【プレスリリース】

G7首脳会議:日本が脱石炭、電力部門を脱炭素化する宣言

これから実現するための具体的な目標・政策措置が必要

2022年6月29日

特定非営利活動法人気候ネットワーク

代表 浅岡美恵

 

 2022年6月26日~28日、ドイツのエルマウで開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)では、気候変動が議論の大きな焦点となり、化石燃料の段階的削減を加速するための多くの合意がなされ、日本の脱炭素化への道にとって前向きな進展が示された。

 今回の宣言で、重要な合意事項の一つが石炭火力発電の段階的廃止に合意したことである。「国内の、排出削減対策がとられていない(unabated)石炭火力発電を廃止する目標に向けて具体的かつタイムリーにステップを踏む」ことを優先させるとした。気候ネットワークは、脱石炭に向かう重要なコミットメントに岸田首相が合意したことに歓迎の意を表する。しかし、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標に整合するためには、先進国が2030年までに石炭火力発電を全廃する必要があるとされている。今回のサミットで、G7各国は「パリ協定への揺るぎないコミットメントと、その実施強化」を再確認しており、このコミットメントを実行するために、日本は2030年までに国内の石炭火力発電所をすべて廃止させるという具体的な道筋を設定する必要がある。

 もう一点は、「2035年までに電力部門の完全または大部分(predominantly)の脱炭素化」を達成するという内容も非常に重要な合意事項である。この合意は、5月の気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケよりも野心的で、電力部門の脱炭素化を「大部分(predominantly)」にとどめたことから 「完全または大部分(fully or predominantly)」に強化した点で重要である。日本は「大部分」を「化石燃料が50%以下」と説明する一方、他のG7各国がこの解釈には賛同しないことも認めている。これは、国際エネルギー機関(IEA)による2050年のネットゼロシナリオにおいて、2030年に石炭火力発電が0%、2035年にガスが2%以下という明確なマイルストーンに照らした場合「大部分」の定義も明白であるからだ。日本は第6次エネルギー基本計画で、2030年の電源構成を石炭火力19%、LNG火力20%と定めているが、G7サミットの結果に沿った内容に早急に修正する必要がある。

 さらに、今回のG7サミットのコミュニケでは、「1.5℃の気温上昇に抑えることやパリ協定の目標に合致する、各国が明確に定義した限られた状況を除いて、2022年末までに国際的に排出削減対策がとられていない(unabated)化石燃料電力部門への新たな直接公的支援を終了する」ことも宣言した。これは、世界のエネルギー部門の脱炭素化を達成するための重要な一歩である。現在、日本は石炭火力発電における水素・アンモニアの混焼を推進しているが、ここでいう「排出削減対策がとられていない(unabated)」石炭火力には、水素・アンモニア混焼は含まれないことを認識すべきである。この合意を果たすためには、石炭・ガス火力発電所を延命させるアンモニア・水素混焼プロジェクトへの支援を終了する必要がある。

 これらG7サミットにおける合意は、世界が本気で再生可能エネルギーへの転換を加速させ、日本の脱炭素化への道筋を大きく前進させるものとなった。今こそ、G7合意に基づく2030年の脱石炭と2035年のエネルギー部門の脱炭素化を達成するために、短期・中期目標の設定、徹底した政策及び道筋の策定と具体的な政策措置・対策を実行すべきである。

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【プレスリリース】G7首脳会議:日本が脱石炭、電力部門を脱炭素化する宣言ーこれから実現するための具体的な目標・政策措置が必要(2022年6月29日)

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