2021年、世界で開発中の石炭火力発電所の計画発電容量は13%減少したが、
気候目標達成までにはさらなる強化が必要

Boom And Bust Coal 2022

4月26日、グローバルエナジーモニタ(GEM)、エネルギー・グリーンエア研究センター(CREA)、E3G、シエラクラブ、SFOC、気候ネットワーク、CANヨーロッパ、森林と環境のための法的イニシアティブ、バングラデシュの団体による執筆・編集の報告書『活況と不況-石炭2022(原題Boom And Bust Coal 2022)』が公開されました。GEMらは、毎年、世界の石炭火力発電所の稼働状況および計画状況をまとめており、これは8回目の報告書となります。

世界では2,400カ所以上の石炭火力発電所が運転中なのに加えて、189カ所以上の発電所が建設中、296カ所で建設計画が進んでいます。2021年には石炭火力を制限する動きが見られ、開発中の石炭火力発電所の設備容量に減少が見られましたが、それでもまだ世界の石炭火力発電を廃止にするには程遠い状況です。

本報告書は、2020年には増加が見られた開発中の石炭火力発電容量の合計が、2021年には13%減少したことを示しています。新規の石炭火力発電所の計画を検討している国は、2021年の41カ国から34カ国に減少しました。しかし、運転中の石炭火力発電所は2021年に18.2GW増加し、コロナ後の回復に伴い閉鎖は鈍化しています。発電所を閉鎖した、計画を中止した、あるいは計画が取り消されたと推定できる国がある一方で、米国、オーストラリア、ポーランド、メキシコ、日本、トルコはOECD加盟国であるにも関わらず、新規の石炭火力発電所の計画を検討しています。さらに、中国、韓国、日本は、他国における新しい石炭火力発電所への資金提供を停止することを約束したにも関わらず、支援を継続しています。

先日発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書でも、新規の石炭火力発電所を許容できる炭素収支は残されておらず、パリ協定に整合するように世界の気温上昇を1.5℃未満に抑えるためには、石炭の使用を2030年までに2019年比で75%削減する必要があると示されています。

2021年11月のCOP26で、石炭火力発電のフェーズダウン(段階的削減)が明記された「グラスゴー気候合意」が採択されたことはひとつの進展ですが、これからの10年以内に、石炭火力の急速的な段階的廃止を求める気候科学の明確な必要性を満たすためには、より迅速な変化が必要です。

本報告書のポイント

  • 新規稼働の設備容量45 GW の半分以上(56%)が中国に存在する。中国以外の国々の石炭火力発電所は4 年連続で減少したが、減少のペースは2020 年よりも鈍化した。
  • 中国の新設石炭火力発電所の急増(25.2 GW)が世界の他の地域(国々)の石炭火力発電所閉鎖(25.6 GW)をほぼ相殺した。
  • 日本、韓国、中国は、新規の国外石炭火力発電所への公的支援を中止することを約束した。COP26に先立ち、すべてのG20国から公約が得られたことにより、新しい石炭火力発電所を支援する国際的な公的資金は原則的に残されていないことになった。
  • 米国の石炭火力発電所の閉鎖は前年から連続して減少し、2019 年に16.1GW だった数値が2020年には11.6GW、2021年には6.4から9.0GWであったと推定されている。米国は、国のエネルギー目標と気候目標の双方を達成するために、石炭からの脱退を加速させる必要がある。
  • 欧州連合(EU)の27加盟国は、2021年に過去最大の12.9GWの発電所を閉鎖した。中でもドイツ(5.8GW)、スペイン(1.7GW)、ポルトガル(1.9GW)の閉鎖が大きい。ポルトガルは2030 年のフェーズアウト(段階的廃止)期日より9 年前倒しで石炭火力の全廃を達成した(2021年11月)。
  • 2015年のパリ協定の合意以降、建設前段階の石炭火力発電所の発電容量は77%減少している。

さらに詳細な数字についてはグローバルエナジーモニター(GEM)のGlobal Coal Plant Tracker データおよびSummary Tableをご覧ください。

本レポートのダウンロード

Boom And Bust Coal 2022(英語PDF)(掲載ページリンク
活況と不況-石炭 世界の石炭火力発電所の計画追跡(日本語PDF

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Flora Champenois, Global Energy Monitor, New York, United States, flora.champenois[@]globalenergymonitor.org
Lauri Myllyvirta, Centre for Research on Energy and Clean Air, Helsinki, Finland, lauri[@]energyandcleanair.org

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