘調査の結果の扱いについては一切触れられていない。試掘が必要である本当の意味を隠し、試掘許可への意見を募集し、かつ結果を示さないのであれば、首都圏CCS事業の可否がどのように判断されたのか分からなくなってしまう。現状、首都圏CCS事業に透明性があるとは言えない状況なので、試掘を行うのであれば結果は公表すべきである。
参考
経済産業省:二酸化炭素の貯留事業に関する法律第4条第1項の規定に基づく試掘の許可(千葉県九十九里沖)に係る公告及び縦覧について(PDF)
経済産業省:二酸化炭素の貯留事業に関する法律第3条第1項の規定に基づく特定区域の指定について(PDF)
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