2023年11月25日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 11月30日から12月12日にかけて、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにて国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が開催される。第1回グローバル・ストックテイク(GST)の成果物採択に向けて閣僚級の話し合いが行われる他、資金、損失と損害、適応などの議題にて、今後の気候変動対策における重要な決定や議論が予定されている。

 特に今回は、第1回GSTの成果として世界が1.5℃目標を達成するための軌道修正に向けた指針が示されるかに注目が集まっている。IPCC第6次評価報告書をはじめ、COP28を前に発表された各種報告書は、いずれも現状の気候変動対策ではパリ協定の1.5℃目標達成の経路にないと警鐘を鳴らし、世界全体での気候変動対策の強化を求めている。

 こうした科学の警鐘を受けて、エネルギー分野では、5月のG7にて再生可能エネルギー導入目標の明示と排出削減対策のない化石燃料の段階的廃止、2035年までに電力部門の大部分を脱炭素化することが合意され、9月のG20では再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍とすることが合意された。こうした国際合意がCOP28合意に反映されるかも注目される。議長国UAEもCOP28の優先課題の一つとしてエネルギー転換の加速(fast-tracking energy transition)を掲げている。

 これらを踏まえ、日本政府は、2030年目標の引き上げと、より野心的な2035年目標に向けた意思を表明するといった、パリ協定1.5℃目標と整合する気候変動対策を打ち出す必要がある。

1.全ての化石燃料の段階的廃止、再エネ導入拡大への合意
 COP27では80カ国以上が化石燃料の段階的削減に賛同していたものの、合意には至らなかった。COP28であらためて論点となることが予想されている。日本政府には、2023年G7議長国として、全ての化石燃料の段階的廃止への支持を表明し、交渉でリーダーシップを発揮することが期待される。再エネ導入拡大については、有志国による「2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの設備容量を3倍とする」誓約に、日本も賛同する方向であることが報じられている。誓約への賛同は歓迎するものの、同時に日本は1.5℃目標達成に向けた責任や能力を鑑みて、2030年度までに総発電量に占める再生可能エネルギーを36~38%とする現在の計画を60%以上に引き上げるなど、世界全体の目標を上回る水準となるよう見直し、実現のための政策措置を強化する必要がある。

2.国内の脱石炭の期限を定め、表明すること
 先進国は2030年までに石炭火力の廃止が求められているが、日本はG7で唯一、国内の石炭火力廃止の年限を明示していない。それどころか、技術開発途上にあり、石炭火力の延命策となるアンモニア・水素混焼やCCS(二酸化炭素回収・貯留)/CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)をGX政策のもとで推進し、カーボンプライシングの導入も遅く、低い水準にとどまっている。これでは2030年目標の達成も、また2050年カーボンニュートラルの達成も極めて危うい。日本の石炭依存はこれまでも厳しい批判にさらされてきた。世界の環境NGOのネットワークであるClimate Action Network(CAN)の「本日の化石賞」の受賞理由ともなっている。今こそ、開発途上の技術に過度に期待し投資するのではなく、国内の脱石炭の期限を定め、表明することが求められる。

3.再エネ拡大と徹底した省エネによる脱炭素化に向けた技術・資金支援
 日本政府は「クリーンエネルギーへの移行」を掲げる「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想のもと、アジア地域において、企業とも連携してアンモニアや水素の利活用に向けた技術開発およびサプライチェーン構築支援を推進しようとしている。これは石炭火力からの急速な排出削減を目指す東南アジア諸国の動きを妨げるものである。現在、東南アジア諸国は自国のエネルギー政策を見直し、クリーンエネルギーへの移行を進めている。日本はこの流れを加速させるべく、早期の石炭火力の廃止を実現させ、再生可能エネルギー拡大と徹底した省エネルギーによる脱炭素化に向けた支援を表明することが期待される。

4.グローバル・サウスの気候変動対策強化に向けた国際支援
 1.5℃目標の達成に向けては、緩和のみならず適応や技術、資金支援での実施を強化することも必要である。すでに緑の気候資金(GCF)への拠出を表明しているが、COP28では、損失と損害基金への拠出表明、「公正な移行作業計画(JTWP)」のもとでの国際支援も含めた議論などにも積極的に参加することが期待される。

以上

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