<プレスリリース>

中国電・三隅発電所2号機 営業運転開始に抗議

2022年11月3日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 11月1日、中国電力は三隅発電所2号機の営業運転開始を発表した。今夏、日本においては猛暑や局地的な大雨による被害が相次ぎ、海外でもパキスタンにおいて洪水による甚大な被害が確認されるなど、気候危機はきわめて深刻な状況にある。その原因として人為的なCO2排出であることは最新の科学でも示されているところである。地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5℃に抑え、気候危機を回避していくため残された排出量の枠は僅かであり、先進国では2030年までに石炭火力発電所を廃止することが求められているなか、三隅発電所2号機の運転を開始した中国電力に対して、気候ネットワークは厳重に抗議する。

三隅発電所は、1998年から稼働開始した1号機(出力100万kW)と共に、2号機が計画された。その後、中国電力の供給計画における数度の変更があり、最終的に出力40万kWから100万kWに増設する計画として、2018年に建設工事が開始されたものである。最初に計画された1982年から地球環境だけでなく、事業環境も大きく変化しているが、事業計画が再検討されることは一度もなかった。

今回の2号機の新規稼働により、三隅発電所は総出力200万kWの超々臨界圧(USC)の大規模石炭火力発電所となった。しかし、2基の年間設備利用率80%とした場合、最大で約1,113万t-CO2もの膨大な温室効果ガスの排出が想定される。事業者である中国電力は、温室効果ガス排出削減対策として、木質バイオマス混焼(熱量ベースで約10%)をアピールしているが、年間50万t-CO2の排出削減に過ぎない。また、中国電力は火力発電所の割合が高いことから、排出係数が0.542 kg-CO2/kWhとなっている。これは、電気事業低炭素社会協議会が掲げる、0.25 kg-CO2/kWhの2倍超の値である。同社は、非効率石炭火力の廃止を進めるとしているが、具体的な計画は示されていない。

日本は、今年のG7サミットの共同声明で2035年までに電力部門の太宗の脱炭素化、とりわけ石炭火力の「フェーズアウト(段階的廃止)」を加速させることにコミットした。CCSを備えず、排出削減措置が講じられていない三隅発電所2号機の運転開始はこのG7合意に逆行するものである。中国電力は、将来の持続可能な社会の構築に貢献できるよう、再生可能エネルギーへとシフトするべきである。

※公式リリースの発表日について、当方で記載の誤りがありました。お詫びし、以下のように訂正いたします。

(誤)11月2日→【正】11月1日

プレスリリース(PDF)

【プレスリリース】中国電・三隅発電所2号機 営業運転開始に抗議(2022/11/3)

引用

中国電力「三隅発電所2号機の営業運転開始について」(2022/11/1)

関連リンク

【プレスリリース】環境アセスメント準備書で環境大臣が「再検討」を要請
~中国電力は三隅の石炭火力発電所計画を中止すべき~(2018/1/12)

【意見書】「三隅発電所2号機建設変更計画環境影響評価準備書」に対する意見書(2017/7/3)

【意見書】三隅発電所2号機建設変更計画 環境影響評価方法書に対する意見(2016/4/12)

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