2024年7月29日
気候ネットワークは、経済産業省の電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第十八次中間とりまとめ(案)等に対して以下の意見を提出しました。この、中間とりまとめのうち、長期脱炭素電源オークションについては、今年第1回目のオークションが実施されましたが、風力や太陽光などの再エネ電源がゼロとなり、原発や石炭火力の混焼設備、LNG火力が大半を占めました。対象になれば、落札した電力会社に20年間多額の費用が支払われることになり、原発・火力を温存し続けることとなり非常に問題です。
電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第十八次中間とりまとめ(案)への意見
1.国際合意に整合させるべき:2035年電源の脱炭素化
気候危機への対応として、気温の上昇を1.5℃におさえることが国際的に合意され、そのためには電力セクターでは2035年までの脱炭素化が求められている。そのためには、風力や太陽光などの再エネへの転換を加速化するとともに、蓄電池などの導入で柔軟性を高める必要がある。脱炭素電源オークションは2035年のゼロエミ化を目指して実施しておらず制度設計に問題がある。
2.国際合意に整合させるべき:再エネ3倍
再エネは対象になっているものの、当初から再エネを増やすという視点が完全に欠け、設備容量を10万kWとするなど事実上再エネを排除する条件となっていたため、実際に第一回オークションの結果は、再エネ・風力が一つもなく、原発や石炭火力を温存するアンモニア混焼設備、LNG専焼火力が大半を占める結果となった。このような制度は、2035年の脱炭素化を絶望的なものとし、本来必要な脱炭素化の転換を遅らせるどころか、化石燃料火力を維持するものとなっている。再エネは小規模のものを地域分散型で導入でき、本当の意味でCO2を排出しない脱炭素電源である。FIT制度が導入されても最近では導入量が膠着状態にあることを課題として設定し、再エネ3倍という国際合意に合わせて制度設計すべきである。
3.既設火力の改修(水素・アンモニア混焼)は石炭延命措置でしかなく廃止すべき
既設の石炭火力にアンモニアを20%混焼するための設備改修は、本来2030年までに石炭火力をゼロにすることへの妨げとなる。石炭火力の段階的廃止は「1.5℃目標」の達成に不可欠であることから、2030年にたった2割程度の削減にしかつながらない改修を「脱炭素電源」などとして位置付けるべきではない。
なお、第一回目で落札した碧南火力4・5号機は、すでにアンモニア混焼の実証化に向けてグリーンイノベーション基金など様々な補助金が投じられているもので、費用の二重どりとなっている可能性もある。
4.大量にCO2を排出するLNG火力は「脱炭素電源」ではない
そもそも何の対策もなくCO2を大量に排出するLNG専焼火力を「脱炭素電源」として位置づけるべきではない。2023年の気候変動枠組条約締約国会議でも「化石燃料からの脱却」が合意されており、石炭だけではなく、天然ガスも含めて廃止することが不可欠とする方針に逆行する。将来的に水素専焼にするなどという約束が実現できる補償は何もなく、空手形である。
5.LNG火力の募集枠をさらに400万kW追加すべきでない
LNG火力は3年間で600万kWの募集の予定で実施され、1年目でその枠をほぼ埋める575.6万kWが落札する結果となった。今回の電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会のとりまとめでは、今後10年間にデータセンターの新増設等により電力需要が増加するとの見通しから、LNG専焼火力を400万kWを追加募集するとして、2024年度・2025年のオークションで200万kWずつ追加するとあるが、大量のCO2を発生するLNG火力をさらに400万kWも追加すべきではない。電力分野の脱炭素化は再エネ100%で実現するような制度設計にすべきである。
6.蓄電池は裾切りすべきではない
再エネの大量導入に対して、その柔軟性を高めるためにも蓄電池を分散型で大量に導入することが欠かせない。第一回目のオークションで募集枠を大幅に超える募集があったことはそのポテンシャルのあらわれである。しかし、脱炭素ではないLNG火力は募集枠を追加しておきながら、蓄電池は規模の裾切りをするという方針は言語道断である。蓄電池は設備が小さくても様々な地域に導入することで、電力の安定確保・再エネ促進・価格の安定化につながるため、裾切りをすべきではない。むしろ募集枠を広げるべきである。
7.建設済みの原発を対象にすべきではない
「発電事業者の予見可能性確保と需要家の利益保護を同時に達成することを目的」としているはずの本制度で、なぜ建設済みの原発が対象になるのか合理性に欠ける。もともと原発は「価格が低廉」ということで建設に踏み切ってきたはずで、すでに投資はすべて完了しているはずである。原発は対象からはずし、第一回目で落札した島根3号の落札も見直すべきである。
8.電源ごとの詳細を公開すべき
第一回目のオークションの結果では、約定価格などが電源ごとに公開されていないが、落札された電源については、すべて情報を公開すべきである。
参考
電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会第十八次中間とりまとめ(案)等に対する意見募集について
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