2025年2月18日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵
石破政権は本日2月18日、第7次エネルギー基本計画(エネ基)、地球温暖化対策計画、GX2040ビジョンを閣議決定した。直前に政府素案に対するパブリックコメントの結果とりまとめが公表され、それぞれ41,421件、3,211 件、516 件の意見が集まったとされるが、素案の内容から大きな方針は変わっていない。
地球の平均気温の上昇は科学者の予測を上回り、2024年には産業革命前に比べて1.55℃を上回ったことが報告されている。また、2024年はCO2濃度も過去14年間で最大の上昇幅を記録した。すでに、気候変動による災害が世界的に多数報告され、多くの犠牲が出ている。今後の悪化は免れないが、その上で、現在どのような対策をとるかが、長期に渡って将来世代の存続にも大きな影響を与えていくことから、早期の温室効果ガスの大幅削減と化石燃料からの脱却の道筋をつくることが不可欠だとされている。
しかし、今回の3つの計画や方針は、「脱炭素」とは名ばかりで、原発・石炭火力維持温存の従来のシステムから何ら脱却できず、大幅削減にも程遠い計画となった。
第7次エネ基は、国際合意である脱石炭火力を示さないばかりか、そこに整合できていない状況を曖昧にした。2040年の電源構成で火力発電をひとくくりにし、アンモニア混焼やCCSなど実用化していない技術の活用をあてにした石炭火力維持温存の道を残した。また、原子力についても「依存度低減」の文字を削り、「最大限活用」へと舵を切った。そして、最優先で取り組むべき再エネについては「最優先の原則」を削除し、2040年に4~5割程度ときわめて低く見積もった。
地球温暖化対策計画では、国連に提出する国別削減目標(NDC)となる2035年の目標が示されたが、2013年比60%削減(2019年比54%程度の削減)と、IPCCが示した1.5℃目標に必要な経路である2019年比60%削減(2013年比にすると約66%削減)からみてもかなり甘い目標にとどめた。また、この計画を議論した審議会では政府案の低い目標に対する反論が多数出るとともに、パブコメ後にも会議を再開するよう求める声が上がっていたが、そうした意見を黙殺し、審議しないまま今回の決定に至っている。
GX2040ビジョンは、官邸下におかれたGX実行会議という経済界の一部既得権益に偏ったメンバーにより素案がまとめられた。経団連や旧一般電気事業者の主張が色濃く反映された方針となっており、エネ基同様、原発や化石燃料関連業界をはじめ、温室効果ガスの大量排出事業者に対して多額の資金がいかようにも流せる骨格をなすものとなった。
すでに「容量市場」「長期脱炭素電源オークション」など、原発・火力発電維持拡大路線で、国民負担の増強につながるようなしくみが、国会での審議も経ずに、経済産業省の審議会だけでひっそりと決められてきたが、今後も国会の審議を経ることなく、国民の目にほとんど触れられない形で行政の裁量で重要な案件が決められていくことが懸念される。
気候ネットワークは、今回閣議決定された3つの計画と方針に明確に反対し、国会での徹底論戦、市民参加の新たなプロセスを構築し、持続可能な気候変動政策、エネルギー政策が決定される社会を望む。
パブコメ結果
NDC
Japan’s Nationally Determined Contribution (NDC)
参考
【意見書】日本のNDC(国別削減目標)のとりまとめに対する意見 ~温室効果ガスの2035年目標は2013年比80%削減に~(2024年12月3日)
【プレスリリース】第7次エネルギー基本計画の事務局原案に対しての声明(2024年12月20日)
【意見書】GX2040ビジョン(案)に対する意見(2025年1月23日)
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